第十六話「魔王軍の脅威、王都の危機」
ソフィアが「暁の翼」に加わってから、数週間が経った。彼女の加入により、パーティの戦力は飛躍的に向上し、アッシュの指揮のもと、彼女は水を得た魚のようにその剣技を存分に発揮していた。
しかし、彼らが辺境で力を蓄えている間にも、世界の情勢は刻一刻と悪化していた。
魔王軍の侵攻は、日増しに激しさを増していたのだ。
各地の街や村が次々と襲撃され、その戦火は、ついに王国の心臓部である王都にまで迫っていた。
「緊急速報!王都へと続く主要街道が、魔王軍の幹部三名によって封鎖された模様!」
リンドウの町にもたらされた凶報に、ギルド内が騒然となる。
街道を封鎖しているのは、これまでに現れた幹部の中でも、特に強力とされる者たちだった。狡猾な策を巡らす魔軍師、圧倒的な防御力を誇る竜将軍、そして、神出鬼没の暗殺者。
王国騎士団は、幾度となく街道の奪還を試みたが、彼らの巧みな連携の前に手も足も出ず、多大な犠牲者を出して敗走を繰り返していた。
頼みの綱である勇者パーティは、ソフィアの脱退とレオの荒んだ生活によって、もはや戦力として全く機能していない。
王都は、完全に孤立した。
食料や物資の供給は断たれ、城下町では民衆の不安が日に日に高まっていく。このままでは、王都が陥落するのも時間の問題だった。
王国中が絶望的な空気に包まれる中、最後の希望として、人々の口にのぼる名前があった。
「辺境の英雄、アッシュ様なら……」
「『暁の翼』なら、あるいは……」
その声は、やがて大きなうねりとなり、ついに病床の国王の耳にまで届く。宰相をはじめとする腐敗貴族たちは、辺境の成り上がり者に助けを求めることを良しとしなかったが、切羽詰まった状況では反対もできない。
王都から、一羽の伝書鳩がリンドウの町へと放たれた。それは、アナスタシア王女を通じて、アッシュと「暁の翼」に宛てられた、正式な救援要請だった。
手紙を読んだアナスタシアは、厳しい表情でアッシュに告げた。
「アッシュ……。ついに、この時が来てしまいました。王都が、民が、あなたを必要としています」
アッシュは、静かに窓の外を見つめた。平和で活気に満ちたリンドウの町の風景。ここを守るために、彼は力を尽くしてきた。だが、この平和も、王都が陥落すればいずれは失われてしまうだろう。
守るべきものは、もはやこの町だけではない。この国全体、いや、そこに生きるすべての人々の未来を守らなければならない。
「行きましょう、アナスタシア様」
アッシュは、決意を固めた瞳で振り返った。
「俺たちの居場所を守るために。そして、あなたの国を取り戻すために」
彼の言葉に、オフィスに集まっていた仲間たちが力強くうなずく。
「おう!あたしの斧が唸るぜ!」
「アッシュ様の行くところなら、どこへでも」
「……今度こそ、私が皆を守る番だ」
「わふっ!」
ルナ、ミーファ、ソフィア、そしてシロ。最強のパーティが、今、一つの目的のために心を一つにする。
「出撃だ、『暁の翼』!」
アッシュの号令が響き渡る。
辺境の英雄が、ついに歴史の表舞台へと躍り出る。王国の存亡をかけた戦いが、今、始まろうとしていた。




