表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

神野君の憂鬱 6

お久しぶりです!先週は投稿できず、申し訳ありませんでした。




「…おぉ。」

そして四体に囲まれ動けずにいる悪霊に口を近づけると、そのままバクりと飲み込んでしまう。

人形は悪霊を口の中に閉じ込めると、そのまま口を動かし始めた。

メキッベキッ…ぐちゃぐちゃ... とあまり良いとは言えない咀嚼音がホールに鳴り響く。


(なんか悲鳴まで聞こえるんだけど。)


先程のドロドロが腕を生やし何とか脱出しようと手を伸ばしているのだが、その伸ばした腕も巨大な口によって食い千切られる。

その度に口の中から微かに悲鳴のようなものが聞こえるのがなんとも言えない気持ちにさせた。

ボクは改めて人間の作る物って怖いな、と密かに思うのだった。


「うわぁ、あの神野さん最後のヤツって何がモチーフの人形ですか? なんかめちゃめちゃに食べてましたけど。」


「……。」


ボクはしゃがみながら作業をしている神野君の隣に座り込んだ。

神野君は人形達を一体一体撫でて労わりバックの中へ戻している。

(どういう仕組みで小さくなるんだろう... )

人形に興味はある。

しかし悪魔であるボクが触れたらあの大きな口が牙を剥いてくる気がして、伸ばしかけていた手をそっと引っこめた。


「……ばく。」


犬型の人形を撫でながら神野君は小さく呟いた。

どうやらボクの質問に答えてくれたらしい


「ばく? あー、獏ですか! 確か夢を食べるっていうアレですよね。」


「……そう。」


「へぇ…。ボクは獏を見た事はないですけど実際こんな感じなんですかねぇ。」


ボクはそう言いながら神野君の腕に収まってる獏型の人形を見る。

先程まであんなにも大きかった人形は既に元の大きさに戻っており、ぴくりとも動かなくなっていた。


「とりあえず仕事終わりましたねぇ。あっ! 神野さん帰りどっか寄って行きません? 例えばタルトとか食べに! 」


人形をバックの中に詰め終わった神野君に、たった今思いついた名案を提案する。


「そうですねぇ…できれば果物がたくさん乗っかってるやつがいいなぁ、あ! でもでも生チョコタルトなんてのも捨て難いし、プリン系も美味しいですよね! 神野さんはどう思いますか? 」


ボクはルンルンと歩きながら食べたいものを次々と口に出していく。


(神野君は子供だけど公務員だし稼ぎもあるはず! )

完全に奢って貰うつもりのボクは、後ろから神野君の足音がしないことに少し遅れてから気づいた。


「……。」


神野君はボクの後ろでバックをギュッと握り締めながらボクの事を見ている。

一向に歩き出す気配がない彼にボクは首を傾げた。


「あれ。…神野さんもしかしてタルトお嫌いでした? 」


「……ちがう。」


「そうですか? ならいったい」


「…まだちゃんとお話してないから。」


神野君の言う「話」とは先程はぐらかした村雨さんと契約した理由のことだろうか。


(ほんと、執拗いな。)

そもそも神野君はどうして執拗にボクから話を聞きたがるのだろう。


「そんなに気になるなら村雨さんに直接聞けばいいじゃないですか。」


ボクがそう聞くと、神野君がゆるりと首を振った。


「…村雨さんは、そういうことはなしてくれない。……だから、聞きたい。どうして人間、が嫌いなのに、村雨さんと…けいやくしたの? 」


神野君はいつもより口を動かしてボクに尋ね続ける。


「ボクには教えられませんよ。」


「……なんで。」


「そりゃあ、ボクの主は村雨さんですから。

神野さんに情報を教えないってのがあの人の判断ならそれをボクが漏らしてどうするんです。」


「……。」


ボクの言葉を聞いた神野君は唇を噛み、俯いた。

神野君は「そっか」と小さく呟き、また黙りこんでしまう。


(うーん。どうしよう……。)

落ち込ませるのは本意ではないのだが、ボクも答えたくない。

しかしこのままでは、話が何もすすまない。

タルトへ辿り着けないのは困るのだ。


(そもそも神野君はどうしてそんなにボクと村雨さんの事を聞きたがるんだろう。)

確かに答えないボクもボクだが、神野君もなかなか押しが強いのは何故なのだろう。


(もしかして神野さんにも何か叶えたいことがあるのか?)

普通に考えれば契約のことを聞くのはその行為に興味があるからではないのだろうか。

例えば神野君は自分も悪魔と契約したい、とか。


「もしかして悪魔と契約したいんですか? 」


「……。」


ボクの言葉を聞いた神野君の身体が少しだけ揺れた。

(当たりみたいだね。)

神野君は俯いたまま顔を上げなかったが、その手はフルフルと震えていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ