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亜里野ストーリー  作者: 与志野音色
1章 神界高校・文化祭編

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5話「文化祭準備」

現在登場人物紹介


亜里野 翔馬 祝福「double Step」

本作の主人公、身体能力を極限まで引き上げ高速移動ができる能力を持つ。児童養護施設育ちでそこでお世話になった蒼気先生を慕っている。


与志野 音色 祝福「thousand finger」

亜里野とは児童養護施設からの親友。人差し指に蒼の気を込め超高速で相手を叩き潰す能力を持つ。


田野 祝福「my only girlfriend」

亜里野達のクラスメイトで高校からの友人。田野自身をサポートする少女を顕現させることができる能力を持つ。攻撃は出来ないが自身を運んだり自身を治癒させたりできる。


YOU died 祝福「FPS」

神界高校の平和を脅かす何野四天王の一角。2人の部下を率いて神界高校の頂点に君臨することを目論む。自身の思い描いた武器を無から作り出すことができる。だが戦車や核爆弾など構造の複雑すぎるもの、サイズが大きすぎるものは出すことができない。


サメ 祝福「shark」

何野四天王YOU diedの部下。影の中から地面を泳げるサメを出すことができる能力を持つ。


左・腕 祝福「the One」

何野四天王YOU diedの部下。自らの半径8メートルの範囲に入った者達の左腕を自在に操れる。


エルサ 

亜里野のクラスメイト。フィンランドとのハーフで明るいムードメーカー。


多い死

亜里野のクラスの担任。


蒼気先生

亜里野と与志野が居た児童養護施設の先生。


山愚痴

亜里野のクラスメイト。クラスの中心人物で性格が悪い。


5話「文化祭準備」


時刻は19時。

部活動が終わり、生徒たちの姿が消えた神界高校。

外灯が体育館のガラス窓をぼんやり照らし、薄暗い影を伸ばしていた。


その体育館の中で、三つの影が潜んでいる。


「本当にあの時、殺さなくてよかったんですか?

 あいつら……全然うちらに付く気なかったっすよ。」


サメが影の中から顔を出したサメを撫でながら言う。


YOU diedはつまらなそうに笑った。


「いいんだよ。あいつらの祝福、まだ未完成だ。

 蒼の気の扱いなんて概念レベルでしか理解してない。

 今殺すより、使えるコマに育てた方が得だ。」


言葉の最後に、YOU diedはニヤリと笑った。


「抹殺斗……。コマが揃ったら真っ先にお前を潰してやるよ……ククク」


その不気味な笑い声は暗い体育館に響き渡った。


だがその声を、屋上の手すりにもたれた“男”が冷めた目で聞いていた。


「馬鹿が……YOU died。

 だからお前は蒼の気すらまともに扱えねぇんだよ。」


つぶやくと、男はスタスタと校舎の中へ消えた。



2日後。


神界高校から自転車で15分ほどの総合病院。

入口に翔馬と与志野の2人が立っていた。


「行くぞ、与志野」

「ああ」


2人は受付を済ませ、田野のいる103号室へ向かった。


部屋に入ると、ベッドで起き上がっている田野が、弱々しく笑った。


「よお、亜里野……与志野……来てくれたんだな。」


ほぼ全身に包帯。

見るだけで胸が締め付けられる姿だった。


「ひでぇなこれ……ここまでやるかよ……」


翔馬はお見舞いを差し出しながら、申し訳なさそうにつぶやいた。


「悪かった、田野。

 お前がこんな目に遭ってる時に助けに行けなかった。」


すると田野は、明るく笑う。


「ははっ、気にすんなよ。

 それに、こんな傷……治そうと思えば治るから。」


与志野が目を丸くする。


「治せる? どうやってだよ?」


田野は笑って手をかざした。


「まだ見せてなかったな。俺の祝福――」

田野の背後に青白い光が集まり、一人の少女が現れる。


「my only girlfriend(俺だけの彼女)」


驚愕する2人。


少女が包帯にそっと触れた瞬間――

じんわりと光が広がり、包帯の下の傷がみるみる塞がっていく。


「俺をサポートする“彼女”さ。物を運んだり、守ったり、治したり。

 攻撃はできないけどな。けっこう便利だろ?」


翔馬が聞く。


「便利だけど……なんで入院してすぐ治さなかったんだ?」


「重症すぎると、自分を治せないんだよ。

 意識が飛んでる状態じゃ、発動が安定しなくてね。」


なるほど、と2人が頷いたところで――


「っておい亜里野!!

 お前これ見舞いの品……料理用のラップじゃねぇか!!」


田野がツッコみ、与志野が額を押さえる。


「翔馬……プレゼントのセンス、まだダメなのかよ……」


「悪い……便利かなって……」


「 便利だけどそうじゃないんだよ!!」


病室に、久しぶりに明るい声が響いた。


笑いが一段落すると、田野は表情を引き締めた。


「さて……本題だ。」


翔馬と与志野も、自然と背筋を伸ばす。


「YOU died一派の祝福についてだ。」


2人は息を飲んだ。


「サメの「shark」は案外脆そうだし肉体系のお前らなら何とかなるだろ、問題は左・腕だな。あいつの祝福...詳細は分かんないけど近づくと左腕の自由を奪われる、結構厄介だ。」


与志野が身を乗り出す。


「一番やばいのはYOUdiedだろ。あいつ変な空間から色んな武器出してたぞ」


田野は重たい顔つきで言った。


「YOUdied達もあるが...問題は他の何野四天王に勘付かれて漁夫の利を狙われる可能性だ。」


病室の空気が変わる。


与志野が低く問う。


「前言ってた3人か...確か抹殺斗に否定者F?ってのに無闘って奴ら。」


田野はうなずいた。


「YOUdied一派だけなら1ヶ月猶予があるなら勝ちの目はあるかもだけど...あいつらが出てきたらかなりやばい。」


翔馬は拳を固く握った。


「なら……あいつらに勘付かれないようにこっそり倒すしかねぇな。」


田野は小さく笑う。


「だな、ほぼ不可能だけど。」


「それでもやるしかねえ。」


翔馬の声は震えていなかった。


与志野も静かに立ち上がる。


「文化祭まであと28日。

 死ぬ気で鍛えるぞ。」


病室の窓から、夕暮れの光が差し込む。


その光の中で、三人の決意は静かに、しかし確実に燃え始めていた。



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