エピローグ「新しい日々」
魔王との戦いから、一年が過ぎた。
復権したアナスタシア女王の尽力により、エルロード王国は腐敗した貴族が一掃され、公正な政治が行われるようになっていた。彼女は、アッシュに伯爵の位と王都での要職を用意したが、アッシュはそれを丁重に断った。
彼は、仲間たちと共に、あの始まりの場所であるリンドウの町で暮らしていた。
アッシュの【万物鑑定】の力は、今や領地のさらなる発展のために使われている。新たな作物の開発、鉱脈の発見、災害の予知。彼の治めるリンドウの町は、大陸で最も豊かで、平和な場所に成長していた。
領主の執務室では、今日も賑やかな声が響いている。
「アッシュ様、新しい薬草の鑑定をお願いします!」
「アッシュ!この設計図、どう思う!?次は空飛ぶ船とか作ってみねえか!?」
「アッシュ、少し休憩にしないか?私が紅茶を淹れよう」
ルナ、ミーファ、そしてソフィア。かけがえのない仲間たちに囲まれ、アッシュは幸せなため息をつく。時折、女王の仕事を抜け出して、アナスタシアがお忍びで訪れてくるのも、日常の風景となっていた。
彼の足元では、すっかり大きく、そして威風堂々となったシロが、気持ちよさそうに寝息を立てている。そのもふもふな毛並みは、相変わらず極上の手触りだ。
一方、元勇者レオは、王都から遠く離れた田舎の村で、静かに暮らしていた。彼は毎日畑を耕し、土に触れ、作物を育てることで、力ではなく、地道な努力がもたらす恵みの尊さを学んでいた。その顔には、かつての傲慢さはなく、穏やかな笑みが浮かんでいる。
元聖女セラは、王都の孤児院で子供たちの世話をしていた。回復魔法を、誰かのために、見返りを求めずに使う。その中で、彼女は本当の奉仕の喜びを見出し、子供たちから「聖母様」と呼ばれ慕われていた。
それぞれの場所で、それぞれの幸せを見つけた者たち。
アッシュは、執務室の窓から、活気に満ちた自分の町を見下ろした。仲間たちの楽しそうな笑い声が聞こえる。
これから先も、きっと色々なことがあるだろう。でも、この仲間たちと一緒なら、どんな未来も乗り越えていける。そして、その未来はきっと、輝かしいものになるに違いない。
アッシュは、その目で確かに見える幸せな未来を思い描き、満足げに微笑むのだった。
物語は、こうして穏やかに、そして幸せに続いていく。




