探偵トキワ・リック2
依頼者の言っていた人物を見つけた。
見た目は普通の人間だ。どっちかっていうと弱そうな見た目をしている。
名は、ケヴィン。ケヴィン・ストライサー。
下の名前とか設定して意味あんの? って聞かれそう。
たぶん、ない。それに今後出てくることもない。
「やあ、あんたがケヴィン先生だな?」
「んーと、キミは……戦士課の子、じゃない気がするね。誰だい?」
「本体を知ってるのか?」
「本体……トキワ・リックなら知ってるよ。彼は有名だものね」
「うん、そっか。おれは斧トキワ。あんたの情報を知りに来たんだ」
目的を素直に伝えると、彼は面食らったようだった。
そりゃあそうだ、誰だってこんなこと言われりゃ驚く。
おれは驚かないけど。本体に聞いたほうが早いよ、ってアドバイスするけど。
「そう言われて、教える人がいるのかい?」
「そうだよなあ。だいたい、おれが行くことが効率的じゃないと思うんだぜ」
「効率的でなくても仕事ならやらなくちゃね」
ケヴィンは両手を広げて、招き入れる格好になる。
見る人によっては、なんともない行動かもしれない。
しかし、斧トキワは困ったように頭をかいた。
この部屋が暑いからではない。
「ああ悪い、おれ異能持ちじゃないからさ、張り切られても困るんだよね」
「異能持ち? 初めて聞く単語だね」
「確か、スキルでは説明がつかない特異能力を、この学園じゃそう呼ぶんだってさ」
「へえ。それはちょっと見てみたいかもしれない」
「見ることだけなら好きだけどうぞ」
今度は斧トキワが両手を広げた。
こちらはにこやかで、誰が見ても友好的だ。
ケヴィンは顔をしかめながら指摘する。
「キミ、異能持ちじゃないって言ってなかった?」
「うん。けど、おれ自身が本体の異能扱いだからさ」
「扱い」という言葉に、ケヴィンは耳を澄ませた。
扱いなんて言っているということは、実は違うということに他ならない。
ケヴィンは薄く笑んだ。
仕事柄、聞き出すのは得意なのだ。
「へえ。おもしろいね。ねえ、そこの席に座ってよ。ボクも詳しくその話を聞きたいな」
「おお、話聞いてくれんの? いやー助かる。これで、本体に怒られないで済むよ」
斧トキワが嬉しそうに椅子に座った。
楽しい会談が始まった。




