シールドバッシュ!
今日も今日とて、マッドドールを破壊する剣士。
日が暮れてもとんてんかんとん、長剣を振り回してダメージを与える。
ただひたすらに。壊れるまで。
剣士は精神を病んでいる訳ではない。
これも、授業の一環なのだ。
授業中に使ったマッドドールこと的当てを壊して後片付けする、という大雑把な掃除を生徒に覚えさせるための。そんな授業。
ある日のこと。
剣士は間違って長剣ではなく持っていた盾でマッドドールを叩いてしまった。
「ありゃーオレ、もしかして疲れてる?」
自分の判断を危ぶむ剣士。しかし、奇跡が起こっていた。
何度剣で殴ってもひび一つ入らなかったマッドドールがひしゃげているではないか。
剣士の視線はしばらく間、盾とマッドドールの間を行ったり来たりする。
これはいったいどういうことだ? 夢じゃないよな?
盾を持ち上げ、もう一度マッドドールを殴りつける。ゴツンと鈍い音がして、マッドドールはもっと、へしゃげた。欠けた小さな破片がひしゃげた穴から出ていく。
「おお。これは……」
「シールドバッシュだね。セス君」
「グレアム先生。こんにちは」
「こんにちは。今日も精が出るね! その技はシールドバッシュ。攻撃力が防御力に依存している珍しい技なんだ」
攻撃できるほどの防御力を持つ生徒は一年生にはいないよ、君以外には。
そう続けたグレアム・キャメロ教師は、剣士が割ったマッドドールを丁寧に拾い始める。
「グレアム先生。それは?」
「ああ、マッドドールは壊れても、粘土に直してまた作り出せるんだ。そのために欠片を回収しているんだよ」
「リサイクルしてるのか……」
思わぬマッドドールの真実を知った剣士は、ほーと感心する。
今日は居残りしなくていいんだな、ようやく自由時間が増える。
喜ぶ剣士の後ろ姿を、グレアム・キャメロ教師は満足して見送った。
おれもこれで夜暗いなか、マッドドールを回収しなくてよくなるな、と。
グレアム先生も、剣士も、夜の訓練場はあまり好きではなかったのだ。