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スカイアドベンチャーの楽しい学園生活  作者: 紅藤
スカイアドベンチャーの受難 ~一年生~
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闇にたたずむ四人1

 

「あー、アサシンちゃんだ。誰かとしゃべって――」

「魔法使いさん、しぃ」

「ふげっ、斧戦士さんいつの間に……」

「今来たとこ」


 斧戦士が魔法使いの肩を掴んで、引き留める。

 これ以上行けば、あっちの鈍そうなセンサーを搭載している誰かにも感づかれてしまうだろうからだ。アサシンも魔法使いの気配に気づいて、話がうやむやになってしまうかもしれない。


「アサシンはいま大事な話をしているようだから、黙っていよう」

「うん、分かった」


 答えてしまってから、慌てて口をふさぐ魔法使い。

 意味なんかないのに手で口を押える姿がほんとうに可愛いと思う。

 斧戦士は微笑んだ。


「なに恥ずかしいことしてんの? そこの人は」

「舟長、しーだよ。しぃー」

「ああ、悪かったよ。で、おまえら授業どうしたの」


 魔法使いが舟長を小突く。そっちこそどうなんだ、と言いたいらしい。


「オレ? もともと授業入れてないし」

「授業サボりました」

「早く終わったの」

「約一名ばかり留年が危ぶまれる奴がいるが、そいつは自分でなんとかするだろう」

「じゃあいいじゃんか」


 小声で応対する魔法使いと舟長。

 斧戦士はその光景を無表情で見つめていて、ふいに虚空を見上げてこう言った。


「剣士」

「おう、ばれちまったか。内緒で行こうと思ってたのに」

「剣士は授業、大丈夫?」

「自主練だったからサボってきた」

「こいつもか……」

「優等生の舟長はどうしたんだって?」

「ここは授業入れてねーよ」


 剣士と舟長が言い争う。魔法使いが二人をにらみつけた。


「二人とも、しーだよ、しぃー」

「ああ、ごめんな」

「……」


 即座に黙る舟長。壁の向こう側ではまだアサシンと見知らぬ誰かが話し合っている。


「あいつ、誰だか知ってるか?」

「いや知らねーな」

「見たことない」

「……マルチダ・テスラだ。無手課の二年生。アサシンと同じようにアサシンの卒業資格を狙っている。スリーサイズは……」

「それは言わんでいい」

「なんだ、せっかく調べたのに」

「なんのために?」

「魔法使いさんが知りたがるかと思って」

「ボンキュッボンのスリーサイズなど知りたくもない」

「以後、気を付けます」


 素直に斧戦士が謝る。魔法使いはしばらくボンキュッボンなマルチダさんを憎々しげに見ていたが、飽きたのかすぐアサシンの方に集中する。


「二年生だろうが三年生だろうが、怖気づく必要はないが、随分堂々とした立ち回りだな」

「舟長にはできないね」

「ひとこと余計ですよ、魔法使いさん」

「ひとことって全部じゃねーか!」

「舟長、しー!」


 魔法使い、再びの警告である。イエローカード二枚と言ったところか。

 舟長は自分が我慢することにした。難しい顔をして黙り込む。


「あ、片方が立ち上がったよ」

「マルチダだっけ? 拳を構えて……まさか食堂で戦闘する気か!?」

「アサシンも立ったぜ」

「応戦するんだ……」

「どうも相手は頑固なタイプらしい」

「頑固っていうレベルじゃないと思うが……」

「あのはっきり言うアサシンが折れたなら、確かに頑固だけどな」


 覗いていると、アサシンが攻撃を食らったのが見えた。

 魔法使いがハッと息をのむ。だが、スカイアドベンチャーの生き残りナンバー1のアサシンはびくともしない。


「か、回復を……」

「落ち着け、あの程度かすり傷だ」

「さすが二人で生き残ることに定評のある舟長のいうことは違うな」

「なんだろう、斧戦士が言うと含みがあるんじゃないかと疑いたくなる」

「両方とも深読みしすぎじゃね?」


 剣士がぼそりと言った。魔法使いはハラハラしながらアサシンの即死技を見つめる。

 当たった! やったあ! ん……待てよ、今気絶じゃなくて即死しなかった?

 全然起き上がらない。即死してるー!?

 百面相をする魔法使いを、斧戦士が幸せそうに見ていた。


「あわ、あわわわ、あわ」

「日本語で頼む、あ、やっぱ言わんでいい」

「今、即死入ったな」

「バレないうちにリバイブをかけりゃ万事解決だ」

「いやまあ、隠しておいた方がいいことは明白だが」

「あわあわ」


 パカパカとアホみたいに口を開け閉めする魔法使い。その隣にいる斧戦士はやっぱり楽しそうだ。ありていに言うとウキウキしている。

 椅子の上にマチルダを運ぶアサシンの姿が見えた。必死に椅子に座らせようとしている。

 だが、意識のない人間の身体をコントロールするのは難しく、その達成は無理かと思われた。

 だが、我らがアサシンは違った。やり遂げたのだ!


「いや、寝かせておいた方がよくね?」

「なんで椅子に座らせようとしてんだろーな」

「アサシンちゃん、それ座れてない、座れてない」

「……うーん、擁護のしようがない」


 仲間からさんざんな評価を受けているとは知らず、アサシンは時を進ませ、案の定、マルチダを尻もちつかせていた。いたそう。

 さらにヒールをかける場面では……。


「あっまさか回復……まじかよ、SPもったいない」

「わー舟長が守銭奴ケチだー」

「アサシンちゃん、地味に回復力高いと思うの」

「氷魔法を扱うからな、知力は舟長より高い。まあ一番は魔法使いさんだけどね」

「おまえという奴は……。あと、オレをディスるのやめてくれます?」

「事実を言ったまでですー」


 この有り様。けちんぼな舟長が文句を言っていた。

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