第十話「忘れられた遺跡と古代の遺産」
「暁の翼」の活躍は、リンドウの町とその周辺地域に大きな変化をもたらしていた。彼らが討伐したことで、交易路を脅かしていた魔物が減り、治安は目に見えて向上した。
そんなある日、アッシュは新たな金策と実力試しの場所を探して、これまで誰も足を踏み入れたことのない険しい山岳地帯を調査していた。
馬も通れないような崖道をシロの背に乗って進んでいると、アッシュは巨大な滝の裏側に、不自然な裂け目があるのを発見した。
「【鑑定】」
【名称】偽りの岩壁
【等級】特殊
【情報】
▶高度な幻術魔法によって、ただの岩壁に見せかけられている。
▶内部に広大な空間が存在する可能性:九十九パーセント
【隠された情報】
▶この幻術を解除するには、滝の水を聖水に変える『月光石』をかざす必要がある。『月光石』はこの崖の頂上に存在する。
「やっぱりな」
アッシュはすぐに崖を登り、『月光石』を入手。それを滝にかざすと、轟音と共に流れ落ちていた水が光を放ち、滝の裏にあった岩壁が蜃気楼のように揺らいで消え、巨大な遺跡の入り口が現れた。
「すげぇ!こんなとこに古代の遺跡があったなんてな!」
ミーファが興奮したように声を上げる。
「アッシュ様、中は危険な香りがします」
ルナが警戒を強める。
「ああ、気を引き締めていこう」
遺跡の内部は、数千年もの時を感じさせる荘厳な造りだった。しかし、侵入者を拒むように、通路の奥から重い足音が響いてくる。
姿を現したのは、全身が鋼鉄でできた古代のガーディアンゴーレムだった。
「グオオオオオッ!」
雄叫びと共に、その巨腕が振り下ろされる。
「ミーファ、防御!」
「おうさ!」
ミーファがオリハルコン製の戦斧でそれを受け止めるが、凄まじいパワーに数歩後退させられた。
「硬え!さすが古代のゴーレムだ!」
「ルナ、援護を!」
ルナが矢を放つが、ゴーレムの分厚い装甲に弾かれ、火花を散らすだけだ。
万事休すか。普通のパーティなら、そう判断して撤退するだろう。しかし、アッシュは冷静だった。彼はすでに、ゴーレムのすべてを【万物鑑定】で解析し終えていた。
【名称】アイアン・センチネル
【等級】Aランク相当
【弱点】
▶物理・魔法攻撃に対する極めて高い耐性を持つ。
▶唯一の弱点は、胸部に埋め込まれた青い宝玉の『制御核』。
▶普段は装甲に守られているが、強力な攻撃を放つ直前のエネルギーチャージ時に、コンマ五秒間だけ露出する。
【次の行動予測】
▶五秒後、両目から高熱の破壊光線を放射。チャージモーションに入る。
「ルナ!」
アッシュが叫ぶ。
「五秒後、こいつの胸に青い宝玉が現れる!露出時間はコンマ五秒!そこを『星詠みの長弓』で射抜いてくれ!」
「コンマ五秒……!?でも、アッシュ様が言うなら!」
ルナはゴクリと喉を鳴らし、弓を構えた。彼女の全神経が、弓の先端に集中する。
一、二、三、四……。
アッシュの予測通り、ゴーレムは動きを止め、その両目が赤く輝き始めた。エネルギーチャージだ。そして、胸部の装甲がスライドし、まばゆい光を放つ青い宝玉が姿を現す。
その瞬間を、ルナは見逃さなかった。
「いっけえええええええ!」
放たれた矢は、オリハルコンの芯材が放つ魔力の光を纏い、一筋の流星となって飛んでいく。
そして――。
パリンッ!
甲高い音と共に、矢は寸分の狂いもなく制御核を貫いた。
「グ……ギ……ギ……」
ゴーレムは動きを止め、全身から光が消える。そして、ただの鉄の塊となって、その場に崩れ落ちた。
「やった……!やったわ、アッシュ様!」
「すげぇぜルナ!神業だな!」
仲間たちが歓喜の声を上げる中、アッシュは静かにうなずいた。
遺跡の最深部にたどり着いた彼らは、古代文明が遺した宝物庫を発見する。そこには、失われた強力なマジックアイテムの数々や、眩いばかりの金銀財宝が山のように積まれていた。
この発見は、「暁の翼」の戦力をさらに向上させると同時に、彼らの名声を不動のものとすることになる。
そして、この遺跡から得られた莫大な富は、後にアッシュがリンドウの町を守り、発展させるための、大きな礎となるのだった。




