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アンサーを頂きましたSP

Lizreel様からアンサー小説を頂きました

量的にすでにSSではありませんね!

感動のあまりむせび泣きながら読ませていただきます

 グランダでちょっとした小競り合いがあった後、ユーパさんの仲裁のおかげでグランダ、モンジャ側双方に丸く収まり、ソミオとソミタも罪には問われなかった。牢屋にぶち込まれても勝手に出てきちゃうようなポテンシャルを持つ二人だけど、捕まらないにこしたことはない。

 モンジャの民をグランダの法律で裁くのも、他国民が他国でやりたい放題するのも色々問題がある。将来的には国際法整備とかもしないといけないのかな。そういうことも含めて、皆で話し合う場が必要か。


 私は翌朝、最近お留守番ばっかりでつまんなぁいとぶーぶー言うモフコ先輩をなだめすかして神殿に残し、ネスト王パウルさんを訪ねてやってきた。二人同時に神殿をあけると、誰かが駆け込んできたときよくないからね。

 ネストに着くとちょうどパウルさんが窓を開けて顔をだしていたので、私は王城の窓に吸い寄せられ、近づいて手を振ると気付いてくれた。部屋の中には誰もいなかったから、パウルさんの礼拝の時間だったらしい。城の側面で猛然と回る風車に切り刻まれてミンチにされないように細心の注意を払いながら、静かに窓辺に降り立つ。おっとと、と足元を支えてくれようとするパウルさん。大丈夫ですよ落ちませんからね。

『パウルさんおはようございます! 今日もいい朝ですね』

「やあ赤い神様、今朝のお祈りをしようと思っていたところです、丁度いいので聞いていってください。それにしても今日は窓からお越しですか」

 お祈りするので聞いてくださいって、何だか一曲歌うので聞いてください、みたいなノリですよね。お祈りはネスト民の習慣らしいけど、私は以前、別に日課にしなくてもいいですと言ったことはある。


『王城の門があいていなかったのと、窓があいていたもので、こちらに来てしまいました。お行儀悪かったですね。次は正門から入りましょう』

「いいんですよ、神様はどこから来てくださっても。私はあなたのお越しをいつだって待望しています」 

 窓から王の間に入ると、パウルさん、王様なのにひざまづいて祈りを捧げてくれた。ネスト民はやっぱり朝に晩に、毎日熱心にお祈りしてくれてるみたいで有難いやら、恥ずかしいやら。ぶっちゃけ、お祈りは面と向かって言ってほしいよね。遠くで祈られても私把握しきれないしさ。


 でもネスト民が一番信仰熱心なんだよなー。私と友達感覚のモンジャ民や、何かお祈りが呪術がかってるグランダ民とは違う、大人しく敬虔な一般信徒って感じ。国民性は温和でとぼけてて総じておっとりしてる。パウルさんの人柄なのかね、グランダもそうだけど、王家への支持は厚い。王様も民から慕われてる。

 お祈りを終えたパウルさんに祝福して、ネスト用のチラシを作ってたのでそれを渡す。フルカラーできれいに作りました。勿論、案内文はネストの文字でね。私もモンジャ、グランダ、ネストの全ての文字を使えるわけじゃない、だからモフコ先輩に翻訳してもらったんだ。


 パウルさんは恭しくチラシを受け取り、一通り目を通した。

「これはこれは、興味深い催しでござます」

よかった、パウルさんの反応は上々。

『問題ないようでしたら、ネストの民に周知していただけると助かります』

 パウルさんよくみると、王様だけど王冠もつけないんだよなこの人。服もシツジ毛だと思われる青色のガウンに、茶色のシャツとパンツ。ちょっとつぎが入ってたりして、着てる物は質素だ。王様より領主然とした雰囲気だよね、皆が広く顔を知って慕っているから、王権を主張するものなんて身に着ける必要がないんだ。民に愛される理想的な国王の姿ではある。


『よかった。手がすいている人だけ参加してくださればいいので。参加者にはささやかな記念品を贈るつもりですよ』

 実は何を贈るかまだ考えていませんけど、皆、参加賞何がほしいのかな。希望とってみようか。参加者全員にとなると本当にささやかなものしかあげられないけど。

大会期間中はグランダのはからいで、グランダ城を解放して宿泊施設の提供も行なわれる。キララには感謝しないとね。


「ネストは今でこそ平和ですが、民は以前困窮した暮らしをしておりまして、これといった娯楽を知らないのでございます。また、大陸の文化を知りたがっております。グランダ国を訪れるよい機会となるでしょう。王家からはパズとチピロ、ミシカ、その他御家人を参加させましょう」

 パウルさんの息子さん、というかミシカの兄ちゃんの名前、パズさんだったの!? ちなみにミシカのお姉さんはチピロっていうらしい。


 ……やりすぎでしょモフコ先輩。何ならもうジヴリ全作品コンプする予定ですか。

 パズさん、区画解放イベントのときあまり絡まなかったし目立たなかったけど、どんな人なんだろう? パウルさんの話によると、ネスト一の怪力の持ち主なので槍投げに出します。とのこと。槍投げと言えば……ソミオとソミタの兄弟が出てくれるだろうから、まさか彼らにライバルあらわる? 彼ら、絶対に鉄の槍じゃなくて石の銛を投げようとするんだろうね。まあいいや、そのあたりは各自の裁量に任せよう。

 あとは御家人の中でも親衛隊らしき人々……と、ネスト大地で足腰を鍛えた若者たち。よく考えたらネスト民て滅茶苦茶俊足なんだよね。生まれた時から酸素の薄い高地でトレーニングやってるようなものだから、短距離走、長距離走はネスト民が独占入賞しちゃうかもしんない。


 対するモンジャ民のスプリンターって誰だろ。ロイは勿論俊足だけど、よーいドンで全員の駆けっこやったことがないからよくわかんない。ストップウォッチもないし。原始時代さながらの生活を続けてきた民だから、ポテンシャルは物凄いもの持ってると思う。追いかけてくる獣から裸足でダッシュで逃げて、しかもその獣をまいちゃうような民だ。違うか、必死か。死なないように必死だからね。


 パウルさんの娘のチピロさんは弓の名手らしい。弓術は飛距離を競うのではなく、的当てだから女性でも参加できる。古代オリンピックは女性は参加できなかったみたいだけど、今回の祭典は男女平等に参加権はある、というのも、私は27管区を男尊女卑の世界にはしたくなかった。

 他に参加者というと……


『先日、グランダの地でユーパさんという方に会いましたが……』

 グランダで見かけた、ネストの剣士だよ。明らかにスペックおかしかったあのお爺ちゃん。モフコ先輩、名前といい、姿といい……某ジヴリ作品の設定通りに造っちゃったんだな……ちょっとはオリジナリティ出しましょうよ先輩、キャラデザがあなた壊滅的にダメですよ。そのユーパさん、もしかして剣術で出てくれるのかな? ネスト民であんなにハイスペックだった人、御家人にはいなかったと思うんだけど。モフコ先輩、どうして一人だけパラメータをおかしくしちゃった!? でもユーパさんが出てくれたら凄く盛り上がると思んだ。

 パウルさんはユーパさんの名前を聞いて一瞬困ったような顔をしたけど


「ユーパにも声をかけてはみますが、表に出ることを嫌う性格ですし、しいていうなら彼は放浪癖のある私の友人であってネストの民ではないのでございます。ですから出ると言うかどうか……」

 あ……。今気づいたけどこれもしユーパさんが優勝したらキララの結婚相手、ヘタしたらユーパさんになっちゃうかもしれないんだっけ! いや、いいんですよ別に歳の差婚でも……でも、ちょっとさすがにそれはキララさん可哀想だから是非とも若者にエントリーしてほしい。


『ちなみにユーパさんは既婚者ですか?』

「ユーパは既婚ですが男やもめです。娘がいますね」

 よかったよかった。既婚者だったのか、寡夫だというからよくないけどよかった。

 何だか不穏な空気が漂ってるけど、競技祭典大丈夫かな?


 ものはついで、ということでネスト民も全員祝福して帰る。

 ミシカを捜してシツジ牧場のあたりにやってきたら

「赤い神様――!」

 シツジに乗って、ミシカが牧場の向こうから走ってきた。彼女、近くまでシツジを走らせてきたかと思えばシツジの上からぴょーいと跳んだので、慌てて私も跳んで抱きとめ空中で衝撃を吸収する。抱きこんだ彼女はふわりと三つ編みの銀髪が揺れ、女の子のよい香りがした。今日の彼女は白いニットスカートだ。

『シツジの背から跳んだら危ないですよ、ミシカさん』

「神様なら抱きとめてくださると思ってましたから」

『もう……手が滑ったら落としてしまったかもしれませんよ』

 かわいいなあ、ってことでミシカをぎゅっと抱きしめて祝福する。一応祝福するときに老若男女選り好みはしませんけど、やっぱり年頃の女の子はかわいいって気持ちはある。気持ち祝福が長くなっちゃうことも。できるだけ平等にしようと心掛けてはいるんだけどね。


 ん……あれ? でもいつもとミシカの様子が違う。抱き心地が違うから分かるよ、いつもと違って弱弱しい。身体に力が入ってない。何か悩みを抱えているみたいだ。


 何があったんだろう。理由をさぐるために、少しミシカの日課に付き合うことにした。ミシカの日課の干し藁の運搬を手伝ったあと、絞りたてのシツジの乳を布で濾して、チーズ作りの下ごしらえ。シツジ乳が意外と大量にあるので、手伝ってあげる。ミルクの濃厚な匂いが辺りに立ち込める。これ全部彼女がやるみたいだ。女の人って大変だね。


「前から聞きたかったのですけれど。神様って、どうして赤いんですか?」

『ああ、これは生まれつきこうだったんです』

 二人きりで間を持て余したのか、ミシカが間をもたせるような質問をしてくる。何でだろう、普段はもっと色んなこと話してくれるのに。上の空みたいだ。

「それから、神様って何歳なんですか?」

『ご想像にお任せしますよ』

 シツジ乳がぱんぱんに入った重い甕を台車を使わず軽々と運び、倉庫に収納する。これを一日発酵させてフレッシュチーズにするんだって。おいしそうだね、シツジ乳がどんな味かは知りませんけども。私はブルーチーズが好きでした。誰も聞いちゃいないでしょうが。


「内緒なんですね」

 年齢とか一体どういう設定にすればいいのか分かんないし。この世界に生まれてからは9年だから9歳なんだろうけど、そう言っちゃうと何かがっかりしそう。何て言おうと考えた挙句


『ほら、その。年齢なんて気にしても仕方ないですし、謎が多い方がよいのではないでしょうか』

「……そ、そうですよね」

 ミシカは寂しそうに笑った。しまった、こんな答え方したら話題潰しちゃったよね。

『何か悩みがあるようですが、どうされましたか。こう見えて口はかたいので安心してください』

 口がかたい言ってもメグに本名ばらしちゃったのは別ね。いやでも自分の身を切り売りしたとしても素民の秘密を洩らしたことはないよ。ミシカの心も読もうと思ったら読めるんですけど、一応口頭で聞いてみる。


「私、来年結婚しないといけないんです」


 ぎゃ――! ここにもいたかー!! 

 キララに引き続きミシカも婚活始まっちゃったのか。確かに王家の血筋が途絶えないように、早めに結婚して出産てのは古来からの定石ではある。そのためには……十代前半でもう結婚相手決まっちゃうのか。女性の権利とかどうすればいいんだろうな。

 民主主義と男女同権、女性の権利を打ち出したところで、それが時代に即しているかというと……判断が難しい。こういうのはネストの文化の問題にもかかわってくるし……まいった。

 それに恋愛関係の問題だと私、現役の男じゃないからそういうのにはすこぶる疎い。


『結婚するとは、どなたと?』

「……もう許婚の相手がいるのですが」


 マジで――!? 何か私、娘に彼氏ができたと言われた父親の気分。いいんですよ、いいんですけど、おめでたいことなんですけど。ミシカは浮かない顔。

 ミシカってメグより幼いから不意打ちくらったよ。

 恋愛の話だということで、人の来なさそうな崖っぷちに二人で腰かけてみる。大丈夫、ミシカが思い余って飛んじゃっても私がいるから落ちはしない。周囲百メートルほど人はいないのをよく確認して話題を仕切り直す、壁に耳あり障子に目ありだよ。ロイヤルスキャンダルが好きなのは、現実世界もそうだけどネスト民も同じだろうからね。皇室特集とか、私のリアル親とか欠かさず見ちゃいますからね。


『えーと……その許嫁のお方がミシカさんの好みでない、と』

 だよね? そういうことでいいんだよね? 間違ってないよね?

 私にも恋愛アドバイザーが欲しいマジで。こういう問題は毎回どんなアドバイスしていいか分からなくて困ります。


「好みでないというか……好きという気持ちになれないというか。分かってるんです。我儘言っちゃいけないって。父を喜ばせてあげたいですし、相手も立派な方です。あぁ~もう何言ってるんだろ、ごめんなさい。馬鹿なこといって」


 テンパってるのか悩んでるのか、両手で覆ったミシカの頭から湯気が出そうになってる。

 パウルさんも、ミシカに早く幸せになってほしいと思うばかりで一切悪気はないんだろう。それがネストの風習だと言われれば、本当はそのしきたりに従うべきなのかもしれない。モンジャ民は基本自由恋愛だから、こういう問題は起こらなかったけど……。

 お見合い婚かー、現代社会でも未だにあるといえばある。ただ、現代社会でのお見合い婚は離婚率が高いんですけれども。ネストではこれが普通なのか。


『パウルさんには何と』

「父への返事は保留にしています……父を悲しませたくないので」

『乗り気でないなら、断るべきだと私は思いますよ。あなたが言いにくいなら、私がパウルさんを説得しましょうか』


 家の問題に外部者がしゃしゃり出ていくようだけど、最低限でもミシカが納得できないと、ミシカが不幸になる結婚は私が許しません。パウルさんを喜ばせてあげたいとか、そういう動機で結婚するのは違うと思うんだよ。しかもまだミシカは十四歳程度だ。

 ぶっちゃけ、この世界の人たち結婚早過ぎね? まだ伴侶を決められる判断能力も育ってないと思うんだ。私の時代の価値観を持ち出すのもどうかと思うけどさ。ちなみに私は、モンジャ、グランダ、ネストの結婚許可を与える裁量を各地域の長からゆだねられている。望まぬ結婚を迫られている場合は読心術で分かるから、そういう事情が明らかになった場合には、何件か結婚を却下したこともある。

 だから私が『認めません』と一言言えば、この結婚は簡単に破談になるわけなんだけど。まさかミシカ、私に却下してほしいと思ってるのかな。


「私は王家の人間ですから、我慢しなければならないこともあると思います。でも……」

 ぎゅっと、ニットスカートの裾を両手で握りしめる。……何かかわいそうだ、こういうことは自分の自由にならないんだよね。


『お相手の方は、ミシカさんとの結婚を急いでおられるのでしょうか』

「急いでいるというより……そういうしきたりなんです。ネストの民は、15歳で成人式を迎えます。それまでに将来の結婚相手を決めておかなければなりません。私も来年、王女として成人儀があります。父に何と言えば良いか」

 ミシカは私にしなだれかかって悲しそう。

 相手……誰なんだろうな。私も面識はあるはずだ。私はネスト民全員を祝福してるから。相手が分かったら、相手の気持ちを覗いてみようかしら。


「神様は、誰かを好きになったりするんですか? 恋愛の話でですよ」

 唐突にふられました。え? 私っすか!? そんなの聞いても面白くないでしょうに。

 しかも恋愛限定ときた。たまーにこういうこと聞いてくる子いるんだよな。


『皆さんのことは心から大好きですよ。ですが恋愛ではありませんね』


誰に聞かれても、一応これで貫いてます私。特定の素民と仲良くしたら、本当に揉めちゃうから。皆を平等にってことで、メグとも少し距離が離れてしまったなぁ……。

「誰かを一番、ってことはないんですか」

『そういうことは、ありませんね』

 誰も愛していないのか、そう聞かれたような気がした。

 私の答えを聞いたミシカは、少し肩を落とし、そしてどこか安心したような表情で。


「神様なんです。私の好きな人」

『!? ……そ、そうですか』


 私はミシカの告白を、面食らいつつもどこか他人事のように聞いていた。ここで微笑むのは場違いな気がするんだけど、どんな顔をしていいのか分からなくて、少し微笑んでしまった。それを、笑われていると勘違いしたんだろうか。彼女は肩をすぼめて


「おかしいですよね、こんな事言うなんて」


 なんかさ……。

 前から思ってたんだけど、こんなに皆が寄ってたかって好意を寄せてくれるのも正直つらいんだ。だって誰にも応えてあげられない。嬉しいとは思う、けどこの身体じゃ誰かと愛し合うこともできないし、好きだって気持ちも以前と比べるとすっかり変容してる気がするんだ。より普遍的なものに。

 私が人を愛することができなくなって、もう九年が経つ。

 その間に私たちの想いはいくつもすれ違って、決して交わることはないだろう。 

 一人でも、せめて想いを真剣に受け止めたいと思うのに……私は本当に薄情な神だ。

 誰かを愛するということが分からなくなっている。博愛することしかできない。


「神様の事、大好きです。私は愛していると思っています。一番好きな人がここにいるのに、どうして結婚しないといけないのかと思うと悲しくて。人は神様を好きになってはいけないんですよね……」


『……ミシカさん。それは』

 愛情にもいろいろ分類があるってのは知ってるけど、心理学は私の専門分野じゃない。

 私が民に与えるのは見返りを求めない、神のアガペーと呼ばれるもの、厳密に言うと違うのかもしれないけれど、アガルタの神が目指しているのは無償の愛だ。そしてミシカが私に向けるのは、エロースでもストロゲーでもなくて、信仰なんじゃないのか? もし私が人間だったら、君は何といったんだろう。返答に窮していると。


「いいんです、何も言わないでください。答えはわかってるんです、優しい言葉をかけられると傷つきます。私、告白する前から神様にフラれるんだって……ごめんなさい、困った子で」


 この先、ミシカには絶対にこの縁談より幸せになれる運命の人が待っているだろう。だからそんな、神に憧れを擁くような精神状態で、人として幸せになることを諦めてしまってはだめだ。私は彼女を抱きしめて、彼女に言い聞かせるように告げた。


『ミシカさん。あなたの心はよく分かりました。であれば、私がどうこうということはさておき、この縁談は受けてはいけません。その方と共に歩む未来を想像できないのでしたら、あなたが不幸になってしまいます。あなたがしっかりとパウルさんに伝えてください、私が取り消すのではなく。パウルさんは悲しまないと思いますよ』


 かわいい娘が不幸になる方が、パウルさんは悲しむだろうから。それが親心ってもんだよ。

「……決心が決まりました。背中を押してくださって、ありがとうございます。やっぱり断ろうと思います」


 ミシカは遠くに目を凝らす。一人と一柱で並んで座る北側の崖っぷちの向こうは、霞がかかった、雄大なグランダの陸地が見えた。

「あと一年で、神様以外に現れるんでしょうか……私の好きな人」

 どうしても一年で、ってこだわりがあるみたいだ。十五歳の誕生日までに、ってのがネスト王家のしきたりだから、それを破ってお父さんを困らせたくないんだよねきっと……。お父さん思いのいい子だよミシカは、だからお父さんも絶対に君の気持分かってくれるよ。

『先見はできない神なので分かりませんが、一年以内ではなくともいつかは現れると思いますよ。ゆっくりと焦らず探せばよいのではないでしょうか。そしてミシカさんは、色々な体験をして見識を広めておきましょう』


 その後、ミシカに競技会の説明すると、祭典を盛り上げたいので弓術で出ます。とのこと。弓の腕前は姉には及びませんけど、とはにかんだ。

「世界中の民が一同に集う祭典に、もしかしたら素敵な殿方がいらっしゃるかもしれませんね」

 そういや、モンジャからは弓術競技にはラウルさんが出てくれるはずだけど。ラウルさんはメグにぞっこんだからなあ……ないかこの二人は。ミシカと気の合いそうなイケメン、どこにいるんだろう。


 キララは競技祭典の優勝者に求婚するって言ってるし、ミシカは婿さがしするし。波乱含みな予感がビンビンするよ。ネスト、グランダ王家の逆玉の輿に乗りたい人、どこかにいませんでしょうか。

 ていうかこの子、A.I.なんだっけ人間なんだっけ? グランダには患者さんいないってエトワール先輩が言ってたけど、ネストには確か投入されてるんだよね。伊藤さんがネストにも追加するって言ってたし……。


『ところでミシカさんは、夢を見ますか?』

「え、はい」

 ええ――――ミシカって人間だったの――!? じゃ中止――! 

 中止中止縁談とか絶対中止――!

 彼女人間だから結婚できない。でも来年までに結婚しなきゃって焦ってる。


 どうしよう私、来年までにハゲそう。

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