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6. お願い助けて女神様!


「し、新米女神、イーナの登場です! 以後お見知りおきを!」



「「……え?」」


光の柱の中から現れたのは、左足ををあげ、ピースを作った右手を高く突き上げるという、謎のポーズを決めている矮小な少女だった。



「あれぇ、私何か間違えてます……?」

「えと、そのポーズにはどんな意味が?」

「それは……、ほら! 昔からヒーローの登場にはカッコいい決めポーズっていうのが相場じゃないですか」

「いや、ヒーローじゃないし……、仮にそうでもクソダサいし」

「そ、そんなぁ……、え、エレナさんはどう思います?」


イーナはエレナの目をじっと見つめた。

エレナは突然自分に振られた事が驚いたのか、目を泳がせている。


「え、えと、凄い独特で奇抜な感性をされてますね」

「そ、そうですよね! 良かったぁ……、やっぱりエレナさんは分かってくれますよね」


いや、エレナの引きつった顔見ろよ。 

絶対、褒めてはないって。


「一週間考えた甲斐があります」


……色々言いたい事はあるけど、なんか可哀想だし、、、まぁいっか。

知らぬが仏ならぬ、知らぬが女神ってところだろう。


「そ、それで、スグル、この方は?」

「あぁ、一応、俺を異世界転移させた女神らしい……」

「は、はい! 一応、女神やらせて貰ってます!」


一応で良いのか?


「そうでしたか! では女神様、今私達の目の前にいる()()をどうにかしてはくれませんか?」


そう言ってエレナが指さす先には、見向きもされずに放置された事に怒り心頭であろうエザフォネスが、鼻息を荒くして此方を睨み付けていた。

そうだ、イーナの独特なポーズのせいで、本来の目的をすっかり忘れていた。


「イーナ、何とかなるんだよな」

「ま、任せてください!」


イーナは言下に答えると、女神らしく、空中を飛んでエザフォネスに接近していく。

……大丈夫だよな?


イーナは、エザフォネスの乱ブレスを最小限の動きでヒラリと躱し、エザフォネスの身体の下に潜り込んだ。


「岩竜エザフォネス。貴女に恨みはありませんが、今は少し大人しくして下さい!」


イーナは一人でに呟くと、エザフォネスの身体をも超える、超巨大な魔法陣を展開した。そして、


「アクアネロー!!」


と言う掛け声と共に、魔法陣から莫大な量の高出力かつ、圧縮された水が放たれる。当然、回避する隙などあるはずがないエザフォネスは直撃をモロに食らい、そのまま洞窟の天井にに叩き付けられた。


天井からミシっと嫌な音がする。


「岩竜の苦手な水属性魔法です。いくら、エザフォネスとはいえ暫くは動けないでしょう」


イーナの言葉通り、痙攣はしているもののエザフォネスは完全に沈黙し、放たれた大量の水が雨のように辺り一帯に降り注いだ。



——凄い、ここまで5000字以上は格闘してきたエザフォネスとの戦いがこうもあっさり終わるなんて!



「流石、俺を異世界に飛ばした女神様だ!」

「な、何かさっきと比べて随分態度が変わったような

……」

「いやいや、そんな事無いって。頼りにしてたぜ、イーナ!」


なんて俺が適当におだてると、最初は怪訝な顔を見せていたイーナの表情も次第に明るくなっていき、


「そうでしょ、そうでしょう! これが女神の力なのです!」


なんて口にして、腰に手を当て見事なドヤ顔を浮かべた。チョロいな、コイツ。



「あの、賑わってるところ申し訳ないのですが、イーナ様、少し宜しいでしょうか?」

「ん、何ですか? ——あぁッ! ひどい怪我です! 待ってください、すぐに回復魔法かけますから」

「あぁ、そういえば……、ありがとうございます。って、そうではなくてですね、一つイーナ様にお聞きしたい事がありまして」

「ん、何ですか? あ、あと、私の事は遠慮なく、イーナと呼んでください。女神だからといって、恐縮されるのは好きじゃないので」

「——分かりましたイーナ」


イーナはニコッと笑った。


「それでエレナ、聞きたい事ってなんだよ?」


俺がエレナに質問を促すと、彼女は「それはですね……」という枕詞をつけてから話し始めた。


「近年の調査によるとエザフォネスは滅多な事がないと襲っては来ない大人しいドラゴンだとされていた筈です。では何故、私達は襲われたのでしょう?」


そう言えばエザフォネスに追いかけられていた時、エレナがそんな事言ってたな。

確かに、言われてみれば妙だ。


……とは、ならないんだよな。


俺には思い切りその心当たりがある。


「あのぉ、凄い言うのがはばかれるんだけど、実は俺、エザフォネスに寄りかかって休憩しちゃってたんだよ……。多分、それで怒ったんじゃないかなって——」

「それはあり得ません」


エレナは俺が言い終わるよりも早く、それを否定した。


「報告書によりますと、調査チームがいくらエザフォネスに魔法を打ち込んでも、打撃を入れても反応が無かったそうです」


いくら調査とはいえ、イカれてるだろソイツら……

しかし、皮肉にもこの調査のせいか、おかげか、俺の示唆した可能性はなくなった。これは本気と書いてマジと読むくらい、本気で妙だ。


「それでイーナ、どうなんだ?」

「……結論から言うと分からないです。模索すれば、いくつかの可能性は見つかるかもですが、現時点では分かりかねます」

「女神っていうのは、この世界の事が何でも分かるもんじゃないのか?」

「それなんですが、女神にも役割がありまして、私のような異世界へ人間を送る専門の女神であったり、世界の監視専門の女神だったり、色々いまして、専門外の私はその辺には疎いんです」

「そうですか……」

「力になれなくてすみません」

「いえいえ、ありがとうございます、イーナ」


エレナは優しく微笑んだ。


——とまれかくまれ、エザフォネスについて気になる事はあれど、俺達は生き残った。今はそれだけで十分だ。

謎については後日また考えれば良い。


「よし、まぁ取り敢えずは終わった事だし、ニベルに行くか。イーナ、転移魔法的な奴で俺たちを……ん? 何だそれ?」


先程まではただの青い宝石が埋め込まれていただけの、イーナの首元のペンダントが強い光を放っては消えてを繰り返している。


「実は、私がこの世界に居れるのには時間制限があってですね、このペンダントの光はそれを知らせるものなのです」


何その、ウ◯トラマン方式。


「でしたら早く行きましょう」

「……」


エレナの呼びかけに何故か答えず、下を向くイーナ。


「ん、どうした? 早く連れてってくれよ」

「……ごめんなさいッ!」


あれ、このパターンはもしや……


「調子乗って魔力使い過ぎて転移魔法使える程、魔力残ってませんでした!!」


「えええええぇぇッ!!」


「あ、あと、与える予定だった魔力と能力全部キャンセルして代わりに私を召喚したのでチートは無しになりました!!」


「えええええぇぇええぇぇえぇえッッ!!!!」


「で、でも、『どんな手を使ってでもいい』って言いましたよね?」

「ッ……まぁ、そうか。自分の言った事には責任持たないとだもんな。——エザフォネスは何とかなったし、これ以上望むのは欲張りすぎか」


なんてつらつらと綺麗事を語っているが、流石にテンションが下がるな。そんな俺を察してだろう、エレナはハキハキとした声で俺に声をかけた。

「スグル、力なんて努力して身に付ければいいんです! それにエザフォネスがいない今、二ベルに帰るのなんて、さっきまでの苦労と比べたら余裕です!」

「それにエレナさんも完全回復してますし、何も心配する事なんてないです!」

「そ、そうだよな! ニベルに帰るなんて楽勝か!」


人間という生き物は愚かで一度やった過ちを何度も繰り返すのである(今回は人1、エルフ1、女神1)。


"ゴゴゴゴゴ……"

という音と共に、頭上からパラパラと降ってくる小石。見上げると、天井にいくつか存在していた亀裂が全体に広がっていた。

——まさかイーナがエザフォネスが天井に叩きつけた時のアレのせいでは。



「……ど、どうやら、ちょっと派手に魔法を使い過ぎたみたいです」

「スグル、女神のイーナは大丈夫だとしても私達はこのままだとペシャンコです」

「一難去ってまた一興ってか、ハハハハ!!」

「スグル、気を確かに……」

「あ、えと、私は時間切れなんで、後は頑張ってください! それじゃあッ!!」

「あっ、イーナお前ッ!」



"……何でいつもこうなるんだよおおおお!!!"


 ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

 本作は作者の見切り発車で書き進めている為、話の方針を変えたり、途中細かい修正をする事があると思いますがよろしくお願いします。

 また、ブックマークや下の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から評価をして頂けますと作者が大変喜びますのでよろしくお願いします。

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