10妊娠?事件発生!
それから数日後。王宮でまだ騒動が起きる。
それはブロスの相手をした女性が妊娠したというものだった。
噂が噂を呼んでその女性が誰か突き止めなければと王宮内の内務担当者が騎士団に依頼をして来た。
ブロス殿下が相手にした女性すべてを連れてきてほしいとの事だった。
王宮内で働く侍女やメイド。それに貴族の未亡人から男爵クラスの令嬢と次々に上がる名前に騎士団は騒然となる。
「おい、殿下ってそんなに手当たり次第に女を?」
「いいよなぁ。権力があって顔も良くって、ちょっと声を掛けりゃ女は凝ろっと騙されて、クッㇰッㇰッ!」
クリストフはもやもやした気持ちのままぐしゃりと奥歯を噛んだ。
「そう言えばソルもだよな。そう言えばあいつも最近調子悪そうだよな?もしかして妊娠したって言うのはソルの事じゃないのか?」
耳から入る適当なあざけり。ソルをけなす言葉にクリストフの我慢はぶり切れる。
「ドタッ!」座っていた椅子から立ち上げりつかつか歩いてそいつの目の前に立つ。
「おい、いい加減な事を言うのはやめろ!ソルが何をしたって言うんだ?あんなに一生懸命仕事してるのにお前はそんな風にしか見れないのか」
髭ずらの大きな男が男の胸ぐらをぐいぐい掴んで文句を言う。
周りは大変だと騒ぎ立てすぐにひとだかりが出来た。
「クリストフ。いいから落ち着け。何もそこまでしなくてもいいじゃないか。なぁ、ほら、その手を離せ」
そう言って仲裁に入ったのは騎士団の副隊長のティムだった。
「ああ、こいつがちゃんと反省したってわかったらな」
「うぐぅぅぅぅ。く、苦しい…わ、わるか、った…ゆるし…」
「さあ、もういいだろう。さあ、放せクリストフ!」
クリストフはやっと男の胸ぐらをつかんでいた手を離す。
「おい、ノーマン大丈夫か?お前も適当なことを言って人を貶めるようなことを言うな」
ノーマンはその場に跪いてぜぇぜぇ息をした。
(クッソ!クリストフの奴。みんなにとんでもない醜態をみんなに見せてしまっただろうが)
ノーマンはクリストフを下から睨みつけていた。
男はノーマンと言う騎士でクリストフと同じように伯爵家の2男だった。
***
その夜だった。クリストフが部屋に戻ろうと階段を駆け上がった時だった。
いきなり後ろから呼び止められる。
「クリストフ待てよ」
「うん?誰だ?」
ちょうど階段をもう少し上がりきる時クリストフは振り返った。
いきなり、ぐわんと身体がかしいだ。
「な、なにを…」
クリストフはバランスを崩し階段の一番下まで落ちた。
あちこち身体を打ち付け最後に壁に背中を強く打ち付けた。
「だれだ?こんなこと…」そこでクリストフの意識はなくなった。
次にクリストフが気づいたときはもう自室のベッドの中だった。
あちこちを包帯で巻かれていて背中がズキズキ痛んだ。真上に寝るのが無理なのか横向きに寝かされたいた。
そこに副隊長のティムが入って来た。
「副隊長‥俺は何を…」
「いいから休め。幸い骨に異常はないらしい。だた背中をひどく打ち付けたんだろう。しばらく痛むだろう。お前は階段から突き落とされた。犯人はノーマンの仕業だった。見たものがいてすぐに犯人はわかった」
「あいつ!」
「ノーマンの事はこちらに任せてくれ。いきさつもわかっているし厳しい処分があるだろう。今はとにかく休め」
「はい、わかりました」
「そうだ。何か飲むか?」
ティムが思いついたように聞いた。俺は喉は乾いていると思った。
だから「ええ、喉は乾きました」と答えた。
「そうか。おい、何か飲み物を…」
そう言われて誰かが入って来た。




