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手記シリーズ

劇場

作者: 鴨鷹カトラ
掲載日:2025/10/06

此処へ来るまでの道のりを、私は思いだせるのだろうか。

最後の一葉は、どんなに期待をかけられようとも無情に落ちた。


朝の風景。田園に佇むのは案山子だった。

この情景も、10年後には忘れているのだろうか。


夜の風景。蟋蟀が音を奏でる。

何処にいるのだろうか。その姿は夜に溶け込んでいる。


あなたは、何処にいるのだろうか。


あそこの鳥居にあなたはもたれかかっていたような気がする。

あなたはあそこの案山子を見つめていたような気がする。

そしてその後あのコップで水、いや紅茶か。飲み物を飲んでいた気がする。


不安定な記憶は私に不安を与える。


人生は、長い長い映画のテープの様なものだ。

巻かれたテープが上映されるように、時は進んでいく。


そのテープが、偶々他のテープに重なっただけの話。


商店街ですれ違った人は今まで何人いるだろうか。思い出せ無い。

重なった時間がほんの僅かだったから。


これまで私が夢中になった人は何人いるだろうか。一人だ。

重なった時間が長いという事、ほぼくっついていたという事。


それが無くなった時、自分の中にぽっかり穴が開いたような気がするのだ。


地球に同情を感じるのは私だけだろうか。

月は、地球の一部だったという。


何万年、何億年、いや何十億年と、お互いの姿は見えてはいるものの、手を伸ばすことさえできない。


月は・・・そういえば、あなたは私のことを覚えているのだろうか。


判らない。判るはずもない。

だって、私はあなたではないのだから。


日常を送る。

テープを再生する。


無数のテープと、重なる。


でも、あなたのようなテープに私はあなた以外に出会った事が無い。

それは、これからもずっと、そうなのかもしれない。


そうであってほしい。

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