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亜里野ストーリー  作者: 与志野音色
1章 神界高校・文化祭編

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4話「襲撃」

翌朝のホームルーム。

教室にはいつもと違う重たい空気が漂っていた。


ガラッ――。


担任の多い死が教壇に立つと、ざわつきが一瞬で静まった。


「えー……皆に連絡がある。

 昨日、田野が……事故で大怪我をした。現在、入院中だ」


「……は?」


教室の空気が固まる。


翔馬は思わず立ち上がった。


「嘘だろ……昨日まで普通にいたじゃん!」


多い死は眉をひそめる。


「詳しい状況はまだ調査中だ。

 命に別状はないが、しばらく登校はできないと思ってくれ」


与志野は拳を握った。


(事故……? そんなわけねぇ……

 あいつ、昨日“話がある”って言ってたのに)


翔馬と与志野は目を合わせる。互いに同じ疑念を抱いていた。


田野は事故なんかじゃない。


――襲われた。


その確信だけが胸の奥で燃えていた。



放課後。


二人はいつもの秘密の特別棟の部屋にいた。

昨日のままの、焦げ跡とひび割れた壁が生々しい。


翔馬は息を吐く。


「時期を見てお見舞いに行こう。

 田野なら……絶対、何か知ってる」


与志野も頷く。


「犯人、ぶっ倒す。そのためにも……鍛えるぞ」


二人は黙々と修行を続けた。

翔馬は跳躍のコントロールを。

与志野は蒼閃の精度を。


だがその集中は――突然、破られた。


コンッ……


軽い靴音。


「いいねぇ……青春してるじゃん」


薄暗い部屋の扉の前に、

黒いロングコートを纏った少年が立っていた。


笑っているが、その目は冷たい氷のようだった。


「誰だお前。」


与志野が身構える。


その横に、サメと左・腕が無言で立っていた。

昨日の血を一滴も纏わぬような、いつも通りの顔で。


「俺か?俺はYOU diedってもんだ。お前らをスカウトしにきた。」


その男は軽く手を上げた。


「昨日、田野を病院送りにしたの……うちの子たちね。

 あの子、君らを守ろうとしたんだよ?偉いよね」


翔馬の瞳が激しく揺れる。


「……お前らかよ……!」


YOU diedは微笑む。


「怒るなよ。

 ガキじゃないんだから話し合いで解決しようぜ?」


次の瞬間。


空気が――鳴った。


YOU diedの手のひらの前に、

ありえない“何もない空間”が盛り上がるように歪んだ。


「なんてね。」


“無”の裂け目から、YOU diedの手に銃火器のようなものが渡った。


「は……?」


翔馬は息を呑んだ。


与志野は即座に指を構えた。


「俺の祝福の能力さ。

俺の思い描いた武器を作れるんだ。」


YOU diedはその銃口を翔馬達に向けた。


「YOU died。」


バババババッッ!!!


弾丸の雨が室内を切り裂く。

瞬間、

与志野がその銃口の正面に躍り出た。


「thousand finger(千の指)!!」


蒼く光る閃光のラッシュがYOU diedの放つライフルの弾丸を全て弾き飛ばした。


「へぇ...いい祝福だね、まあ及第点かな.....ん?」


翔馬がいない。


否。


YOU diedの背後に瞬間移動したかの様なスピードで翔馬が回り込んでいた。


「慣れてきたら技名でも決めようか」


田野の言葉が蘇る。


決めたぜ田野...!技名は...!


「double step。」


ドン!!!

YOU diedの身体が吹っ飛び壁に叩きつけられる。


だがYOU diedは壁と自分の間にクッションのような物を挟みダメージを軽減していた。


「今の一瞬で...!こいつ...強い!」


瞬間。

YOU diedの身体から裂け目ができる。

その裂け目からロケットランチャーが出てきた。


「お前...!正気か!音と衝撃で一般人に....!」

「関係ないね、見られたら殺すだけだ。」


その言葉と共に引き金を引いた。


「うっ!」


翔馬は間一髪でそれをかわしたが、視界の端から迫る手榴弾に気づかなかった。


ドゴォォォン!!


壁が砕け、翔馬の体が床を転がる。


「うぐっ……!」


与志野が叫ぶ。


「翔馬!!」


与志野がYOU diedに方向転換する。


「thousand finger!!!!」


蒼閃の連撃を撃つが、YOU diedは無表情で指を弾いた。


空間が歪み――

与志野の蒼閃は、出現した“透明な盾”に飲まれて消えた。


「いいね君たち、強くなってる。田野に礼を言いな。

 でも、今のままじゃ……俺の遊び相手にもならないよ?」


YOU diedがゆっくりと歩き出す。


サメと左・腕は微動だにせず、その道を開けた。


「言っとくね」


YOU diedは翔馬の目の前にしゃがみ込み、囁く。


「逃げるなよ。

 文化祭――1ヶ月後。

 そこで“使えるかどうか”見極める」


翔馬は歯を食いしばる。


「……ふざけんな……!」


YOU diedは笑って立ち上がった。


「じゃあ頑張って鍛えて。

 期待してるよ、祝福者くん達」


次の瞬間。


全ての兵器が“ふっ”と消えた。


まるで最初から存在しなかったかのように。


YOU died達三人の足音は、夕暮れの廊下にゆっくり消えていく。


破壊された部屋に残された翔馬と与志野は、ただ荒い呼吸だけを残していた。


「……絶対……ぶっ倒す」


翔馬は拳を握った。


「文化祭で……終わらせる」


その瞳には恐怖と怒り、そして燃える決意が宿っていた。


だがその決意が――

彼らの運命をさらに歪めていくことを、

このとき二人はまだ知らなかった。

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