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第6章 オーク大移動 -1-

お読み頂きましてありがとうございます。

 それは、エリーが用意してくれた朝食の場でおこった。


「お嬢様、お寛ぎのところ、大変失礼致します。」


 領主の屋敷の執事であるアローマが現れたのだ。


「お嬢様、オークの群れがミカワ市の方へ向かっているという情報が首都からもたらされました。至急、屋敷へご同行ください。」


 俺達は、早速着替え、アローマと一緒に領主の屋敷に向かった。


 そこで待っていたものは、なんと首都アルメリア教本部の枢機卿であった。枢機卿は教団の僧兵を伴い、やってきたらしい。情報だけでなく、支援もしてくれるらしい。


 エリーは始め引きつった笑みを浮かべていたが、それは領主の娘、そつなく対応しているようだ。


「これはこれは、枢機卿、貴重な情報ありがとうございます。私、ミカワ市領主ゴディバの娘、エリーと申します。よろしくお願い致します。」


「いえ、とんでもありませんな。同じ国、同じアルメリア教徒として当然のことです。以前、ワイバーン討伐では、お貸しできなかった手を今回は間に合わせられました。」


 また、枢機卿より俺へ舐めるような視線が送られてくる。


「これは、ワイバーン討伐の英雄殿ではないですか。おや、これは、宿で一度お目に掛かりましたな。」


 やはり同一人物らしい。相手が手を差し出してくるので仕方なく握手する、なにやら長い握手だ、なにか網に捕まったような、へんな気分である。


 ゴディバ、エリー、ジェラードと俺。

 そして、枢機卿、ギルド長のサイモンで話し合いの場が持たれた。


 話の内容はこうだ。首都南部辺りで突然、オークの群れの移動が始まりみるみるうちに数百頭規模の集団を形作り、真っ直ぐオワリ砂漠を南下中であり、このまま行くとミカワ市へ直撃するらしい。


 俺は申し訳なく思いつつエリーに聞く。


「エリー、オークの生態と弱点を教えてほしい。」


「オークの生態は謎に包まれているわ。わかっていることといえば、集団で行動し、村を襲い、女を剥奪し女を連れ去るのは子供を産ませると言われているわ。弱点は火を恐れることが知られているわ。」


「じゃ、エリーは今回は前面に出てきては駄目だな。」


「そうね。でも、もともと後方支援が主だから問題ないわ。」


「門は当分閉鎖だ。門の前で俺達騎士団や冒険者が迎撃する。」


 ジェラードが構想を述べる。


「さらに万が一、門を破られたときのためにも、騎士を配置する。教団の部隊は何処で戦うか?指揮権は誰が持つか?」


「教団の部隊はこちらで動かさせていただこう。」


 枢機卿はやはり、指揮権を渡したくはないようだ。


「俺は前線に打って出る。」


「危ないわ。篭城で十分じゃない?城壁、門は強固だもの、入れないとなれば、きっと他に行ってくれるわ。」


 めずらしくエリーが気の弱いことを言っている。


「まあ、無理だと思えばちゃんと帰ってくるから。」


・・・・・・・・


 まずは、火耐性(特)のインナーを着込む。そして、薬草屋に駆け込む。


「やあ、アレクサンドラ。朝からすまん。レアのMP回復を頂きたいのだが、あるか?」


「今ある在庫は2つだけ。さっき、教団の部隊がほとんど買い上げていったよ。このレアのMP回復は30分に1回、最大4回までしか使えないから気をつけて。1つ3000Gのところ、貴方なら4200Gでいいよ。」


「ああ、わかった、ついでに薬草Bx800を置いていく。いずれ通達があると思うが、緊急クエストが発令されると思う。オークの群れがこっちに向かっているそうだ。安全な場所に隠れてろよ。」


 俺は4200Gを払い、『箱』から薬草を取り出し置いた。


「例のブレスレットはできているよ。もってくかい?」


「ああ、いただこう。できれば、そのブレスレット身に着けておけ。万が一、オークに捕まった際に火魔法を放て、助けられるからな。」


「わかったよ。」


 俺は、迎撃の支度をしているジェラードとエリーの元へ戻った。


「エリー、万が一のことを考えて、このブレスレットを身に付けておけ!このブレスレットは強い火耐性がある。一瞬だけなら、オークに捕まったお前ごと『ファイア』を放てる。」


 エリーにブレスレットを渡す。俺は、作戦を二人に告げる。


「俺は、この先の砂漠に行って、『ファイア』を使ってオークの群れの向きを変えるつもりだ。万が一その網を掻い潜ってきたオークは、ジェラード達に任せる。こちらに近づく可能性があるものには、このブレスレットを渡してくれるか?」


 残りをジェラードに渡す。


「ジェラードには、前に渡したインナーがあるから大丈夫だな。」


「ああ、もう着ている。」


 ジェラードは鎧の隙間からインナーを見せる。


 冒険者ギルドから緊急クエストが発令され、冒険者を含む迎撃部隊は騎士団団長のジェラードのパーティーに編成された。


 主力の7割が北門の外で迎撃。2割を南門の内側、さらに残り1割を北門の内側及び市内各所に配置した。


◆◆◆◆◆◆◆


 作戦は簡単だ。城壁の北門の先には、砂漠がひろがっており、オークの群れは、首都の方からこの北門へ真っ直ぐ南下しているらしい。

 そこで、オークの群れの真正面に北西から南東にかけて斜めに、『ファイア』魔法でラインを作り、そちらの方向へ誘導するのである。


 『ファイア』魔法は1Mx1Mx1Mの火炎を5秒間打ち出す魔法だ。投入するMPにより、長さを調節できる。5秒置きに唱えることで長時間維持することも可能である。


 自分の左手から20M、右手に80Mの『ファイア』を2.5秒置きに唱え続ければ、火を嫌うオークの群れの進行方向を南下から東寄りに変えることできるというわけだ。


 作戦は一発勝負だから、練習するわけにいかないのが難点である。


 などと考えながら、『ウインド』魔法で時速30KMで北上を続けている。


 前方からもうもうたる砂煙が立ち上っているのが見えた。


 念話でジェラードに報告する。


『ジェラード、来たぞ。覚悟はいいか。』


『シムラ、頑張れ、死ぬなよ。・・・愛してるよ。』


 ここでしばらく待ち、時間経過によるMPの自己回復を行う。


 前方から、オークの群れがやってくるのがはっきり見えた。想定より多く、さらに横に広がっている。

 作戦の変更し、左手50M、右手150Mにする。


 さすがに緊張感からか、胸がどきどきして来た。


 MP使用量が馬鹿にならないため、ぎりぎりまで引き付けることにする。秒読み状態だ。

 5・・4・・3・・2・・1・・『ファイア』・・1・『ファイア』

 ・・1・『ファイア』・・1・『ファイア』・・1・『ファイア』


 この繰り返しを延々と行う。MP使用量が想定の倍くらいなため、100万あったMPもどんどん減っていく。


 なんとか、オークの群れの先頭は東寄りに方向を変えてくれたようだ。


 10分経過し、MPが約半分になった。凄い勢いで減っていく。


 まだか、まだ終わらないのか。群れの列は延々と続いている。


 さらに5分経過し、MPが更に半分になった。


 そこで、ジェラードに念話で連絡する。


『ジェラード、すこしそっちに行くから、よろしく頼む。』


『わかった。』


 さらに2分後、後ろから肩を叩かれる。後ろを振り向くとジェラードが立っていた。


 念話で要件を伝えあう。


『状況は、わかった。MPを補充する間、シムラを守る。安心しろ。騎士団の主力は、この後方に十段がまえで配置してある。オークは、逃しはしない。』


 俺はジェラードに警護をお願いし、徐々に左手と右手の隙間を狭めていく。


 どんどん、オークの方向転換が遠方になっていく。


 もうMPが5%を切っていた。ここで一時的に魔法を唱えるのを止めた。


 ジェラードは俺を守るため、前方に飛び出している。俺は、ハイレアのMP回復ポーションを落ち着いてゆっくり飲み干した。


「うー、まずい。もういらない。」


 前方では、ジェラードの無双状態だ。さすがに俺の師匠だ。


 しかし、さすがのジェラードでも、群れの全てを殺せるわけは無い。どんどん、後方に流れだしている。


 俺はジェラードに構わず、『ファイア』を唱え続け念話で後ろに下がるように指示を出す。


『ありがとう。ジェラード、カッコ良かったぞ。』


 火魔法で殆ど判らないが、赤くなっているようだ。


 そのまま、オークの群れの様子を見守っていると除々に減っていき、とうとう群れの最後を見送った。


 残りMPは半分を切っていた。


 隣にいたジェラードと抱き合い喜びを噛み締めた。おい、おい、キスまでするな。


 近くまで来ていた団員達に生暖かい目で見られているようだ。


 そこへ、念話で連絡が入る。さきほどの隙に後方に行った50頭ほどのオークのうち、45頭までは討ち取ったが5頭が北門を破り、街中に入ったというのだ。


 一刻も早く戻らなくてはならない俺達は、ジェラードを背中に乗せいつもの速度の倍の『ウインド』を唱え、ひた走った。


 城壁までくると、門が塞がっている。


 そのまま、『ウインド』を下方向に唱え続け、ジェラードを抱えたまま、城壁を登っていく。そのまま、城壁の内側へ飛び降りる。

 もちろん、『ウインド』で風を起こし、クッションにする。


「ジェラード、市内各所にいる冒険者に連絡をとり、情報を得ろ。」


「やばい。エリーの居る。領主の屋敷の方向に向かっている1頭がいるらしい。行くぞ。」


 そのまま、ジェラードを抱え、ひた走る俺。

 ようやく、エリーの元に到着して、見たものは、エリーの雄姿だった。


 そういえば、火魔法も得意だと言っていたな。ちょうど、エリーが『ファイアボール』を唱え、オークが燃え上がるシーンを見た。


「あ、シムラ、戻ってきたのね。心配してたのよ。」


「あーーー、焦った。そういえば、エリーは火魔法が得意だったね。心配して損した。」


「駆けつけてきてくれたのね。うれしいわ。」


 といって、抱きついてくる。その弾力のある胸の存在も押し付けられおもわず、ムラムラと・・・


「そんな場合じゃない。残り4頭のオークを探さなくちゃ。」


「ジェラード、判ったか?」


「まず、1頭、『チルトン・イン』周辺で見たとの情報が・・・。」


「よし、行こう。エリーはここで待機な。」


「わかったわ。」


・・・・・・・・・・・


 『チルトン・イン』付近に来た時だった。


《キャー!!》


 女性の引き裂くような声が聞こえる。


 その方向に向かっていくと、そこにはオークに襲われているジェラードの叔母上が居た。


「ノーラ叔母さん!!」


 そういえば、名前を聞いていなかったな。そうかノーラさんか。


「ジェラード、お前は隙をついて、伯母上に飛びつけ。」


「わかった。」これから何をするか、ジェラードには伝わったようだ。


 じりっじりっとオークに近寄るジェラード・・・・・ジェラードはオークとノーラさんに間に割り込むように飛びついた。

 そのまま、俺は『ファイア』を唱え、オークをジェラードごと黒こげにする。


「申し訳ありません。緊急事態だったので・・・びっくりなさったでしょう。ジェラードには、火耐性の道具を渡してあったので大丈夫です。ご心配なく。」


 俺を指さし、パクパクと口を開閉しているノーラさんに言った。


 俺が助けたことが判ったのか、ぽぅーーと頬が赤くなるノーラさんだった。


◆◆◆◆◆◆◆


 あと3頭だ。いったいどこにいるんだ?


「市場の南だ。市場の南で人質を取っているそうだ。では、伯母上、これで失礼します。」


 俺はジェラードについて、走り出す。


 市場の南、つまり、冒険者ギルド付近だ。あ、だれかが人質になっている。


《アレクサンドラさん!》


 人質に対して叫ぶと、人質は余裕で手を振り返す。・・・もしかして、わざと捕まった?


 そんな疑念が湧くほど余裕の表情だ。オークが一瞬でも彼女を離せば、『フライ』で逃げられるのだろう。


《持ってますか!》


 彼女は高々とブレスレットを掲げる。


《用意はいいですか!》


 彼女は手を振ってくる。なんか、気が抜けてきた。


《1・・2・・3・・『ファイア』!》


 俺は彼女ごと、オークに『ファイア』を唱える。


 オークが怯んだ隙に彼女はするりと離れ、空に上がっていく。

 『ファイア』今度は長めに複数回唱える。それで、オークは黒こげだ。


 いつのまにか、近くにやってきていた彼女に抱きつかれた。


「怖かったわ!」


 外からみると、英雄に抱きついている人質という、微笑ましい光景だろうが・・・実際は、彼女の右手が、こっそり、蠢いていたりする。


「わかった、わかった、またあしたね。」


 もう返事も適当だ。


「シムラ、次、行くぞ!繁華街に出没したらしい!」


 また、俺はジェラードに付いて走り出す。

 そこで、俺達が見たものは、『ガラスヤ』のおねえさまたちの雄姿だった。


「なんで通りすぎようとするのよー。」


「あたしたちじゃ不服だとでもいうの!」


「いやーねぇ。ほら、おんながいっぱいいるでしょ。よりどりみどりよ。」


 出勤前なのか、若干不精ヒゲが残る状態で、ド迫力ダミ声の罵声みんなで、押さえつけ、タコ殴りしている。


「ジェラード、引き渡してもらって来い!俺は遠くで、見ているよ。」


 いやそうな顔をするジェラードだったが、諦めたのか近づいていく。

 ボロボロのオークはあっさりと捕まるというか、泣いてジェラードに

縋っているようだ。


 ジェラードの持っていたロープで近くの柱にぐるぐる巻きに縛り付けた。


「つ、つぎは、高級住宅地付近だ。」


 ジェラードが慌てるように駆け出した。


 そこは、領主の屋敷にも程近い左手に上級貴族の屋敷が立ち並ぶ場所の通り沿いにオークは居た。

 オークは10歳くらいの小さな子供を人質にとっている。


「なんで、エリー、ゴディバまで、どうしたんだ?」


 駆けつけてみるとそこには、エリーとゴディバが居た。

 なにやら、子供が叫んでいる。


《ゴディバじいちゃーん、たすけてーー。》


 ん、ゴディバの孫なのか?ということは?


「エリー!子持ちだったのか?」


「しぃむらぁ?なんて言ったのかなぁ?」


 さらに子供が叫んでいる。


《エリーママ、はやくーたすけてよー。》


「やっぱり、子持ちなんだ?」


 こっそり、ジェラードに聞く。


「そうだよ。エリーは子持ち、子持ちだ!」


「ジェラードお前、何言ってるんだよ!」


 エリーはジェラードを殴りつけている。それを俺は止める。


「とにかく、助けたほうがいいよな。」


「事情は後でしっかり説明するわ。助けてあげて!」


 俺は、オークの方に近づいていく。オークは、子供を片手で掴んだまま、俺を殴りつけてくる。

 1発・2発・3発・・・痛いことは痛いが殆どHPは減らない、おそらく、1万発以上は食らわないと死ねないだろう。


 殆ど無防備で近づいていくから、もう20発くらい殴られたかな。


《シムラ!!!》


 後方でエリーが叫んでいる。それでも、進むのを止めない俺。進んでは殴られ、進んでは殴られ、を繰り返している。


 ・・・つまり、俺はHPが多いことをいいことに相手の体力を減らし続けて、機会を狙っているわけだ。


 さらに、20発くらい殴られたか、そろそろ、顔が腫れ上がってきた。

 殴られるダメージよりも痛みのダメージの方が上になってきたようだ。


 額が切れ、瞼が切れ、視界が狭まっていく。


「少し見難いな。『治癒』」


 あっさりと元の顔に戻る俺。続けてまた近づいては殴られを繰り返す。


 何回目かの『治癒』を唱えたときには、流石のオークもフラフラだ。

 焦点も定まっていないだろう。それでも、子供は離さない。


「仕方が無いか。」


 そこで、『魅了』を2回唱え、オークの好感度が上がり、ほんの少し硬直した隙を狙いオークにタックルする。

 そのまま、子供を抱えこみ、《ジェラード!!!》

 ジェラードに放り投げる。よし、うまくキャッチしたようだ。


 オークはフラフラになりながらも、必死で俺を捕まえて代わりの人質にしようと後ろから抱きついてくる。


「フーーーー。」


 そのまま、俺は俺に向かって、『ファイア』を唱える。


《シムラー!!いやー!!》


 突然、俺が燃え上がったように見えたのだろう。エリーが叫んで、こちらに来ようとしているのを必死にジェラードが止めている。


《ギャオーーーー。》


 オークは、抱きついていた手を離し、転げ回っている。

 顔や胸などの前面は殆ど無事だが、背中が酷く焼きただれている。

 そのまま、数分転げ回っていたが、動かなくなり死んでしまったようだ。


 俺は、よろよろとジェラードの方に歩みよりジェラードの胸に倒れこむ。


 ジェラードは必死に支えてくれた。


「ジェラード・・・怖かった、怖かったんだ。大丈夫だろうとは思っていたが、確信があったわけじゃない。初めて使ったんだ、自分に向けて魔法を・・・。」


「うん。うん。大丈夫だよ。」


 ジェラードは背中に手を回し、ポンポンと叩いてくれる。


「しむらぁ?なんで、こっちにこないのぅ?」


 エリーが恨みがましい目で睨んで言っている。


「だって、お前、抱っこしてるじゃないか。その子供・・・。」


「ほら、命の恩人のシムラさんよ。ちゃんと挨拶しなさい。アリー。」


 子供は恥ずかしいのか、エリーの後ろに隠れて「エリーママ。」とかぼそい声でエリーに抱きついている。


「これは違うの。違うのよ。」


「まあ、まあ、落ち着けエリー、お前の子供なんだろ。否定してやるな。子供が可哀想だろ!!」


「・・・・・違うのに。」


 エリーは泣きそうな顔だ。


 ふと、目を隣に向けるとゴディバがニヤニヤ笑っている。

 なんだ違うのか。


「そろそろ、説明してもよろしいかな?アリーは俺の孫だ。確かにエリーはママと呼ばれている。だが、アリーはエリーの姪なのだ。まあ、エリーがアリーにママと呼ばせていたのだから、自業自得だよな。はっはっはっはぁ!」


「お・と・う・さ・ま。」


「そうなんだ。よかった。ははははは。」


 俺はエリーに近寄りそう言って抱きついた。


◆◆◆◆◆◆◆


「アリーです。はじめまして、もうすぐ11歳になります。」


「シムラ、18歳だ。よろしく。アリーちゃんと呼んでもいいか?」


 日本で11歳だとずいぶん大人だ。ちゃん付けは嫌かもしれないので確認してみる。


「ええ、かまわないわ。シムラお兄ちゃん。お兄ちゃんはママの恋人なの?ジェラの恋人?」


 なにか後半のほうが力強く、そうだったらいいな的な聞き方をされた気がする。やっぱり、ママの恋人は嫌なのだろう。


「そうだな。二人とも好きだ。」


 俺は真剣に正直に答える。

 この年頃は、誤魔化されるのが嫌だったな、少なくとも俺は。


 アリーはふーんというふうに、ジェラードと俺を交互に見ている。

 ジェラードは面と向かって言ったので、目を白黒させて少しうつむいて、赤くなっているようだ。


「あら、ジェラ、かわいーいー。本当に大好きなのね。」


「ママはどうなの?好きなんでしょ?同棲しているとも聞いたわ。」


「そう、聞いてるんだ。ごめんね、黙ってて。この私に好きなひとができたんだよ。笑っちゃうでしょ。でも、見ての通りの三角関係未満と言ったところかな。」


「シムラは、恋人が欲しくないの?」


 ずいぶん鋭くつっこんでくるな。

 自分でもなかなか先に進めていないのは自覚している。


「もちろん、欲しいさ!」


「じゃあ、わたしなんてどう?今はこんな身体だけど、将来有望よ。」


 確かに胸とかは出ていないが、スラリとしたところは、将来相当な美人になる可能性を秘めている。


「「アリー!!!」」


 エリーもジェラードも血相を変えて叫んでいる。


 アリーは平気な顔で俺の膝の上に乗り、俺の首に手を回してくる。


「アリーは、ゴディバ似だな。そんなにエリーをからかうなよ。」


「わかっちゃった?」


 アリーは悪戯がみつかっちゃったって顔で微笑んでいる。


「でも、少し本気!」


 アリーは、俺にキスする。俺もしっかり応えてやる、ディープなやつだ。


「「シムラ!!」」


 俺が離れるとアリーは満足そうな顔でポゥーーっとしてた。


「シムラ、どういうつもりよ!!」


「少しは俺も積極的に動こうと思ってな。積極的なやつは好きだから。」


「じゃ、俺も・・・」


 今度はジェラードが仕掛けてくる。


 ふと、エリーのほうを見ると握りこぶしの爪が手に食い込んでいる。

 ちょっと、やりすぎたか?


 ジェラードが離れると俺はエリーを呼ぶ。


「おいで!!」


 エリーは俺に飛び込み、キスをすると、もうこれでもかとばかりに抱きつき、左右のアリーとジェラードを威嚇している。


「ばかね。取らないわよママ。でも、たまには貸してちょうだい。」


「で、エリーには、お兄さんがいるのだね。」


「そうよ。兄は子供を置いて、首都で役人をやっているわ。昔から頭が良くて自慢の兄だったわ。でもね、この辺境の領地を守っていくには、頭だけ良くてもだめなのよ。やはり、武力や魔力でもって力を示さないと人はついてこない。」


「それなりの力を持った、婿を待ってたら、行き遅れたわけなのよ、ママは。だから、私と結婚しよ。そうすれば、パパが領主になれるわ。」


 なんか凄く簡単なことのように言われた。

 エリーは横で難しい顔をしている。


 俺は、エリーの頭を叩く。


「まさか、それが一番丸く収まるから譲るとでも考えているのか?」


 エリーは目線を合わせない。ズバリその通りだったようだ。


「おい、勝手に勝手な方向に話を進めんな。」


 エリーもアリーも「ビクッ」としている。


「わかった。じゃ、俺の選択はジェラードかな、それとも、街を出て行ってもいいな。」


《ダメー!嫌!》


 ようやく正気に返ったのか、エリーが叫んでいる。


「どうしたいんだ!」


「シムラと一緒になるの!誰が不幸になろうが関係ない!自分が幸せになりたい!シムラは絶対必要なの、譲れないわ!」


「というわけで、今日のところは、引き取ってくれないか?アリー。」


「チッ。よくもアテ馬にしてくれたわね。今に見なさい!絶対、振り向かせてみせるんだから!」


「楽しみにしてるよ!」と手を振る。


・・・・・・・・・・


 アリーは応接間で待っていたアローマに連れられて帰ったようだ。


「エリー!」「はひぃ!」


「ジェラード!」「はい!」


 3人掛けのソファの両隣に座らせる。


「エリー、あんな小娘に踊らされやがって!ジェラード、今日言ったことは真実だ!もし、エリーが俺の気持ちを感情を無視するような考えに傾けば、間違いなく、俺はこの街を出て行く!ジェラードに全てを捨てろとは言えないが付いて来たければ付いてくるがいい!わかった?」


「わかったわ。二度とあんな考えは起こさないわ。」


「そうだな!そうなったときのことを考えておくよ!」


「ほんとうに、俺はこの3人で、ずっと一生共にしたいと考えている。それでは、ダメか?ダメなのか?どうしても1番を決めなきゃいけないか?ま、よく考えてくれな。・・・・・今日は疲れたな。夕飯は、また何か出すよ。なにがいい?」


《《ステーキ!!》》こんなときばかり、ハモってやがる。


「却下!おまえらな・・・・そんなに喰いたいのか?2日連続ステーキかよ。」


 もう、よだれをたらさんばかりである。


「プ・・・・ははははは。まったく、はいはいわかりましたよ。ステーキね。」


 俺は『箱』からバッファローのステーキ、あんかけパスタそれと冷たいビン入りジュースを出してやる。


「おかわりはなしだ。よく味わえよ。」


 よほどお腹がすいていたのだろう。二人ともペロリと食べた。


 ゆっくりとステーキを頬張る俺をジッとみている。ふんふん、やらないもんね。


・・・・・・・・・・・・・


 さて、お風呂に入ろう、新居で初めてのお風呂だ。


 すこし悪戯心が湧き上がってくる。


「お風呂に入るぞ!俺と一緒に入りたいか?」


「「はい!」」


「じゃ、3人で入ろう!」


「「え!」」


 エリーとジェラードは見合わせている。横目で本気?という感じで見てくる。


「じゃ、お風呂入れてくる。どうするか?それまでに決めておけ!」


 俺は風呂場に行き、日常魔法の『給湯』を4回唱えるとちょうどいっぱいになったようだ。


「決まったか?」


「まだ。」


「じゃ、ジェラード背中を流してくれ。」


HP:1041776/1041776 MP:588216/1041776

知力:120/120 体力:120/120 腕力:535/535

GOLD:4324311

EXP:316285

ジョブ:『戦士Lv1』『魔術師Lv1』

スキル:『魅了Lv2』『翻訳』『鑑定』『精神鑑定』『箱』『必中』(使用済9日)

スキルポイント:0

武器:両手剣(材質オリハルコン50%)と鞘

防具:革鎧 盾(軽量合金)アクセサリー:革靴

魔法:『ファイア』『ウォータ』『ウインド』『ライトニング』

   『洗濯』『脱水』『給湯』

称号:勇者、犬に愛されしもの

2つ名:お嬢のいいひと、ワイバーン討伐の英雄


アイテム:

オリハルコンのギルドカードx1、チルトン会員権x1、運動靴x1、

家の鍵x1、店舗の鍵x3、片手剣x1

ナイフx1、フォークx1、スプーンx1、皿x6、スープ皿x3

サンドイッチx5、ジュースx1、カフェラテx20

ビン入ジュースケースx4、ビン入ジュースx21

ミートソーススパx10、たらこパスタx10、あんかけパスタx7

バッファローのステーキx13

ミカワ市観光地図x1

下着x3、ズボンx2、洋服x2、フェイスタオルx3、

ユニシロのシャツx1、リーブイスのジーンズx1、

インナー(火耐性(特)、水耐性(小)、風耐性(小)、雷耐性(微))x1

インナー(火耐性(中)、水耐性(中)、風耐性(中)、雷耐性(微))x3

クリーニング袋x1

日常魔法の本x1、魔法書Lv1のてびきx1


ハンガーx6、使いかけのノートx2、ノートx1、筆記用具x1

水筒x5

HP回復(コモン)x100、HP回復(アンコモン)x2、HP回復(レア)x2

MP回復(コモン)x2、MP回復(アンコモン)x2、MP回復(レア)x4

毒消し(コモン)x4、毒消し(アンコモン)x2、毒消し(レア)x2

HP回復(ハイレア)x2、MP回復(ハイレア)x1

肉包丁x1、研ぎ道具x1

薬草採取用手袋x2

薬草Yx1

薬草Bの袋x1、薬草Bx597

濡れたフェイスタオルx1


鶏肉x2


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