8クリストフあたふたとする
「ソルが襲われた?ソルはどこなんだ?」
クリストフは王女の部屋でソルが襲われたと聞いて乱心する。
「王女様、失礼してもよろしいでしょうか?」
「クリストフ。男のあなたが行ってソルがどう思うか考えなさい。ここはキャサリンに任せた方がいいです。さあ、キャサリン様子を見に行って来てちょうだい」
「はい、すぐに行ってまいります。アンナ様あまりご心配なさらずに…」
「ええ、でも襲った犯人を必ず聞き出して、ソルはメイドだからもしかしたら庇うように脅されているかもしれないから、いいわね」
「はい、わかりました」
それから待つこと1時間ほど…
クリストフにとって長い長ーい時間が過ぎて行った。
王女はソファーに座って優雅に読書をしながら知らせを待っている。
クリストフはそのそばに立って庭の花を眺めてみたり、空に浮かぶ雲を目で追ってみたり、時にはテーブルの上の手彫りの箱の木目を数えてみたりしながら知らせを待った。
侍女長のキャサリンが部屋に戻って来た時は、クリストフが先に声を発してしまった。
「キャサリン。ソルは無事なのか?」
キャサリンは首を折り曲げた。それを見てクリストフは身体中から力が抜けそうになった。
そして何とか身体を立て直し王女の後ろに控えた。
「アンナ様お待たせいたしました。ソルから話を聞いてまいりました。襲われたと聞きましたがほんのかすり傷程度で何もなかったようです」
「そう、良かった。それで?」
クリストフの耳はどんな声も聞き逃すまいと…
「はい、なかなか話して下さらなくて…でもやっと…襲ったのはブロス殿下だそうです」
「まぁ…お兄様が…わかりました。兄の事は前から嫌な噂を聞いていたの。お父様とお母様に報告します。お兄様にはそれなりの措置を受けてもらいましょう。それでソルは?」
「はい、他の者に付き添わせて部屋に戻らせました。もうすっかり落ち着いているようでしたし大丈夫かと思います。後で様子を見に行ってこようかと思います。ご安心ください」
「良かったわ。ソルには何か甘いお菓子でも持って言ってあげて。もし辛いようなら明日はお休みしてもいいと」
「はい、そのように伝えます」
「ええ、お願いね」
王女は安心したのかそこで話は終わった。
気が収まらないのはクリストフだった。
(ソルを辱めておいて、勝手に王宮を追い出して、また勝手に欲の解消相手にしようとしたのか?クッソ!もう、許せん!)
クリストフの様子がおかしいと思ったのだろうか。
王女が突然クリストフに話をする。
「クリストフ。あなたソルが好きなんでしょう?でもお兄様に手を出しちゃダメよ。それは私に任せなさい。そんな事より今日はもう帰っていいわよ。ソルの様子を見てやってね」
クリストフは衝撃を受ける。
(15歳の女の子から言われる事か?王女あなたほんとに15歳なんですか?)と突っ込みたくなった。
そしてソルにどうやって声を掛ければいいか悩みまくる。