神野君の憂鬱 4
とにかく短いです。すみません!!
「どうしました? 」
「……。」
「神野さん? 」
「……。」
神野君は少し戸惑った後、口を開いた。
「……なんで、あんなこと言ったの。」
神野君はこちらをジッと見つめている。
(な、なんか言葉間違えちゃダメそうな雰囲気だな。)
ボクは言葉を慎重に選びながら説明した。
「…えぇと、学校のことですよね? いや違いますよ? 全然からかってるとか嘘ついてるとかじゃなくて、何か学校で悩みがあるなら解決する為にボクは本当に神野さんと一緒に学校に通おうと、」
「…ボクのことが、すきなの? 」
多少早口になってしまったが、言いたいことは大体言えたと思う。
しかし、だ。
その頑張りを無にする程の威力を持つ言葉が神野君の口からたった今発射された気がする。
「…………へ? 」
ボクは理解が追い付かずピシリと固まった。
しかし神野君は止まらない。
「……すきなの? 」
ボクは思わず神野君の顔を凝視した。
しかし当の本人は大変真面目な面持ちでこちらを見ている。
(…神野君ってナルシストだったっけ。)
神野君の言葉の真意が分からなかったボクは素直に聞いてみることにした。
「…違いますけど。なんでそう思ったんです? 」
「……だって、僕を助けるのは僕のこと、好きだからだ、って。」
不思議そうに答えた神野君は巫山戯ているようには見えない。
「はぁ。」
ボクには理解出来ないが、どうやら神野君的には優しくすることと好きという感情はイコールの関係にあるらしい。
( ていうか、話し方的に誰かにそう言われたのかな。)
恐らく神野君に好意を持っていた誰かが彼に優しく接して、「優しくするのはキミが好きだから」なんてことを言ったのだろう。
でなければ、僕のこと好きなの~? なんて阿呆なことを真顔で聞いたりはしない。
(…まぁ可笑しくないこと、なのか? …うーん、わからんなぁ。)
ボクは悪魔なので人間的なモノの考え方なんてわからないし、わからないものは仕方がない。
仕方がないので、後で村雨さんにでも聞くとしよう。
気持ちを切り替え、ボクは1歩神野君に近づいた。
人間的な考え方がわからないボクでも、教えられることはある。
つまり、ボクが神野君のことが好きという誤った認識を正すのだ。
「いいですか? 悪魔は、あー少なくともボクは好きだからって理由だけじゃ動きません。」
ボクは神野君に向かってはっきりと宣言した。
「…どうして? 」
「そりゃあ、そもそも人間のこと好きじゃないですし。それこそ契約でもしない限り人間なんかに興味もありませんよ。」
ボクがそう言うと、神野君は更に不思議そうな顔になる。
「……人間に興味がないなら、どうして村雨さんとけいやくしてるの? 」
「げっ…い、いやそのぉ。」
痛いところを突く子である。
ボクは昨日の出来事を思い出した。
脳裏に浮かぶのは、トイレットペーパーを配ろうと必死なボクの姿と、村雨を悪魔祓いだと勘違いしてペコペコしているボクの姿。
(…言えないな。)
あの時の姿を思い出しスンっと表情が落ちる。
(……絶対に言えない。)
ボクは帰ったら村雨にキツく口止めすることを心に決めた。
そして、ボクが今やらなければならないことはただ1つ。それは神野君からの追求を逃れることである。
ボクはなんて言い訳しようか必死に考えた。
しかし焦りが邪魔をして良い言葉がなかなか思いつかない。
(うわぁ、神野君めっちゃこっち見てるよ。いや、でもボクにも高貴な悪魔としてのプライドってもんが……ん? )
ボクが言い淀んでいると、急に真後ろの机がガタガタと揺れ始めた。
揺れは収まる気配はなく、だんだん強くなっていく。
恐らく、霊が近くに来ているのだろう。
「あっ! ほら! 仕事の時間みたいですよ! 」
(なぁいすタイミング!! )
机はガタンっと派手に倒れ、壁に掛けてあった絵画も大きな音を立てて床に落ちた。
随分とお怒りらしい屋敷の住人は、もう直ぐそこに来ている。ら
「どうやら話はここまでみたいですね! さぁ神野さん! 張り切って行きましょう! 」
「……。」
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