探偵トキワ・リック5
「へええ。ちょっと、そんなにしてくれたのに、アメ一個でいいの?」
「本当は請求したいところだが、まあいい。ところで、舟長」
アサシンに向かって、黒トキワが言う。
今回の作戦は、斧トキワの独断だった、うまく行って良かった。
アサシンは感心して、黒トキワをなでる。
現在、魔法使いの枕になっている黒トキワは、器用に一部分だけオーラを消して応える。
幸せそうなオーラが、アサシンの触ったところだけ発生していない。
アサシンはしょんぼりした。
「ん、なんだよ?」
「何をしている?」
「いや、風呂が沸いたから、魔法使いを起こそうと……うわっ!」
「そんな幸せそうに寝ている魔法使いさんを起こすなど、言語道断!」
斧戦士がオリハルアックスで、舟長に襲い掛かった。
「死ね!」
「どたばたしてる間に起きちゃうと思うんだけど!?」
「一瞬で終わらせれば問題ない」
断言すると、斧戦士はスキルを発動させた。
学園でも、命中率のおかしさから問題になっているスキルだ。
ちなみにバトルグレイブでも、奮起でもない。
だいたい、奮起はアビリティである。
「ベルセルクアタック!」
「ぎゃー!」
舟長は真っ二つになった。
斧使いトキワ・リックは、平和を守るのに余念がない。
特に、最愛の彼女、魔法使いに関する平和については。
うとうとする魔法使いを抱き上げて、寝室に連れていく。
別に、一日ぐらいお風呂に入らなくたって大丈夫。
明日の朝、入ればいいさ。
「にゃむにゃむ」
「おやすみー」
斧戦士はそっと扉を閉じると、誰も彼女の眠りを妨げられないように、扉の前に座り込んだ。
自身も目を閉じて、耳を澄ます。
彼女の寝息が聞こえた。




