第三話
「そんなこと言ったってあんたサンタでしょ??カレシとか言っても毎日一緒にいれるわけじゃないし・・・。やっぱ却下だね。」
「そ、そんなこと言わないでよ〜!!食い物もらうだけもらって何も返さないなんて、詐欺じゃん!!」
「あのね、サンタが物もらってる時点でアウトだっつーの。」
エミリーは呆れてため息をついた。
本当に救いようのないバカサンタだ。
「・・・でもっ、でも、人として何か役に立ちたいんだ!!」
今までは冗談だと思っていたが、その声を聞いて、アランの想いが本気であることがわかった。
バカだが、とてもまっすぐなバカである。
彼女はなんとなく彼を気に入った。
「わかったわよ。そこまで言うならもらってあげる。次いつ会えるかもわからないけどね。」
彼女がそう答えると、彼の表情が晴れやかになった。
「ありがとう!!じゃあ、俺、もう行くね。お頭に怒られちゃうから。じゃあね。メリークリスマス。」
彼はそう言うと、彼女に笑顔で手を振り、出て行った。
「はいはい、バイバイ。」
彼女はアホらしいと思いつつ、彼に手を振りかえした。
そして一言呟いた。
「メリークリスマス、か・・・。」
家から出たエミリーは思わずその場に立ちつくしてしまった。
目の前にいる男は、どこかで見たことがある。
というかついさっき会ったような気がする。
エミリーがじっと見つめていたせいか、彼もこちらを見た。
「あ、エミリー!!なんだ、隣に住んでたんだ〜。それなら毎日会えるじゃん。」
なんと、その男はバカサンタのアランだ。
「なんだ、アランか。どうりで見たことのある顔だと思った。ってか隣の部屋に住んでたの!?それなのになんで自分の部屋のあるアパートで迷ってたの??というか挨拶ぐらいしなさいよ!!」
「だってあんまここに帰ってこないから。バイトとかでさ。」
「はあ!?バイトってあんたまさかフリーター??」
彼はニコニコしながら、うん、と一言答えた。
「バッカじゃないの??金もないのに彼女つくろうなんて100万年早いっつーの!!」
「でもエミリーは俺の彼女じゃん。というか、言わせてもらうけど、俺、そこらへんのリーマンよか稼ぎいいぜ!!」
「寝言は寝てから言え。というか、定職につけ!!」
「もうついてるよ、定職に。サンタが俺の本業だから。そんで、稼いだ金でいっぱいいいもん買ってやるからな!!」
「それは嬉しいけど・・・。それにしてもサンタって本業なんだ・・・。」
エミリーはなぜか彼を哀れむような気持ちになった。
それにしても、サンタ業は儲かるのだろうか。
そんな素朴な疑問が彼女の頭の中をグルグルと回っていた。