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10月18日のこと

作者: 名前はP
掲載日:2026/11/06

2026年10月18日(日) 時間はおそらくPM11時。

私は自殺をした。

致死量の薬を飲んだ。

インターネットで調べて間違いのない情報を得て決行した。

致死量を遥かに上回る量を飲んだ

ああ、やっと、やっと、逝けると思い薬を飲んだ。今思えば怖いくらいに冷静に、それでいて全く普通に栄養剤を飲むように飲んだ。

もしかしたら、顔は少しだけ今までより柔らかい表情をしていたかもしれない。

最近の私は仕事に追われ全く余裕のない毎日で、何をしても楽しくない。

休日でも週明けの月曜はこれやってあれやって、言いづらいあの人にあれをやってくれというの嫌だなぁ。それでも仕事だからなぁ。

ああ、ストレスだ。

もういいや。

もうやめちまおう。

人生なんてこんなものだ。終わりなんて急に来るものだ。

それでいい。

私には同じ年の妻がいる。とてもとても大事な妻がいる。

休日の土曜日にいつものように一緒に出かけた。

映画を観た。楽しかった。

その夜、他愛無い会話をしているとちょっとしたことで言い合いになった。

私の心の余裕のない状態では抑えきれない感情で言ってしまった。

今日は朝から何でそんなに責める言い方をするんだ!

妻は全く普通の言い方をしていた。でも毎日余裕のない私にとっては、寝てても起きてても仕事が頭から離れなくてずーっと仕事を頭に残しながら妻と会話していて、ちょっと嚙み合わない会話があると、

距離が近いから余計に腹が立った。次の日の日曜日。

朝に何とか普通に挨拶をしたつもりだったけど聴こえてなかったのか無反応。

日曜日は一日会話なし。視界に入ってもない感じだった。

ああもういいや!

全部放り投げちまおう。何で俺だけがそんなに苦しまなけりゃならないんだ!

そんな事を思いながらその夜決行した。

それでも家で死んだら事故物件になってしまうと思い、ちょっと離れた所まで歩いて行って道中で

行き倒れよう。急な心筋梗塞を装えればいい。飲んだのはそういう薬。

そう、それでいこう。

よし。薬も飲んだし後は数分から一時間後には終わるだろう。本当の意味で外にいけると心底願っていた。少し歩いた。何も起こらない。ん?何だ?

ある程度の時間が経った。あれ?俺何でまだ生きてんだ?

時間は多分AM2時30分は回ってただろう。

ちょっと寒いな。一旦家に帰ろう。

おいおい、お前死ぬつもりで家を出たんだろう?

そう。そのつもりで家を出た。

だけどなぜか家に帰ってきた。

歩いたおかげで心臓はドキドキしている。

もういいや。家が事故物件になっても。

だって俺を苦しめたのは仕事と妻だ。

死んだあとの事は知らねぇ。

そう。全くの自暴自棄。他責の極み。

そんな奴は死んだほうがいい。

自分もそう思っていた。全部自分でも解っていた。

その夜寝室のベッドに横たわる。

ああ、心臓は異常な早さで鼓動している。自分でもうるさい程に心臓が叩いている。

いいぞ。このまま心臓が壊れてしまえ。

そう思いながら目を閉じる。

家の扉や部屋の壁紙、思い出なんか全く気にすることなくただただ数分後、数時間後には

息絶えてる事だけを願って本当の眠りに就きたいと最後の願いを込めて目を閉じた。

心臓は異常に叩いている。

ずーっと待った眠れずに。

何もおきない。

いい加減痺れをきらして、思い切り心臓の辺りを何回も右手のこぶしで何回も強く叩いた。

早く止まってしまえ。

何で死なせてくれない。

もう疲れた。もういい。逝きたいんだ。自分の体は思った以上に強かったようだ。

いつの間にか眠りについていた。

数時間後朝が来た。

どうしよう・・・

何だか普通に起きてしまった。

ん?ちょっと待てよ。何だか眩暈がするぞ。

気持ちも悪い。トイレでちょっと吐いた。

これから本格的に来るか?

出勤時間が迫る。

それまでに気を失って逝けるかと願いながら出勤時間が来る。

相変わらず妻との会話はない。

正直出勤できる状態ではない。

数時間前にオーバードーズで死のうとしてたのだから。

だが妻に調子が悪いから休むなんて口が裂けても言えない。

だって死んで嫌がらせをしようとしてた相手に弱みを見せたくない。

心は弱くて死のうとしてたのにいざとなったら強がってる自分の心。

自分で自分が解らないまま出勤時間か来た。

行ってくるよ。妻は気を付けてと一言だけ言ってくれる。

私はふらふらした頭で仕事に向かう。

気を付けてといわれてもこっちは数時間前は死のうと動いていたのに、

今は生きるために仕事に向かう。

なんだこの矛盾の極みは。

途中で吊ってしまおうかと考えてもいたがそんな勇気もないまま会社に到着した。

何で生きようと出社したんだ俺は。と、歩いていると更に眩暈がひどくなる。

なんとかタイムカードを押し出勤時間を打刻する。同僚に挨拶する。椅子に座る。

いつもの流れがその朝ではなんとかやっとだった。

いやー、昨日は飲みすぎちゃったよ。眩暈の理由を嘘ついた。確かに眩暈で顔は青ざめていた。

同僚も心配な顔をしていた。始業時間まで回復するかそれが自分でも心配だった。

本当は今すぐに気でも失ってそのままって思っているのにそうならない事にまた落ち込んでいる。

とても面倒くさい人間。頭はガンガンと痛みを訴えてくる。まいったな・・・。本当にただの二日酔い位な感じになってきたぞ。始業時間のアラームがなる。なんとか椅子から立ち上がる。ふらつく。

何とか歩いて朝礼の場に着く。全員が集まる。おはようございます。朝礼ではみんなの前で一番最初に声を発する。

いつもと変わらぬ声。自分でも拍子抜けするほどスムーズに朝のスケジュールを説明していた。

3分程で朝礼は終わりいつもの作業場向かう。ふらつく。それを悟られないようにぐるぐる回る頭を抑えながら歩く。何とかたどり着く。さぁ、いつもと同じ作業だ。大丈夫大丈夫。自分に暗示をかける。

暗示が効いたのか何とか仕事はこなせた。ふらふらするが、ひどい二日酔いの時だってやってのけたさ。

職歴30年以上の仕事人の体に染み付いた感覚は凄いものだ。

昼休みが来た。食欲はもちろんない。食べたら吐いてしまうかもしれない。

しかし、妻はこんな私にも朝早く起きて弁当を作ってくれた。ありがたかった。

いつも作ってくれるのには感謝はしていたが、こんな揉めている様な時にも作ってくれた事に応えるためにも、こりゃ無理してでも完食するしかないだろ。頑張って食べる。この食事は自分で生きる為より妻の為に食べていた。元来食べ物を残すのは大嫌いの性分もあった私にとって捨てるのはもっての外。

正直、一口を飲み込むのに、みそ汁を含まないととてもじゃないが喉を通らない。食欲はそもそもない以上に唾液が全くでないのだ。口は常にからから。それでいて飲み物も体は欲していない。

やはりいつもとは違うと思いながら何とか食事を終える。昼休みが終わるまで机に突っ伏していた。

いつもはそんな事のない私を見て同僚は気遣ってくれる。ありがとう。

午後の仕事が始まる。いつも通りこなした。特に失敗などなく。一日が終わる。

そういえば今日1日、口がからからだったなー。トイレにもいっていない。一応確認の為にもちょっとトイレにいって小のほうをしてみようかな?

がんばってだす。ちょろ。片手をお椀の様にして収まるくらいの量。

あっ・・・。もしかして腎臓やったか?

いつもならあれ?と思うだろうが、そりゃそうだ。死ぬ位の薬飲んでいるのだから。

というか何普通に仕事終えてるんだと思うだろうが、これがベテランなのだよ。

相変わらず眩暈する。帰りも慎重に帰った。帰る前に妻に連絡のメールをする。

返事はいつもと変わらず来る。家に着く直前に連絡をする。これはいつもと同じ毎日のこと。

なるべくいつもと変わらない動きをした。返事は来る。家に着いた。ここからはいつもと少し違う。いつもは家から出てきて出迎えてくれる。この日は玄関の電気が点いて終わり。

出迎える事なんてなかった。玄関のドアを開ける。玄関にはいない。ただいま。私も元気なく言う。

元気はそもそもない。リビングに向かうと妻がいた。夕飯を作っていた。帰ったよ。一言いう。

妻無視。私の方なんて全く見ない。まるで居ないかの様に。もうそれもちょっとは慣れた。

頭は相変わらずガンガンする。ちょっと体温計で計る。体温37.1。もともと体温は高めの私にとってはほぼ平熱だった。なんだかもっと40度位出てるんじゃないかと思っていたからがっかりしながら、妻に風呂に行く事を告げる。無視。風呂に行く。出てくる。その後夕飯。もちろん食欲なんてない。

気付かれないように汁物を利用しながら何とか食べきった。会話なんてもちろん無いまま。

急な眠気が来た。時間は午後7時30分。もう寝よう。心臓はずっとバクバクうるさい。

このまま寝ちまえば寝てる間に昨夜の薬が時間差で効くか?

今度こそ永眠を願って、もう寝るよ。妻に言う。無視。


私は、これが最後の言葉だよと思い、2階のベッドに向かう。

ベッドに横たわる。さっきの眠気はない。けど心臓の鼓動は早い。

田舎なもので家の周りは静かだ。うるさいのは自分の心臓だけ。

うるさすぎて全く眠れない。眠りに入ってしまえばそのまま目が覚める事無く逝ける事を思ってても

そもそも眠れない。そうこうしてる内に妻が寝室に向かってくる足音が聴こえてきた。

時刻は午後10時。ベッドに横たわって2時間30分ずっと眠れずに苦しんでいる。

妻が寝室に入ってきた。参ったな。体調悪い様子を見せて、いつもよりかなり早く寝室に行ったくせに寝てねーじゃんかと思われるのは恥ずかしいな。

そう思い寝たふりをした。必死に。そう本当に字の如く必ず死ぬ様に。死ぬことを願いながら。

息を止めて全く動かないようにしながら。もしかしたら息をしていない、動かない私を見たら心配して話しかけてくれるんじゃないかと思っていた。

そんなことは妻が眠りに着くまで全くなかった。そもそも見てもなかったのだろう。妻就寝。

私はその後も寝たふりを続けた。今度は自分を寝たふりで自分を騙す様に。

心臓は相変らず私に寝るな。寝むれない様にうるさくしてやるぞと胸を叩いている。

いつの間にか眠れていたようだ。朝が来た。また生き延びたのか。がっかりしながら1階に降りる。

相変らず頭はガンガンする。喉はからから。いつもは夜中に何回もトイレに起きているのに、

最初にベッドに入ってから朝までトイレに行くことはなかった。起きてもトイレに行くことはない。

やはり普通ではない。

もう寝るよって言葉が最後にしたのに妻におはようって言った。

もちろん無視。それでも弁当は作ってくれている。

出勤時間まで体力を使わないに目を瞑る。

時間が来た。いつものように支度をして出かける。

行ってくるよ。気を付けて。昨日と全く同じ表情と声色。

元気なく出勤する。

出勤途中でふと思う。田舎なもんで山はある。橋もある。

このまま木に紐を括りつけて吊るか、橋から飛ぶかなんて考えながら仕事場に向かう。

そんな勇気もないくせに。そう。大量に服薬はできるくせに外傷を伴うのは気が進まない。

死ぬのに見た目はできるだけ損なわない様にしたいなんて贅沢な願望を持っている変な奴。

自殺決行してから生き延びて2日目。出勤した。

相変らず体の状態は同じ。少し後悔してきた。体はつらいのに死ねないのか。

これ、ずっと続くのか?これ一生?

まじで?

でも一発で召される事をやれる勇気はない。

少し様子を見よう。死ぬためにやれる事はやったし後は待とう。

今は時限爆弾を仕込んだと思う様によう。

気分は最悪な状態。昼休み妻にメールした。土曜日の言動やいろいろな事を謝った。

せめて死ぬ前に仲直りだけはしておきたかった。妻から返事が来た。妻も言い方が悪かったなどいろいろ謝ってくれた。仲直りできた。

午後から仕事が頑張れた。

メンタルは少し整ってきた。

体は変わらず。しんどい。

1日の就業が終わった。

帰るよ。連絡する。

返事が来る。いつもと同じ文面で。だが受け取る方の気分次第で印象は全く違うものだ。

私はウキウキした気分で帰った。いつものようの家に着く前にまたメールする。

家に着く。玄関の明かりが点く。妻が家から出てきて迎えてくれた。

いつもの光景だ。それがたまらなくうれしかった。

反面、私は取り返しのつかないことをしてしまったと自分を責めた。

ただこの事は絶対に死ぬまで黙っていなければならないと思った。

言ってしまったらお前のせいでもあると言っているのと同じだから。

今度は生きて死ぬ事を隠すのを考えていた。

いつもの様な夜を過ごす夕飯は昨夜より味もしたし美味しく頂いた。

会話があったからだと思う。更に自分は何て事をしたんだと少し笑顔が下手になっていた。

いつもの火曜日の夜。夫婦で過ごす20年以上のいつもの火曜日の夜。それがたまらなく嬉しかった。

違うのは私の体。相変らず不調。けど、それは自分の勝手が招いた不始末。

そこは頑張る事から逃げた奴が頑張るしかないだろう。生き延びてしまったのだから。

いつも通りのスケジュール通りに午後10時に一緒に寝室に向かう。

じゃ、お休み。お互い眠りに着く。とても幸せな気分だった。

けど眠れるわけもない。相変らず心臓がうるさい。うるさくて眠れない。うるさい?それはお前がそうしたんだろうが!

そう。そうしたのは自分。自分勝手なもので昨日まではこの心臓が早く止まってしまえと願ってたのに今度は止まらなくてもいいかと考えていた。そう考えている内にいつの間にか眠っていた。朝までぐっすり。水曜日の朝。気持ちよく起きた。なんてことのない平日の朝を迎えていた。おはよう。おはよう。朝の挨拶を返してくれた。いつもの朝。そう!このなんてことのない朝が欲しかったんだよ。この2日間。精神的にも満たされた。俺は大丈夫。大丈夫。そう自分に言い聞かせる。

トイレに行く。まるでやってしまった事が何にもなかったようにいっぱい出た。

ん?あれ?俺の体ちょっと体調戻ってきてる?俺の臓器頑張ってくれた?そういえば頭もあまり痛くないぞ?今までの馴染んでいた体に戻っている感覚がして生きている感覚が嬉しかった。

初めて自分の体の強さに感謝した。勝手だよね。2日前には壊そうとしてたのに。ともあれ出勤した。

一日を終える。家に帰る。とても元気。ここ何年もない位に。

数日同じ日々を過ごす。私は週末にお酒を飲むのが好きなのだが年のせいか、たいして飲んでないのに二日酔いするのだが、あれ以来翌日アルコールが残る事がなくなった。あれ?なんか前よりも体元気じゃない?もしかして内臓も筋トレと一緒で適度な負荷かけた方が強くなるのかな?

専門家じゃないからわからないけど。だけど、なぜか私の体は前よりとんでもなく強くなっている。

そう思っているだけ?いいや、確実に前とは違う。あれ以来全く二日酔いなんてない。飲酒量は前より多い。でも元気。

2週間も過ぎた。

そこで私は思う。もしかして、すでに死んでいるんじゃないかと。

よく言うでしょ?

あいつ死んでる事に気付いてないんじゃないかと。

たぶんそう。自分でも気付いてないんだと思う。

だってあんな事してるのに今までより元気になる訳ないじゃない。

若くないのに全盛期の若い体の感覚があるなんて。

そう。自分の結論は私は死んでいる。

現実では私は日曜の夜中には死んでいる。週末には骨になっているだろう。

それでもいいかな?

自分の中の世界でも会いたい人に会えてるんだもの。

欲を言えばその世界ならば先にいなくなってしまった人達には会って謝りたかった。

ともあれ生きてるのか死んでるのかもう自分ではわからないけど、

生きていると思う事にした。だって生きていれば終わりは来るでしょ?

死んでからは終わりはあるのかはわからないもの。私は何事も終わりがないものって嫌いなのよ。

ただ時限爆弾の終わりは来ないことだけは願っている。


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