えみるちゃんの女神様
「ここは…どこだろう?」
幼い女の子がひとりキョトンとしています。
名前はえみる。
とても冒険心のある女の子で、お外に出ると、足の向くまま気の向くまま歩を進めてしまいます。そのため迷子になることもしょっちゅうで、そのたびにお父さんやお母さんに叱られてしまいます。
でも、えみるちゃんはめげません。いろんな世界を見たい知りたい。その好奇心がどうしても押さえきれないからです。
この日も雨の中で長ぐつ穿いてトコトコトコ♪ しばらく歩いていたら…またまた見たことのない場所に出てしまいました。
「迷子になっちゃった…。どうしよう…」
途方に暮れている間にも雨はさらに降り続きます。季節は冬とあって、寒さも身にしみます。
「寒いよぉ…。おうちに帰りたい…」
とうとう、えみるちゃんは目に涙を浮かべ、泣き出しそうになってしまいました。
「お嬢ちゃん。どうしたの? どこから来たの?」
通りがかったお姉さんが、えみるちゃんに話しかけてきました。
「おうち…わかんなくなっちゃった…」
えみるちゃんが泣き声でこたえると、お姉さんは、親切にもお姉さんの住むマンションに連れていってくれました。
「寒かったでしょ? これでも食べて」
温かいミルクと、ロールパンがテーブルに置かれました。
「おいしい♪」
小さなお口でパンを頬張ったえみるちゃんは、にっこりと微笑みました。
「さて、お嬢ちゃんのおうちを探さなくっちゃね」
お姉さんは一冊のスケッチブックを出してきました。
「わーっ♪ えみるねぇ、お絵かき上手なんだよ」
「そう。じゃあ、えみるちゃん、おうちの絵も描けるかなぁ?」
そういうと今度は、お姉さんはクレヨンを出しました。
「うん! 描けるよ。見ててね♪」
えみるちゃんはクレヨンを手にすると、一生懸命に絵を描き始めました。
「できたぁ♪」
にっこり微笑むえみるちゃんの絵をしばらくじっと見てから、お姉さんもにっこりと笑顔になりました。
「上手に描けてるねぇ。それじゃ、えみるちゃんのおうち見つけにいこうか♪」
「うん!」
マンションを出ると、お姉さんはえみるちゃんの手を取って歩きはじめました。しかもなんの迷いもなく、まるでえみるちゃんのおうちを知っているかのように歩を進めます。そして間もなく、えみるちゃんのおうちに着きました。
「わーっ! ちゃんとおうちに着いた。お姉さん、すごぉい! 魔法使いみたい」
えみるちゃんが感動してそういうと、お姉さんはこういいました。
「残念。私は魔法使いじゃなくて…女神様なんだよ。この街のね♪」
「へえぇ! 女神様なんだぁ! ありがとう女神様」
えみるが可愛らしくペコッとおじぎをすると、お姉さんはえみるちゃんの頭をやさしく撫でてあげました。
「どういたしまして…。いい、えみるちゃん。これからはねぇ、お外に出たら、よ~く周りを見て、帰り道をちゃんと覚えておいてね♪」
「うん、わかった! そうするね」
えみるちゃんは、お姉さんと別れ、おうちに帰りました。
それからえみるちゃんは、出かけるときにはよく周りの様子を見るようになりました。おかげで、どこに行っても道に迷うことなく、ちゃんとおうちに帰れるようになりました。そんなある日、自転車に乗っている女性の警察官に出会いました。見覚えのある顔です。えみるちゃんの顔が笑顔になりました。
「あ! あのときのお姉ちゃんだぁ♪」
そう、女神様は女性警察官だったのです。
「久しぶりね、えみるちゃん。お元気♪」
「うん! あの時はありがとう! えみるねぇ、もう迷子にならなくなったよ」
「そう、よかったねぇ♪」
久しぶりの再会に、えみるちゃんは大喜びしてお姉さんといろんな話をしました。それをニコニコしながら聞いてくれるお姉さんを見て、えみるちゃんは思いました。
(ああ、やっぱりお姉さんは女神様なんだなぁ)…っと。
おしまい。




