第十五話 パキラ
簡単ではありますが、キャラクターのイメージを画像生成で載せています。
三人はパキラがいるというダイナ山を目指していた。
ライトが先頭を歩く。
「あのおっさん、魔族と友達になるって面白ぇな!」
ノイスは微笑みながら、続く。
「僕は魔族と友達になるって、すごくいいと思うけどな」
ユージは険しい横顔のまま、低く吐き出した。
「あのお偉いさんは魔族による実被害を知らないからそんな事が言えるんだ。レンチ村や森でも魔族のせいで大変な目に遭ったっていうのに……」
ライトが肩越しに振り返る。
「その為に俺ら冒険者がいるんだろ」
ユージの声がわずかに震えた。
「魔族がいなければ、俺の親だって……」
空気が重く沈む。ライトが思い出したように眉を寄せる。
「そうだったな。ユージの両親は魔族に……」
ノイスはそっと相づちを打った。
「そうだよね、ユージがタシュッドさんに苛立つのもわかるよ」
ユージは自嘲気味に首を振る。
「わりい……二人の前で親の話なんかして」
ライトは苦笑し、遠くを見た。
「俺は親の顔すら知らんからな」
ノイスは明るさで陰りを押し返すように、前を向く。
「僕は親に捨てられたから……でも親の事は恨んでないよ!こうやって施設に入ったから二人にも出逢えたし!」
ライトが親指を立てた。
「そうだぜ!俺も二人がいるから、寂しいとか思った事ねえよ!」
ユージは自分の頬をぺちんと叩き、気持ちを切り替える。
「すまん! さっさとパキラ捕まえよう」
三人は山の中へと踏み入った。岩棚の上では猿型の魔族がこちらを見下ろしているが、攻撃の気配はない。
ライトが剣の柄に手をやりつつ、顎を上げる。
「こっちを見てるだけで何もしてこねえぞ!仕掛けるか?」
ユージは制止の手を出した。
「待て!変に仕掛けると面倒だ。警戒しながら進もう」
ノイスは上目で猿型と目が合い、震える。
「なんだか目も合う気がするし、進みにくいよ」
やがて頂上付近。山の上とは思えない広い高原が広がっていた。
ライトが開けた山頂で辺りを見渡す。
「すげえ。山の上がこんな見渡しの良い平地になってんだな」
ノイスは大きく伸びをしてから、草の上に腰を落とした。
「うーーん!気持ちいいね!ねえ? 一休みしない?」
ふと、ライトの視線が遠くの群れで止まる。
「あ! あれがパキラじゃねーか?」
ユージも目を凝らす。
「ほんとだな!群れでいるみたいだ。」
ライトは軽く膝を曲げて姿勢を落とした。
「俺たちに気付いたみてえだぞ」
ユージが短く決断する。
「逃げられるかもしれない。さっさと捕まえるか」
ノイスが慌てて手を振る。
「二人とも、無傷って言ってたから、乱暴しちゃダメだよ!」
ライトは胸を叩いて見せた。
「任せとけって!」
だが、ライトが一歩近づくと、群れは砂煙を上げて散る。
「おい!待てって。乱暴しないからさー」
ユージが声を小さくする。
「大声出したら余計逃げるだろ? 今回の仕事は俺に適正がある。影でとっ捕まえる」
ノイスが慌てて駆け寄る。
「ふうぇー、二人とも待ってよー。少し休もうよ」
ライトは一頭を角に追い込み、にやりと笑った。
「ほーらいい子だ。大人しく、しなっ!」
飛びついた瞬間、パキラはふっと身をひねり、ライトは勢いのまま木に激突する。
「っいちち」
パキラが、にやりと笑った……気がした。
「くっそー!そこのお前!やりやがったな」
ライトはさらに追い立てるが、その個体は他よりも明らかに足が速い。
「お前、足速えな。うし!こいつに決めたぜ!うおぉー!」
勢いのまま、ライトはその一頭を追って高原の向こうへ消えた。
ノイスはその場にぺたりと座り込む。
「ちょ、ちょと……ライトってば、ムキになりすぎだよぉ、僕はもうダメだ。ここまで登ってくるのにもやっとだったのに」
肩を落として小さく呟く。
「魔族を捕まえるなんて僕に難しいよー」
と、そんなノイスの横に、一体のパキラがとことこ寄ってきた。
「ふぇ?どうしたんだい?」
温かい鼻面がノイスの肩にこすりつく。
「……きっと君も疲れちゃったんだね」
パキラは隣でこてんと横になった。
「ふふ、僕と一緒にきてくれるかい?」
ノイスは手を差し伸べた。
一方、ライトは気合と根性だけで同じ一頭を追い続ける。
「うぉおおお!俺に負けないスタミナとは余計気に入った!」
走っていくライトをユージが遠目で見ていた。
「ライトのやつ。俺が《影縫い》で捕まえてやるのに……。この強さの魔族なら手綱がなくても《影操り》で似たような事出来るんじゃないか?」
標的を捉えると、即座に引き金。
「《影縫い》!」
パキラの足元の影が縫い留め、動きが止まる。
「なんだ。楽勝だな」
だが、止まったまま、確かな抵抗の圧が影を軋ませた。
「なんだ?こいつ。抵抗してきやがるな」
影縫いの効果が切れた瞬間、パキラは稲妻のように駆け去る。
ユージは舌打ちしながら、現実的に結論づけた。
「俺の熟練度じゃ、パキラさえも影で捕まえて山降りるまではもたない。ましては《影操り》で動かすなんてもってのほかだ。あーあ、無傷持って帰るのさえなければな。麻痺の矢で痺れさせて運ぶんだけど」
影の中を滑り、群れへ再アプローチする。
「片っ端から影縫いで止めてあまり抵抗しないパキラを連れて帰ろう」
次々に矢を撃ち込むが、抵抗の強い個体はすぐに抜け、逃げる。
「まったく攻撃はしてこないが、その分逃げる事に関しての執念が強いな、これなら街中で手綱を失っても逃げられるだけで危害がない。この魔族が選ばれる訳だ」
そのとき――一頭だけ、影縫いが切れた瞬間にユージへ一直線に向かってくる個体がいた。
「なにっ!例外があるのか!油断した」
――ッドン!と押し倒され……頬をぺろりと舐められる。
「なんだこいつは!なんの攻撃なんだ!」
無傷の条件がある以上、手荒にはできない。ユージは考えながらなんとか抜け出す方法を考えていた。
そこへ、ノイスが一頭のパキラを伴って駆け寄る。
「あはははは! ユージは気に入られたんだよ」
ユージは目を瞬かせた。
「なんだって?」
振り向くとノイスはパキラを連れていた。
「ノイス!もうパキラを捕まえたって言うのか?どんな魔法を……」
「魔法なんかじゃないよ。お友達になったんだ。」
ユージは呆れ顔で息を漏らす。
「……お友達?」
ノイスは押し倒されたユージとパキラを交互に見て、くすっと笑った。
「でも、その子はユージの事を気に入ってるみたいだよ。いや、その子女の子みたいだからユージが好きなのかも」
ユージは半眼になる。
「ノイス、この魔族の性別がわかるのか?」
ノイスは首を傾げ、パキラの顔を覗き込む。
「うーん、なんとなく。その子の顔付きが女の子ぽいなって。だよね?パッキー?」
パッキーが高く短く鳴く。
「くぇ!」
ユージが乾いた笑いを漏らした。
「もう手懐けてるのか」
ノイスは首を振る。
「そんなんじゃないよ?言ったでしょ?友達になったんだって」
――一方、崖際。
ライトは標的のパキラをとうとう追い詰め、肩で息をしながら気炎を上げる。
「はぁはぁ、ようやく追い詰めたぞ、覚悟しろ!」
パキラは地を強く蹴り、弧を描いて大ジャンプする。
「すごいジャンプ力だ!俺も負けらんねぇ!」
弾丸のように上へ――パキラよりさらに高く跳び、空中で抱え込むように捕獲。
「ハッハッハ!俺の勝ちだ!」
暴れるパキラを捕まえ、ライトは豪快に笑った。
「おいこら!暴れるな。負けを認めろ!一緒にくればいつでも勝負してやっからよ」
そのまま担ぎ上げ、二人と合流した。
「おう!二人とも!パキラ捕まえられたようじゃねえか!ん?ノイスは捕まえたというより付いてきてるって感じだな。ユージは逆に捕まえられてる?」
パキラがユージに擦り寄っている。
「お前はすごい捕まえ方だな。そんな担いだままで下山するつもりか」
ライトは即答。
「当たり前よ!」
ユージは紐を取り出す。
「さすがに無理だろ。せめてこの紐で括って連れて歩け」
ライトは自分の手とパキラの前脚を結んだ。
「それでいいのか?首に巻いて手で持った方が楽じゃないか?」とユージが聞く。
「こいつはこれでいいんだ。」と答えるライト。
ノイスはパキラの表情を見て微笑む。
「でもその子も満更でも無さそうだよ!」
方法は三者三様。しかし、無事にパキラを伴い、三人は下山を開始した。
ユージが足場を確認しながら、ゆっくり降りる。
「あとは下りるだけだな」
ノイスはライトがパキラに腕も引っ張られてるのを見て
「ライト抵抗されてて大変じゃない?その子でいいの?」
ライトはまっすぐに答える。
「ああ、どうしてもこいつがいいんだ、俺は。どんなに暴れても持って帰るぜ」
ノイスは肩をすくめ、楽しげに笑った。
「あはは、ライトらしいや」
斜面を下ると、ふたたび猿型の影。
ライトが手を振る。
「猿型が出迎えてくれてるぞ!」
ユージは瞬時に違和感を掴む。
「ちょっとまて。登る時と様子が違くねーか?」
ノイスの背筋に悪寒が走る。
「やな予感が……」
「ウキウキウッキー!!」
突如、猿型の群れが殺到した。
ライトが身構える。
「襲ってきたぞ!」
ユージが歯噛みする。
「登りの時は、攻撃してこなかったのに!」
ノイスが即座に防御の詠唱。
「なんか怒ってるような感じがする!業火の炎よ!僕を守って!――《ファイヤーシールド》!!」
炎の盾が展開するが、猿型は回り込んで石を投げつけてくる。
ユージは叫び、小型クロスボウで応戦。
「くそっ!無傷でパキラを移動させないといけないのに!」
ライトは紐で繋がれたパキラを引き寄せ、怪我しない様に自らが盾になる。
「暴れるな!お前! 俺の後ろに入ってろって!」
飛来する大きめの石。
ノイスが悲鳴を上げた。
「あぶないっ!」
ライトは身体で受け止める。
「いてて」
さらに枝や石礫の雨。それでもライトはパキラを庇い続けた。
ユージが判断を下す。
「大丈夫か?このままじゃまずい。山の麓まで走るぞ!」
三人はパキラと共に山道を駆け抜けていた。
「キリがないよ! どうするの!?」
ノイスが悲鳴を上げる。
「どうするも走り切るしかねぇ!」
ユージが歯を食いしばった。
そのとき、横手の茂みから猿型が飛び出し、ライトへ一直線。
「ライト、危ないっ!」ノイスの声が響く。
――ドンッ!
ライトのパキラが一歩前へ躍り出て、頭突きで猿型を弾き飛ばした。
「お前……やるじゃねぇか!」ライトの口元がニッと上がる。
「なら俺もいくぜ! 《光の剣》!!」
光刃が閃き、撃退された猿型を一閃で切り裂いた。
ライトとパキラは息を合わせ、突っ込んできた猿型を撃退する。ユージは眉をひそめた。
「パキラは大人しいはずなんだけど、ライトのだけなんか違うな」
それでも群れは追ってくる。
「まだ追ってくるぞ!」とユージ。
次の瞬間、パキラたちが三人の前に立ち、背を向け、身を沈める。
ライトが目を丸くする。
「なんだ?」
ノイスが嬉しそうに頷いた。
「パキラが僕たちを乗せて行ってくれるんだ!」
ユージは驚愕を隠せない。
「手綱もないのに、どうして……」
パキラ達は三人を乗せて山道を駆け下りる。
ライトが風を切って叫ぶ。
「ひゅー!はえーぞ!」
ユージは信じられないものを見る目で前を見据えた。
「魔族が俺達人間を助けてくれてる?そんな事が……」
谷風が頬を抜けた頃、三人はどうにか山を脱した。
ノイスは胸に手を当てて息を整える。
「はぁー! どうにかなったね」
ユージは肩で息をし、短く答えた。
「……ギリギリだけどな」
ライトはパキラの首筋を軽く撫でる。
「お前、ありがとな!」
撫でられるのが嫌だったのか、パキラはつんと顔をそむけた。
その油断を裂くように――「ウギィーッ」
三体の巨大な猿型が飛び出してきた。
「こ、こいつらは!さっきの奴らのボスか?」
ユージが反応するが、走るパキラの上で小型クロスボウも照準が定まらない。
ライトが歯を食いしばる。
「や、やべぇ!避けられねぇ」
――ズバンッ!
轟音とともに、長身の女が巨大なアックスを振り抜き、巨大な猿型を一刀両断にした。
残る二体が距離を取る。別方向から鋭い声。
「《退魔手裏剣•爆》!」
巨大な手裏剣が猿型に突き刺さり、直後に爆ぜる。
残った一体は山へ逃げようと背を向けた。
「……逃さない。《サンダースパロー》」
雷をまとった小鳥の魔法が弧を描き、回避方向へ進路変更。猿型は進路を変えるが、雷鳥はその進路を確実に追っていく。
――バチバッチッ! 黒煙を上げ、猿型は倒れた。
「ふふ、逃げられないの……」
唐突な乱入に三人は呆気に取られる。
ライトが眉を吊り上げた。
「な、なんだ!?お前らは?」
大斧を持つ少女が親指で自分を指す。
「うす!あたしはグレンダ!こいつはアヤでこいつがアリスだ!バシッと自己紹介したぜ?」
変わった黒い衣装の少女が睨む。
「勝手に名乗らないでよねっ!グレンダ」
無口な魔法使いの少女は視線だけ向ける。
「……」
ノイスがぺこりと頭を下げる。
「いやー助かったよ。ありがとね」
少女――アリスが冷ややかに呟く。
「……馴れ馴れしい」
ユージが距離を測りながら問う。
「お前らは何しに来たんだ?」
アヤがぷいと顔を背ける。
「ふん!別に何でもいいでしょ!話しかけてこないでっ!」
ユージは眉をひそめる。
「はぁ?何怒ってんだ?」
アヤは腰に手を当て、吐き捨てる。
「怒ってないでしょ?もう!最近大型猿の魔族が山から降りてくるから討伐してって依頼を受けてきたのよ!」
ライトはぱっと表情を明るくした。
「おお!お前らも冒険者か!よろしくな!俺はライト!あとユージとノイスだ!」
グレンダが豪快に笑う。
「ズドンと紹介ありがとな!だが、あの猿型相手に苦戦するようじゃ冒険者は辞めた方がいいぞ?」
ノイスがあたふたと両手を振る。
「あ、あれは不意をつかれたというかパキラもいたし……」
アヤが鼻で笑う。
「ふ、なるほどね。言い訳だけは得意の冒険者のようね」
面倒くさくなり、ユージは話を切り上げる。
「はいはい。忠告ありがとな。俺らはもう行くから」
アリスが陰のある目でぽつり。
「……弱くて死んだ……冒険者を沢山みてきた……忠告は聞いといた方が……いい」
ライトは一歩前へ出て言い返す。
「さっきから言わせておけば偉そうに。俺らよりも強いっていうのか?」
グレンダは即答で胸を張る。
「おう!それはバシッと間違えねーな」
ライトの口元が吊り上がる。
「やんのか?デカ女」
グレンダのこめかみに青筋が走る。
「デカ女だと? カチーンと頭に来たぜ」
火花が散りかけたところで、アヤが面倒くさそうに割って入る。
「弱い冒険者なんてどうでもいいじゃない?まったく。依頼は終わったの!もう行くわよ」
ユージはライトを引き剥がす。
「俺らもさっさとおっさんとこにいくぞ」
ノイスは手を振って締めた。
「お互い冒険者としてがんばろうね!またね!」
アリスは微動だにせず、冷たく一言。
「……馴れ馴れしい」
三人はパキラとともにアグロークへ戻り、タシュッドの研究所へ向かう。
道すがら、ライトがぶすっと言う。
「なんかムカつく奴らだったな」
ユージは素直に評価を口にした。
「ああ。だが、戦闘能力は認めざるを得ないな」
ノイスは目を輝かせて振り返る。
「あの子、魔法を生き物みたいな形にして動かしてたよ!どうやってるんだろ?面白いねぇ」
ユージはふとライトの相棒を見て眉を寄せた。
「おい!ライト。お前のパキラ頭のとこ傷がねーか?」
ライトが手で確かめる。
「ほんとだ!頭突きした時についたのか?中々ヤンチャな奴だぜ」
ユージは思い出させるように指を立てる。
「そうじゃねーよ。タシュッドのおっさんが無傷で連れてこいって言ってただろ?」
ライトは目をむいて頭をかく。
「……あ!忘れてた」
ノイスは半泣きで叫んだ。
「うわあーん。どうしよう!」
慌てふためきながらも、研究所の扉を叩く。
タシュッドが三人とパキラたちを迎え、目ざとく傷に気づいた。
「パキラ達を連れてこられたようだね。その子……頭に」
ライトは素直に頭を下げる。
「すいません。無傷でって言われたのに出来なかった」
タシュッドの目が細くなる。
「約束しましたよね?無傷で連れてくると」
ライトは顔を上げ、真っ直ぐ告げた。
「でも、俺はこいつがいいんだ!」
タシュッドは穏やかに問い直す。
「そうですか。何故そのパキラがいいのですか?」
ライトは少し考え、言葉を選ばずに言った。
「わかんねえけど、こいつとなら上手くやれる。そんな気がするんだ」
タシュッドは破顔した。
「ははは。悪くない答えです。何よりそのパキラが君に懐いている。私はそう感じる。その子だけじゃない残りの子も懐いている。無傷だとかはどうでもいいのですよ」
ノイスが目を丸くする。
「それじゃ……」
タシュッドは頷き、引き出しから革製の品を取り出した。
「君達には手綱をプレゼントしよう」
ライトが両手を上げる。
「やったぞ!!!」
タシュッドは真剣な目で三人を見る。
「パキラ達は君達といる事を願った。魔族であっても心で通じ合えば信頼関係も築ける。それに気付いて欲しかった。今の君達なら問題無いでしょう」
ユージは短く息を吐いて、わずかに微笑む。
「魔族との信頼関係……か。まあ悪い魔族だけじゃないって事だな」
タシュッドはうなずき、手綱と首輪のセットを差し出す。
「今はそれでいい。これが手綱と首輪だ」
ノイスが素直に驚く。
「ありがとうございます!」
タシュッドは少し声を落とした。
「最近は魔族をよく思わない連中が何やら企んでいるとも聞く。気をつけるのだよ。そして、パキラ達をよろしく頼みます」
三人はそれぞれに頷く。
「おう!」
「うす」
「はい!」
こうして――三人はパキラにまたがり、新たな街道へと蹄を鳴らした。




