対罪霊監視局2
今回は少し短めです! ごめんなさい!
「それで具体的には何すりゃいいんですか?」
村雨のことをジトリと恨みがましく睨みつけるが、目の前の眼鏡には全く効果がない。
それどころかボクの首根っこをヒョイと掴む始末だ。
「わわっ 何するんですか?!」
「それを今から説明しようとした時に貴方が水を差したことをお忘れで?」
「へっ?! ご、ごめんなさい……?」
「よろしい。」
行きますよ、と言い村雨はボクを持ち上げたまま部屋の中に戻った。
「扱いが雑です! あのね村雨さんは知らないかもだけど ボクはそこらの小物とは全っ然違うの! もっと丁重に」
「静かにしてなさい。」
言い合いながらボクと村雨が部屋に戻ると先程いたはずの金髪の青年は既に居なくなっていた。
居たのは相変わらずボクを睨みつける黒髪の青年とやっぱりぽけーっとしている少年の2人のみである。
「おや北川君は帰りましたか? 」
「はい。つい先程。」
どうやら居なくなった金髪は北川という名前らしい。
(あれ? でもボク達扉の近くにずっと居たはずだよね。)
ボク達は扉のすぐ近くでずっと話をしていた。
いくら自動ドアの作動音が小さいと言えど通れば流石に気づくはずである。
北川くんはどうやって帰ったのだろうか。
(まぁボクが知らないだけで他に出口があるのかもしれないけど。)
考えても分からないことに時間を割いても仕方ないと早々に踏ん切りをつけたボクは、目の前の村雨と金髪くんの話に耳を傾けた。
「それで村雨さん。ソイツが例の悪魔ですよね。ぶっちゃけ頼りないというか弱そうなんですけど。」
(うーっわ。失礼な奴……。)
村雨といい、この子といいどうして人間は見た目で判断する奴が多いのだ。
そもそも割に合わない仕事を引き受けて上げてるんだから感謝して欲しいものである。
「少し阿呆なだけです。弱い訳ではないので気にしないで下さい。」
「ですが……。いえ、なんでもありません。村雨さんの判断に従います。そういえば……。」
そう言って話し始めた二人。
詳しいことは分からないが、どうやら村雨が留守の間に何か問題が起きていたらしい。
会話が上層部がナンタラカンタラと小難しくなってきたところでボクは首を掴んでいる村雨の手をベシベシと叩き降ろしてもらう。
(つまんないなぁ。)
契約した以上、ある程度付き合ってあげるつもりではあるけど面倒な人間関係に巻き込まれるのは御免である。
(あ、あんな所にケーキ屋さんある……。)
部屋の窓から外を見ると道路を挟んで反対側に小さなケーキ屋を発見した。
表に出ている看板のキラキラと輝くフルーツの乗ったタルトのイラストが正直とても気になる。
(村雨さんに頼んでみよっかなぁ。)
買ってくるれるかは五分五分であるが、思いっきり駄々を捏ねてみようと決意する。
「では神野くん。お願いしますね。」
「…………うん。」
そんなことを考えていると後ろが静かになった。
どうやら話し合いは終わったらしい。
(あの子話せるんだ。)
いつの間にか少年の方も席を立って村雨と黒髪くんの会話に混ざっていた。
ボクは会話が終わったであろう村雨の方へ向かう。
「お前何している。」
「へ? 」
すると黒髪くんがボクと村雨の間に入り、仁王立ちで行く手を阻んできた。
「え…あの話し合いが終わったなら村雨さんについて行こうかなぁ、なんて。」
「話を聞いていなかったのか? お前はこれから神野と一緒に行動するんだ。」
「神野さんとは誰ですか……? 」
「お前……村雨さんの言う通り残念な奴なんだな。いいから後ろを見ろ。」
カチンときたが相手は子供。心を速やかに落ち着かせ後ろを向く。
ボクの後ろにはあの少年が突っ立っていた。
「うわっ! え…えぇっとキミが神野……さん? 」
少年はボクの言葉にこくりと頷くと扉に向かって歩き出してしまった。
「えっ ちょっと待って! どーすんの村雨さん?! 」
「とりあえず貴方は暫くの間神野君と行動して下さい。」
「は? 絶対む…」
「これは決定事項です。」
「もう! キミ!ちょっと待ってよ! 」
ボクは仕方なく少年こと神野君を追いかける。
幸い村雨さんと違ってボク達の間にリーチの格差は無かったので直ぐに追いつくことができた。
「捕まえたっ! 」
「…………。」
スタスタ歩く神野君に追いついたボクは彼の手をギュッと掴む。
「あの何処に行くかは分からないけど…取り敢えず一緒に歩きません?」
神野君はその場にピタリと止まり此方に振り返る。
彼は再びぼぉーっとボクの顔を見た後、今度はボクの手を見つめた。
(どういう反応なの……?)
よく分からないが取り敢えず聞く気になってくれたみたいだ。
「えっと。出来ればなんですけど……。ここの案内と説明もお願いしてもいいですか? 」
えへへ、と愛想笑いをしてみたボクに神野君はこくりと頷いた。
(い、いい子だ……。)
神野君は先程より少し速度を落として歩き始める。
どうやら施設を案内してくれる気らしい。
ほっとして手を離そうとしたボクだが、神野君の表情を見てビクリと固まる。
(……これもボクの仕事な訳? )
ボクは少年の袖をパッと離し、少年の手をギュッと握る。
「…………。」
「取り敢えずどこから行きますか? 」
「……。」
少年は無言でエレベーターを指さす。
どうやらアレで他の階へ移動するようだ。
かくして少年とボクはこの閉鎖的な広い施設の中を仲良く手を繋いで探索し始めたのだった。
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