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オチという負け惜しみ 『看板』問

負け犬と出来損ないは、のちのちと、道を進む。


「それにしても、この辺りは看板が多いですね」


「看板?」


言いながら、負け犬が手にした看板を投げ捨てた。

先ほどから看板で道を切り開いているのだ。


「ほら、あれなんて、饅頭三兄弟よろしく串刺しですよ」


出来損ないが包帯に覆われた指で少し先を示す。

言うとおり、ウラメンが三体、ひとつの看板に串刺しになっていた。


「見に行くか」


ふんふん、と鼻をならして、負け犬がのちのちと、『それ』に近づく。

確かに見渡すとウラメンよりも看板の方が多い場所だった。


『どこかできいた話』

看板にはそれだけが書いてある。


「せんぱーい、寄り道ですかぁ?いいんですかぁ?」


にやにやと笑いながら、出来損ないがぴょんぴょんと跳ねてくる。


「上から、魔法少女、自己犠牲、ループだな」


「先輩の好みですか?」


がんと、横も見ないまま負け犬は出来損ないの頬を殴り付けた。


「串刺しのウラメンだ」


はぅはぅ、言いながら出来損ないは頬をおさえてしゃがみこむ。


「どうひうことでふか?」


「『どこかできいた話』という看板に殺されたんだ、このウラメンたちは」


それだけいうと興味を失ったのか、負け犬はまた歩き出す。



「看板ってなんでふか?」


ひぶひぶ、いいながら出来損ないはついていく。


ついと、負け犬が顎で右をさす。


そこには看板を十字架よろしく引きずりながら歩くウラメンがいた。


出来損ないは、ぐべぐべ言いながらそれに近づいていった。

負け犬は足を止め、出来損ないを待った。


「なんて書いてあった?」


やっと痛みから解放されたらしい出来損ないが首をかしげながら戻ってきた。


「『君ならもっとできる』って書いてありました」


ひとつ頷き、負け犬はまた歩き出した。





しばらく進むと、今度は看板を大切そうに抱きしめ座るウラメンがいた。


「みてみろ、随分立派なもんだ」


負け犬が言うように、その看板を抱きしめるウラメンは仕立てのよいスーツを見にまとい、その表情にも自信がみてとれる。


「みてきます」


出来損ないが近づくと、そのウラメンは鬼の形相になり、手近なウラメンを投げつけ攻撃をする。


ひゃあひゃあ、言いながら出来損ないは戻ってきた。


「なんて書いてあった?」


「全然見えなかったです!見えないように隠していました」


「そりゃそうだ。あれを奪えれば、

俺もお前もウラメンになれるんだがな」


負け犬は遠くを見るように、看板を守るウラメンをみた。


「でも、まぁ、きれい過ぎるのも問題だ」


「なんでですか?」


投げつけられ、へばりついてしまった肉片などを剥がしながら出来損ないが負け犬をみる。


「外に出ていないってことだからな」


「問題ですか?」


「後生大事にとっておいてもな……まぁ、時期があるのかもしれないが」


ふたつ頷き、負け犬はまた歩き出した。


出来損ないは追いかける前に、一度先ほどのウラメンを振りかえる。彼は看板を磨いていた。


その姿は確かに楽しそうではあったが、彼の回りにはなにもなかった。彼を傷つけるものも、彼を誉めるものも。


でも間違いなく、それは、ひとつの完成。

孤独な完成。


出来損ないは、負け犬を追いかけた。




今度は歩いている二人の前に空から降ってきた看板が突き刺さった。


『はやく』


そう書かれていた。負け犬はその看板を横に避け、また進む。


数歩進んだところで、また看板がふってくる。


『答えは』


みっつ頷き負け犬は、横にたつ出来損ないをみた。


「わたしはなぁに」


負け犬はそう言い、道化師のように手をひろげた。


「先輩、頭、大丈夫ですか?

キャラいきなり変えました?」


素晴らしい早さで、負け犬は目の前の看板を引き抜き、出来損ないの頭に叩きつける。


「いいから、はやく答えろ!

この看板はなんだ?っていってんだよ!」


わたしは、唐突に現れます。


わたしは、時間も場所も関係ありません。


わたしは、あなたから生まれることもありますし、

あなた以外の人から生まれあなたのもとに行くこともあります。


わたしは、瞬間的であり、ウラメンとは違います。


わたしは、ウラメンを殺しますが、

ウラメンが、わたしを殺すことはあまりないように思います。


しかし、わたしとウラメンはとても近いものです。


ウラメンは、わたしをもとに生まれます。


わたしは、なぁに?

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