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【万物鑑定】で追放から成り上がり!Sランク勇者パーティが崩壊しても、最強仲間とスローライフ中  作者: 黒崎隼人


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第九話「ざまぁの始まり、転落する勇者パーティ」

 アッシュ率いる「暁の翼」が辺境の町で名声を高めている、まさにその頃。

 勇者レオ率いる「光の剣」は、あの日アッシュを追放した場所――『絶望の迷宮』の最下層で、苦戦を強いられていた。

「クソッ!また行き止まりか!どうなってるんだ!」

 レオが悪態をつく。アッシュを追放してからというもの、彼らのダンジョン探索は困難を極めていた。

 以前はアッシュが「こっちの道は安全です」「この壁は隠し通路になっています」と的確にナビゲートしてくれていた。そのおかげで、彼らは最短ルートで、無駄な戦闘を避けて進むことができていたのだ。しかし、その重要性に、彼らは全く気づいていなかった。

「レオ様、ポーションがもう底をつきそうですわ……」

 聖女セラが、顔をしかめながら報告する。アッシュがいた頃は、彼が鑑定で選び抜いた高品質な回復薬を常に潤沢に用意してくれていた。だが、今彼らが持っているのは、市場で適当に買い漁った粗悪品ばかり。回復量は少なく、傷の治りも遅い。

「罠だ!くっ……!」

 先頭を歩いていた賢者カイルが、床から飛び出した槍に足を傷つけられる。

「カイル!大丈夫ですの!?【ヒール】!」

 セラが慌てて回復魔法をかけるが、彼女自身も連戦の疲労で魔力が枯渇しかけており、魔法の光は弱々しい。

「なぜだ……!なぜ、こうも何もかもうまくいかない……!」

 レオは苛立ちを隠せず、拳を壁に叩きつけた。

 その時、レオの腰に下げられた聖剣が一瞬、ドクンと嫌な音を立てて脈打ったように見えた。

 レオ自身も、胸の奥から湧き上がる破壊衝動に、自分でも驚いている様子だった。

「くそっ、なんだこのイライラは……血が、足りないのか……?」

 彼は無意識に聖剣の柄を強く握りしめ、荒い呼吸を繰り返す。

 アッシュがいた時とは、明らかに何かが違う。あの無能な鑑定士がいなくなっただけのはずなのに、パーティ全体の歯車が狂ってしまったかのようだった。

 一番の問題は、目に見えないストレスの蓄積だった。

 どの道が正しいのかわからない不安。いつ罠が作動するかわからない恐怖。回復が間に合わない焦り。

 これらの小さな綻びが、Sランクパーティ「光の剣」を内側から確実に蝕んでいた。

「チッ、一度体勢を立て直すぞ!いったん地上に戻る!」

 レオが苦々しく決断した、その時だった。

 彼らが引き返そうとした通路で、隠されていた落とし穴の罠が作動した。

「きゃあっ!」

 不意を突かれた聖女セラが、悲鳴と共に穴へと落ちていく。

「セラ!」

 レオが慌てて手を伸ばすが、間に合わない。幸い、穴はそれほど深くはなかったが、セラは落ちた際に足をひねり、激痛に顔を歪めていた。

「ぐっ……あ、足が……!」

「セラ!今助ける!」

 すぐに彼女を助け出し、粗悪なポーションと弱々しいヒールで治療を試みるが、セラの足首は見る間に紫色に腫れ上がっていく。もはや、自力で歩くことは不可能だった。

 パーティの雰囲気は、最悪の一言に尽きた。

 レオは忌々しげに舌打ちする。カイルは自分の負傷とセラの失態に苛立ち、セラは痛みと恐怖で涙ぐんでいる。そして、剣聖ソフィアは、そんな仲間たちの姿を、冷めた目で見つめていた。

(……アッシュがいたら)

 ソフィアの脳裏に、追放した鑑定士の顔が浮かぶ。

 彼がいたら、この罠にも気づいただろう。もっと品質のいいポーションで、セラの足もすぐに治ったはずだ。そもそも、こんな無駄な消耗をすること自体がなかった。

「なぜだ……。アッシュがいた時とは、何かが違う……」

 それは、ソフィアだけでなく、レオも、カイルも、そしてセラでさえも、心のどこかで感じ始めていた焦りだった。

 彼らはまだ知らない。これが、輝かしい勇者パーティの、長い転落劇の始まりに過ぎないことを。

 そして、その原因を作ったのが、他の誰でもない自分たち自身であるという事実から、目を逸らし続けていた。

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