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亜里野ストーリー  作者: 与志野音色
1章 神界高校・文化祭編

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12/20

12話「限界」

拳と拳がぶつかり合った衝撃が消えぬうちに、

YOU diedは後方へ軽やかに跳び、距離を取った。


着地と同時に銃を三つ同時生成。


アサルト。ハンドガン。スナイパーライフル。


「分かってんだろ?

 俺の本気は……“ここから”だよ。」


翔馬の全身に、鳥肌が立つ。


(……今までの撃ち方と……違う……!?

 構えが……軽い……)


YOU diedが薄く笑った。


「“FPS”の本領見せてやるよ、亜里野。」


その瞬間。


YOU diedの身体が、“消えた”。


「ッ!?」


違う。

消えたのでは無い。


すべての“移動”が攻撃と同時に行われている。


跳びながら撃ち、

横移動しながら狙撃し、

転がりながらリロードし、

伏せながら次のポジションへ移動する。

“最強の立ち回り”。


他のプレイヤーから見たとき、

弾がどこから飛んでくるか分からない“絶対死角”の戦い方。


かつて画面の中でしていた動きをYOU diedはリアルで再現していた。


ダダダダダッ!!!


横から連射。


ドンッ!


上空からのグレネード。


バンッ!


背後からの狙撃。


翔馬は避けるだけで精一杯。


(見えねぇ……!

 いや……見えてても体が追いつかねぇ……!!)


YOU diedの声が、四方八方から響いた。


「追えてないなぁ?

 お前のスピードじゃ、“俺のカメラ感度”に勝てねぇよ。」


(くそ……!

 距離を詰めなきゃ……)


翔馬が走り出そうとした瞬間、


YOU diedが“真上”から落ちてきた。


「なッ!?お前いつから——」


「“空”はいつだって死角だ。」


スナイパーライフルの銃口が翔馬の額に押し当てられた。


ヘッド貰うぜ。」


バンッッ!!


銃声。

地面に転がる翔馬の血。


翔馬の額はギリギリ掠めただけだったが、

衝撃で視界が歪んだ。


YOU diedは銃を回しながら冷たく笑う。


「終わりだな。」


スナイパーライフルを翔馬の目の前で構え直す。


「俺の勝ちだ。」


YOU diedの右手が震えた。


「まだだ......!」


翔馬は血を拭い、倒れながらも立ち上がった。


「まだ俺は死んでない....あいつらも....だから....」


「まだ勝負はついてない!」


「.....あっそ。」


銃を再生成し、

銃口が翔馬の心臓へ向く。


「YOU died。」


バンッ!!


弾丸が翔馬に迫る——


その瞬間、

翔馬の身体が限界以上の動きを見せた。


肉眼では捉えきれないスピード。


踏み込んだ地面が砕ける。


double step


身体はもう悲鳴を上げている。

骨が軋み、筋繊維が切れ、肺が酸素を求め悲鳴をあげている。


それでも翔馬は前へ出た。


(まだ……速く……!!もっと!!)


YOU diedの弾が頬を裂き、肩を裂き、指を掠める。


「!?消えっ....!」


翔馬の足が破裂するような音を立てる。


(いけ……!!いけ俺の身体……!!!)


「まだ負けて....ねえ!!!」


YOU diedが舌打ちし、銃口を下げて連射を開始。


しかし翔馬は止まらなかった。


煙を切り裂き、

銃弾を掻い潜り、

血を振り撒きながら——


再びYOU diedの“目の前”にたどり着いた。


YOU diedの瞳が揺れる。


「……ッ!!テメェ!!」


YOU diedが銃を押し当てる瞬間——


翔馬が叫ぶ。


「お前は……!!俺が止める!!!」


YOU diedの表情が、

ほんの一瞬だけ、歪んだ。


その一瞬。


翔馬の拳が

YOU diedの胸へ突き刺さった。


ドゴォォォッ!!!


YOU diedの身体が大きく吹き飛ぶ。


瓦礫の山に叩きつけられ、血が舞った。


YOU diedは咳き込みながら立ち上がる。

口から血が垂れ、肩が震えている。


しかし彼は笑った。


強く、強く、強く。


「……ハハ……面白え......」


YOU diedは銃を構える。


「ッ...!ファイナルラウンドだ!!!」


そして。


二人はついに、

“決着の場所”へ立った。

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