トレード!
「あ、斧戦士。ちょうどいいとこに」
アサシン モードが斧戦士 トキワを呼び止めたのは、ありふれた平日の日であった。
「アサシンか」
「そ、ちょっと頼まれてくれない? 簡単な情報でいいからさ」
「それは魔法使いさんにも関係あることか?」
「いいや、ないね。完全にボクだけの問題だよ」
「そうか……」
あっ、いま優先度下がったな、とアサシンは悟った。
斧戦士が乗り気でないのが分かる。
そこまでは想定済みだ。アサシンはバッグから袋を取り出して斧戦士に渡す。
「!」
「これ、このあいだ魔法使いちゃんが好みだって言ってたお菓子」
「ああ、見覚えがある」
「これを斧戦士が買ってきたってことにしたら、魔法使いちゃん喜んでくれるんじゃない?」
マジキチな提案である。普通の人だったらここで断るか、ちゃんとアサシンからもらったのだと伝えるはずだ。普通の人ならば、である。
「……いいだろう。依頼を受けよう」
だが、斧戦士は百歩譲っても普通の人ではない。
「ありがと! この顔写真くらいしかないんだけど分かりそう?」
「……これなら知ってる。マルチダ・テスラ。無手課、アサシン志望。二年生。他に要る情報はあるか?」
「す、すごいね……。いや、もう十分だよ。あ、そうだ。なんで調べてたの?」
「二年生が一年生の授業に潜り込むなんて異例の行動をしていたからな。いつか魔法使いさんの障害になるかもしれん」
「えーと、ボクは信用されてないことを悲しむべきかな?」
「信頼してないのもそうだが、アサシンとは違う授業かもしれないからな。一応調べておいただけだ」
「そっちは肯定しなくていいです」
アサシンは突っ込む。が、斧戦士はきょとんとしていてまるで気が付いていない。
これが人間と人外の差!? と驚くアサシン。
舟長なら分かってくれるのになあ、とぼやきながら、アサシンは去っていった。
「スリーサイズは要らなかったか」
斧戦士は手元のメモに線を一本入れた。




