第二話
エミリーは家に帰ってすぐに水を飲んだ。
仕事が忙しすぎて、ご飯どころか水も飲む暇がないのでのどがひどく渇いていたのだ。
エミリーはため息をひとつつくと冷蔵庫をのぞいた。
卵とベーコンを取り出しフライパンに油をしく。
まるで朝ごはんのようだがこれくらいしか冷蔵庫に入っていないし、これくらいしかできる料理がない。
エミリーは睡魔に襲われながらベーコンエッグを火にかけた。
するとしばらくして変な音が聞こえた。
きっと睡魔のせいだろうと思い聞き流したが、しばらくしてまた今度ははっきりと聞こえた。
ガスが故障したのだろうか。
それなら大家に言いつけなければならないのだが。
エミリーが中腰でガス栓を調べていると突然、ドンという音とともに一人の男が換気口から降ってきた。
「いててて・・・。随分狭い煙突だな〜。最近の煙突は横向きなのか〜。柵までついてるとは思わなかったけど。」
「ちょっと・・・、あんた誰よ??どっから降ってきてんの。」
「あ、人いたんだ。ってかまた見つかっちゃったよ。まあいいか。俺アランっていうんだ。よろしく。ちなみに煙突から降って来たんだよ。今。」
「それは知ってるって。今私ここに居たし・・・。ってか煙突じゃなくて換気口だし。で、なんで降ってきたの??何か変なかっこうして。」
「換気口か〜。ってことはやっぱ煙突だね。あ、この服??これは作業着だよ。サンタの仕事には欠かせないでしょ??」
「サンタ??はっ。何寝ぼけたこと言ってんの。そんなもんいないっつーの。私は週刊誌の編集員っていう仕事柄、現実っていうのを嫌というほど見てるの。だからあんたみたいに純粋にサンタとか信じられないの。」
「俺サンタだけど・・・。」
「うっざ。私コスプレマニアとかマジ無理だから帰ってくれる??今からご飯だし。」
そういってエミリーはフライパンと掲げた。
「コスプレじゃないよ〜。それにまだ帰れないよ〜。探し物してるから。見つけないとまたお頭に怒られるんだ。うわっ、うまそ〜。ちょっと頂戴よ〜。そしたらいいものあげるから。」
「何くれんの??」
「君の欲しいもの何でもあげるよ。この袋の中にはたくさんの夢と希望と商品が・・・って落としたんだった・・・。」
「だっさ。つーか私の欲しいものって商品じゃないし。」
「じゃあ何が欲しいの??」
「そんなの決まってんじゃない!!彼氏よ!!カ・レ・シ!!」
「じゃあカレシをあげるからベーコンエッグちょっと頂戴!!」
「マジで!?OK、交渉成立。」
そういうとエミリーはアランにベーコンエッグを少し皿にとってあげた。
アランはそれをおいしそうに食べている。
何だか純粋でカワイイ奴である。
エミリーはそんな彼をみてなぜか笑顔になった。
しかしアランはベーコンエッグを食べ終わると早々に帰ろうとした。
「ちょっと、彼氏は??」
「そうだ、忘れてた。はい。」
そういうと彼は一歩前へ出た。
「は??どういうこと??」
「だからあげるって、カレシ。俺だよ。俺。」
あまりのアランのバカさにエミリーはしばらく返事もできなかった。