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攻略対象攻略したかったけど、階段から落ちる度胸がなかった。

作者: まとり

私の名前は、シャーリー・ハリマー。

男爵家の末っ子で、主人公である。


主人公ってなんだよ、おい。となったかもしれないが本当に主人公なのだ。


私は、前世で流行っていた乙女ゲーム「恋は駆け引き〜傷ついてでもあなたの心を手に入れる〜」略してコイカケの主人公のシャーリーなのである。


最初の頃は、メインキャラの第一王子アルマス・シャロルド様を攻略して、うはうはな老後を送ってやろうかと思っていた。なんたって私には前世の記憶があるというチート主人公。間違いなくゴールインできるはずだ!


だが、そこで私は重要なことを思い出した。


コイカケでは駆け引きがメインの乙女ゲームである。

この駆け引きが問題だったのだ。


シャーリーが攻略対象に近づくと、それぞれの婚約者や姉や妹、そしてアルマス様の婚約者であるフィリアデル・フレックスという公爵家のご令嬢様が前に立ちふさがる。

ねちねちと嫌味を言ってきたり、水をかける、私物をボロボロにする、などなど様々なパターンの嫌がらせが待っているのだが、

この時にいつも出てくる選択肢がある。


・回避する

・甘んじて受ける


というものである。

主人公には回避するという選択肢も与えられるのだ。

ゲームでは回避ばかりしてると攻略対象と結ばれることはなく、逆に甘んじて受けてばかりいると、破産して学園追放の道を辿る、というなんとも変わった設定があった。


前世ではこの選択肢でどういう分岐ができるかという研究が流行ったものだ。懐かしい。ゲーム仲間のさんちゃんは元気にしてるだろうか…


おっと、話が逸れてしまった。

そう、そして最終章では攻略対象が攻略対象の婚約者と喋っているシーンを見た後に、好感度がマックスになっていれば、ある選択肢があらわれるのだ。


・階段から落ちる

・普通に階段をおりる


最初にこれを見た時、はっ?ってなったものだ。

ここで普通に階段をおりるを選択すると、その後のシーンで攻略対象とその婚約者の結婚式が始まり、友情エンド。

だからと言って階段から落ちるを選択した場合、それまでに培う運動能力が足りてないと病院エンド、財力が足りてなければ、デッドエンドが待っている。


財力と運動能力が足りていれば、ご令嬢達を断罪するシーンがはじまり、主人公と攻略対象は永遠の愛を誓い合うのだが。



そう、結ばれるには階段を落ちねばならない。



いやいやいや、普通に無理だろ!

痛いのは良くない!

一回落ちかけたことがあるけど心臓が止まりそうだったし!


チート主人公なので学園追放とか財力、運動能力が足りないとかは、多分、おそらく、十中八九、うまく乗り越えられると思う。多分。


だけどな、階段落ちるは無理だわ。

だって、絶対、インフルの注射より痛いぜ?


むりむりむりむりむりむりむりむり。



ってことで、触らぬ神に祟りなし。



私は絶対に攻略対象には近づかないと決めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


学園生活が始まって二週間がたった。

決意した通り、攻略対象にはまったく接触してないし、最初のイベントであるテストで一位をとるというものも普通にできなかった。意味わからんテストだったのだ。決して頭が悪いわけではない!

精霊学ってなんだよ、おいってかんじだったのだ。


「ねえ、あなたがシャーリーさん。」


「え?え?えー?!フィリアデル・フレックス様!?」

なんで喋りかけてきたんだ?

第一王子アルマスの婚約者さんではないか?!


「え、ええ。フィリアデル・フレックスと申します。少しお話いいかしら?」


「え?私、アルマス様にに話しかけたりとかしてないですよ?」

目もあわせてないぞ!

てか、あれはイケメンすぎて目が潰れそうで直視できないし。


「なぜアルマスがでてくるのですか?」


おや?フィリアデル様は困惑してる様子。

じゃあなんで話しかけてきたんだ?



「シャーリーさん、私に数学を教えていただけないかしら?」


「へ?すうがく?」


「ええ。あなた、学力テストの総合はダメダメだったけど、数学だけは一位でしたでしょう?」


そう、だったっけ?

数学っていっても、あのテストは2次式の連立方程式とかレベルの問題だったから、前世の記憶というチート能力で結構できた、気がする。


「数学は王妃になるには必要だけど、苦手なんですの。ですから、数学で一位だったあなたにどうしても教わりたくて。もちろん見返りと言ってはなんですが他の教科は私が直々に教えてあげましょう。」


「こ、光栄です。」


こうして私はフィリアデル、改め、フィリーと友達になった。



それから3日後のこと、

私はフィリーの家に来ていた。


「ここは文字で置いて、代入するんです。」


「だ、だいにゅう?シャーリーの言葉は初めて聞く言葉が多くて難しいわ。でもすごいわね。こんなにサクサク解けるなんて思ってもみなかったわ。」


そう言って花が咲いたように笑うフィリーはもう美人すぎて目を合わせるのが罪ではないかと思ってしまう。


やっぱり画面の中で見るよりも、生の方がずっと美人さんになるんだよなぁ。


なんていうんだろう。画面あるある?


「シャーリー、ここの解き方はこれであってるかしら?」


「はい、あってます!さすがフィリー!!」


数学を教えつつ、他の科目を教えてもらっているとティータイムの時間になった。



「フィリアデル様、シュレイル様がおかえりになりました。」


「シュレイル様?」


「私のお兄様よ。シャーリーにも紹介するわね。」



「フィリア!ただいま!おや、ご友人がきているのか?」


「お兄様、おかえりなさい。こちらは友人のシャーリー・ハリマー様でございます。数学がとてもできるので教えてもらってるのですわ。」


「はじめまして。シャーリー・ハリマーと申します。フィリアデル様にはとてもお世話になっているのです。」


「はじめましてではないのだけれど。フィリアの兄のシュレイルといいます。これからもフィリアと仲良くしてあげてね?」


ウインク付きとかイケメンかよ!

イケメンか。


なんだこの世界。顔面偏差値高すぎる…


照れる暇もないくらいのイケメンだわ。


前世で中の下くらいの顔面偏差値の私には眩しすぎてあかんやつだ。


「も、もちろんです。」



「あ、お兄様。これからお茶をするのですが、ご一緒にどうです?」


「ご一緒してもいいかな?」


「はい、もちろんです。」


うっ、サングラス持ってこればよかった。






「へぇ、こんな公式があったとはね。気づかなかったよ。シャーリーさんはすごいな。」


「いえいえ、そんなそんな。あ、シャーリーさんじゃなくてシャーリーって呼んでください。」


イケメンにさん付けで呼ばせるほどの女王気質は持ち合わせてないのだ。


「そ?では遠慮なく、シャーリーと呼ばせてもらうね。」


「はい。」



「ふふふっ、そういえばもうすぐ王家主催のパーティーがございますわね。シャーリーも出るのでしょう?もうエスコートしてくれる方は決まっているのかしら?」


「はい。お父様にしていただこうかと思っています。」


ゲームではここまでで一番好感度が高いキャラにエスコートしてもらえるのだが、あいにく好感度を上げるどころか、誰とも口を聞いてない。



「お父様に?でもお父様も忙しいのでしょう?」


「これから頼むつもりなのですが、無理だったら一人で行こうと思います。」


「それはいけませんわ!ねえ、シャーリー、お兄様とかはどうかしら?」


「いえ!シュレイル様のお手を煩わせるわけには!」


「大丈夫よ。お兄様は婚約者もいませんし、その日は暇なはずでしょう?ね?お兄様?」


「ええ、もしシャーリーがよかったら、私にエスコートさせてくれないかな?」


「お、お願い致します。」


「では、決まりね。シャーリー、今度一緒にドレスをみにいきましょう?」




そしてパーティーの日、

私はシュレイル様と馬車に乗っていた。


「とてもドレスが似合ってるよ。」


ドレスの色は紺色。

ゲームではピンクだったので逆をいってやった。

触らぬ神に祟りなし、だ。


「ありがとうございます。」


それにしても近い。


「シャーリー。君は私のことが嫌いかい?」


「え?なんでですか?そんなわけ!」


「じゃあ、どうして私のことを見ないのかな?」


「えっと、その、」

それは、イケメンすぎるからです!!!!


「君の空色の瞳に、私のことを映してほしいんだ。」


おいおいおいおい!


「いや、え?その、えっと、」


少しずつシュレイル様の顔が近づいてくる。

いや、これ、あかんやつや。



「おっと、時間みたいだね。続きはこの後で。」


馬車が止まり名残惜しげにシュレイル様が離れていく。


心臓がやばい。

顔が熱い。


何がどうしてこうなったんだ。


パーティー会場では、攻略対象もその婚約者も幸せそうに微笑みあっていた。


「シャーリー、踊らないかい?」


そう、手を差し出される。

おそるおそる手を伸ばすとつかまれて引き寄せられる。


「うわっ」



シュレイル様のダンスは一級品だった。

それはもう、クッソ下手くそな私のダンスがまともになるくらいに。



「ねえ、シャーリー。君と私はいつ出会ったか知ってる?」


「え?フィリアデル様との勉強会のときでは?」


「実はね、もう少し前に出会っていたんだよ。」


「えっ?」


音楽が盛り上がる。

生演奏って豪華すぎかよ。


「昔、階段落ちかけたことない?」


あ、そういえば。

あれですっぱり、さっぱり攻略諦めたんだから覚えてる。


「あります。むかし街を歩いてた時に。」


「あの時、君に助けてもらったんだけど、覚えてないかな?」


あの時。


あの時、私の前の男の子がおばあさんが落としたリンゴを拾って立ち上がろうとした時に、走ってきた人にぶつかって落ちそうになってたんだ。


やばいって思って腕を掴んでこちら側に引っ張って、その反動で私が階段落ちそうになったのを、その男の子が助けてくれたんだっけ?


あれは心臓が止まるかと思った。


って、え?


「え?もしかして、あの時の!」


「やっと思い出した?フィリアのとこで再会した時ほんとにびっくりしたんだ。」



え?なに?なんかしたっけ?

あの後、男の子が助けてくれたお礼といい指輪のついたネックレスをくれたけど。


断じて盗んだわけではないぞ!!


「あ、あのネックレスならもってますよ?返しましょうか?」


売らなくてよかった。


「違うよ。あれは君にあげたものだから。私の婚約者の証。」


「は?」


「あぁ、ごめんね。勝手に婚約者の指輪を渡しちゃって。」


「いやいやいやいや、そういうことじゃないでしょ!」


あっ…


いやいやいやいや、ほんとに、


意味がわからん!!どうした!?シュレイル様?!


「いや、え?婚約者?は?お?え?」


あかんやつや。

これ、あかんやつや。


「ねぇ、シャーリー。君は私のことが嫌い?」


「嫌いじゃないですけど。」


「じゃあさ、正式に私の婚約者になってくれたりしないかな?」


「正式にってなんですか?」


「正式は正式に。」


「なんで?」


「好きだから。」


なんだこのセリフ。もしやどっきり?

それか、誰か他の人に言ってるのか?

とりあえず周りを見渡す。


「シャーリーに言ってるんだよ。」


そう言って、シュレイル様のダンスが止まり、

その手が私の頬に触れる。


心臓がやばい。


「な、なんで、ですか?」


「なんで?なんでだろう。でもシャーリーのことが好きになっちゃったんだ。階段からおちかけて、君を好きになった。」


なんだよそれ。

階段からおちかけて、恋に落ちたってやつか?

うっわーイケメンだから許されるセリフだよ。



「で、婚約者になってくれる?」


心臓が止まりそうだ。


階段から落ちかけた時くらい、

心臓がでっかい音をたててる。


「はい、って言ってくれると嬉しいんだけど。」


「は、」


「は?」


「はぃ。」


顔が熱い。穴があったら入りたい!



「好きだよシャーリー。」


にこっと笑って、その顔がだんだん近づいてくる。



あかんあかんあかんあかん。



とりあえず、目を瞑る。


すると、ふっと息がかかった。


目を開くと、


「やっぱりダメ。続きは後でね。これ以上周りにシャーリーの可愛い顔を見られたくない。」


さっ、もう一曲踊ろうか。


そう言って、引き寄せられる。



さっきより近くて、死にそうだ。



音楽がエロティックな曲に変わる。

生演奏ってやっぱりやべーな。




「シャーリー。」


そう呼ばれて、シュレイル様の顔をみあげる。



「好きだよ。」





階段落ちるの回避したら、どうやら恋に落ちてしまったようです。



「私も、です。」



階段から落ちれなかったし、

イケメンには慣れないけれど、


これはこれで、いいかもしれない。



end.













ここまで読んでくださってありがとうございます。悪役令嬢転生ものを読んでいると、主人公キャラの女の子はだいたい階段から落ちてるようなので、作ってみました!

初めての作品なので至らぬところもあると思いますが、ここまでお付き合いしていただけて、とても嬉しく思います。


フィリアデル様の名前はちょっと自信作です笑

令嬢っぽくて雑魚っぽくない名前ってむずいです。


ではでは、また会える日を楽しみにしております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の動揺などの心理描写はよく伝わってきました。ライトノベル風で読みやすい小説でした。 [気になる点] キャラの容姿に関する描写が少ないので、「顔がいい」とか「イケメン」とか抽象的に表す…
[気になる点] フィリアのとこで再開した時 再会 [一言] >4階段からおちかけて、恋に落ちたってやつか? 吊り橋が熟成されたのか^^;
[良い点] 面白かったですーー!主人公可愛い (﹡֦ƠωƠ֦﹡) 次回作も期待しまってます
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