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異世界転生・転移の文芸・SF・その他関係

治療魔術師、貴族を治せと強制連行・誘拐されたので、そんな事する貴族や家来などの上級国民を皆殺しにします

作者: よぎそーと

「終わりました」

 そう言って振り返る。

 周りの者達は返事どころではない。

 床にのたうち回って悲鳴をあげている。

 声すら上げられず、苦悶の表情を浮かべるだけの者もいる。

 それを見て、治療を行っていた治療魔術師は腹を立てる。

(ふざけやがって)

 その憤りを極力表に出さないように気をつける。

 おかげで表情が消えている。



 治療魔術師はとある貴族に拉致・誘拐されていた。

 と言えば大げさになるかもしれない。

 だが、治療魔術師からすればそうとしか言えない。

 何せ、いきなり貴族の舘に強制連行されたのだから。



「治療師はいるか!」

 そう言って探索者協会に貴族の家来がやってきて。

「お前がそうか」

 そう言うと強引につれていこうとした。

 いったい何があったのかの説明すらない。

「何があったんです?」

 尋ねた治療魔術師に悪意はない。

 事情を確かめたかっただけだ。



 だが、なぜかその言葉に家来は激怒。

 顔に憤りを浮かべ、

「つべこべ言うな!」

 怒鳴りやがってくれた。

 その態度に治療魔術師は激怒した。



 だが、怒りをその場で発揮するほどバカではない。

 表面上は「失礼」とだけ言って家来についていく。

 腹の中では、「絶対に殺す」と決意しながら。



 そうしてやってきた貴族の舘。

 貴族の家族が病に伏せってるという。

 その治療をしろというのが強制連行の理由だ。

 なぜその程度の事を説明すらしないのか分からなかった。



(さすがだな)

 治療魔術師は呆れた。

(上級国民はこっちでも似たようなもんか)

 前世の日本を思い出す。

 上級国民のワガママっぷりは異世界であっても同じだと痛感する。

 体の大きな子供だと。



 そんな前世を思い出しながら、治療魔術師は倒れてる貴族の部屋に入る。

「失礼のないようにな」

 家来が余計な事をいう。

「平民育ちの俺が貴族の礼儀なんぞ知るわけないだろ」

 しっかりと言い返す。

 家来がにらみつけてくる。



「なんだ、知らない事を強制すんのか?」

「貴様!」

「倒れた奴を治しに来た奴にその口か。

 なるほど、礼儀ってのはそういうもんなんだな」

「おのれ!」

 家来、頭に血が上って拳を握りしめる。

 周りにいる者は誰も止めようとしない。



(やっぱりこういう奴等なんだな)

 そういった周囲の人間を見て、治療魔術師は悟った。

 非があるのはどちらなのか明らか。

 なのに家来を止めない。

 そんな連中に礼を尽くす必要は無い。



 もっとも、貴族とその関係者からすれば違うのだろう。

 貴族が頭を下げる必要は無い。

 礼を尽くす必要は無い。

 平民が貴族にかしずくのは当然。

 それをしない治療魔術師が悪い。

 そんな考えなのだろうと察した。



 事実がどうであるかはどうでも良い。

 ただ、我が身にふりかかる事実だけが全て。

 だから治療魔術師は相応の態度をとる事にした。

 とりあえず、拳を振り上げた家来に向けて。



 魔術を己に使って身体能力を強化する。

 防御力を高め、体を鋼もかくやという硬さにする。

 そこに全力で拳を叩き込む家来。

 結果は明らか。



「ぎゃあああああ!」

 派手な悲鳴を上げて、家来は膝を突く。

 思い切り叩き込んだ拳が骨ごと砕けたのだから当然だろう。

 それを見て周りの者達が騒ぎ出す。



「きゃあ!」と悲鳴をあげるメイド。

「何をする!」と咎める声をあげる使用人。

 それを見て治療魔術師は決意を更に固める。

(こいつら、駄目だ)と。



 拳を振り上げた家来への非難もなく。

 身を守った治療魔術師に怒りをぶつける。

 そんな奴等には、相応の対応をするのが良い。

(皆殺しだな)



 まずは家来。

 潰れた拳に治療魔術を使っていく。

 砕けた骨がそのまま固まる。

 手が二度と使えないようになる。



 それだけではない。

 体中の細胞に働きかける。

 悪性の腫瘍を生み出していく。

 いわゆる癌だ。



 この癌を体中に発生させる。

 当然、助かる事はない。

 しかも即死は出来ない。 

 かなりの苦痛を伴うという癌患者の最後。

 それを家来は死ぬまで味わっていく。

 なお、余命一年。

 その間、家来は地獄をさまようだろう。



 家来だけではない。

 周りのメイド・使用人にも治療魔術を使っていく。

 こいつらも家来を止めずに悪行を認めた者達だ。

 なおかつ、反撃した治療魔術師を咎めた。

 人が人に向ける敬意が全くない。



 また、家来という意味では同類である。

 治療魔術師を誘拐してきた家来も。

 周りに居るメイド・使用人も。

 ならば、一連託生。

 連座で処分してしまえば良い。



 関係がないとか、何もしてないなどという戯言はどうでも良い。

 分類するのが面倒なだけだ。

 嫌なら問題をおこした輩を見つけて処分すれば良い。

 それは貴族側がやる事で、治療魔術師がする必用は無い。



 そもそも、関係が無いなどとはどの口がほざくのか?

 家来の横暴を見逃し、治療魔術師の反撃を咎める。

 立派な共犯者である。

 全員まとめて処分するのが適切な措置である。



 周りにいた者達の視力を奪っていく。

 治療魔術の応用だ。

 視力回復の逆を行えば良い。



 体の自由も奪っていく。

 身体能力強化の応用だ。

 能力低下系の魔術と同じような効果をもたらす事が出来る。



 そうして危害を加えるような行動が出来なくして。

 本格的に処分を開始していく。



 やる事は同じだ。

 家来とおなじく体中に癌細胞を発生させていく。

 それも末期癌と同程度のものを。

 これで簡単に死ぬ事も出来ず、それでいて苦痛に悶える事になる。



 もっとも、女の方は別の使い道がある。

 癌にはせずに、体の自由を奪うに留める。

 あとで処分する為にだ。



 なにせ貴族の舘に仕えるほどだ。

 生まれ・育ちも良質な者が多い。

 貴族の子女が上位の貴族の使用人になる事は珍しくもない。

 連れてこられた貴族もそれなりに高い地位である。

 ならば、使用人も貴族なのだろう

 そうでなくても、相応の家柄の者である可能性は高い。



 当然、見た目もそれなりに良い。

 ならば利用価値もそれなりにある。



 そうしてから舘の中にいる者達を巡っていく。

 あちこちにいる使用人達に治療魔術を使っていく。

 全て身体能力の低下や病気になるようにしながら。

 全員連座である。



 当然、舘の主人である貴族とその家族も例外ではない。

 こいつらのせいで治療魔術師は無理矢理連れてこられたのだ。

 いや、誘拐されてきたのだ。

 その罪を償ってもらわねばならない。

 命を用いて。



 貴族の家族は全員体を腐敗させていった。

 体中の免疫を停止させた状態で。



 空気中にだって雑菌は存在する。

 体の中にもいる。

 これらが繁殖しないよう、体は防衛機能を働かせている。

 免疫と呼ばれるこれらの全てを停止させる。

 あとは自動的に雑菌が貴族の体を蝕んでくれる。



 その上で、貴族の体の中で雑菌を繁殖させる。

 そのうち効果が出るだろう、などと悠長な事は考えない。

 まずは確実に体に影響を出していく。

 その為に、雑菌の活動を活溌にしていく。

 体の内外から貴族の体が腐り落ちていく事になる。



 貴族の体のあちこちに欠損が発生する。

 そうなったところで治療魔術師は止めた。

 即死させたらもったいない。

 残りわずかな人生を地獄を見ながら過ごしてもらいたい。

 やられた分を少しでもやりかえすために。



「ふざけんなよ」

 這いつくばる貴族に侮蔑の目を向ける。

 無理矢理つれてきた罪。

 その原因はこの貴族にある。

 こいつが治療師をつれてこいとか言ったのだろう。

 それがなければ、治療魔術師は今ごろのほほんといつも通りの毎日を過ごしていた。



 それがそうならなかったのは、貴族のせいである。

 家族の病気をどうにか治そうとしたからだ。

 問題は全て貴族にある。

 その報いを、貴族は受けていた。



 最後に原因となってる倒れた貴族の家族のところへと向かう。

 とどめを刺さねばならない。



 そいつが寝てるという部屋へと向かう。

 中にはベッドに横たわったご令嬢がいた。

 そいつの何が悪いのかをまずは調べる。

 魔術を発動させていく。



 令嬢が倒れた理由はすぐに分かった。

 生まれながらの体調不良。

 生まれつき体の調子が悪いのだ。

 体力がないといえば良いだろうか。

 病気が原因ではなく、生来の体質だ。



 哀れといえば哀れだろう。

 誰が悪いのでも、何が悪いのでもない。

 ただ、そう生まれついたというだけでまともに生活が出来ない。



 また、病気という見立ては間違っている。

 それが理由で治療魔術師は誘拐されてきたわけだが。

 病気なのも確かだが、それが原因で令嬢は倒れてるわけではない。

 体調がもともと悪いから病気にかかりやすいのだ。

 その結果、ギリギリで保っていたかろうじて健康な状態。

 それがちょっとした病気で損なわれて寝込んでしまった。

 それだけである。



 そんな原因になった令嬢。

 治療魔術師はその令嬢にも処罰を与えていく。

 こいつのせいで誘拐されてきたのだ。

 強制連行されてきたのだ。

 許せるわけがない。



 なので、停滞している体の調子。

 これを一気に上昇させていく。

 ご令嬢の体は健康な人間を上回るほどに活溌なものになっていく。



 細胞が、血液が、臓器が、脳が、神経が。

 体のいたるところが一気に働いていく。

 人間の限界を超えて。



「があああああああああ!」

 令嬢の口から悲鳴があがる。

 野太いそれは、深窓のご令嬢らしからぬものがある。

 だが、そんな事気にしてる余裕など令嬢にはなかった。



 度を超えた健康さ、体の活性化。

 それは令嬢の体の限界を突破していく。

 分かりやすくいえば、極度の筋肉痛となるだろうか。



 筋肉痛は体の限界を超えたから発生するもの。

 肉体が悲鳴を上げてるのだ。

 これのより激しいものが令嬢を襲っている。

 なにせ、問題があるのは筋肉だけではない。

 体の全て、骨も臓器もあらゆるものが無理矢理動いてる。

 苦痛は筋肉に留まらない。



 そもそも、人間の体は、全力が出ないようになってるという。

 筋肉の力は骨を破壊するほど大きい。

 だから普段は、全力が出ないように制限がかかってるという。

 今、令嬢はこの制限がない。

 それどころか、治療魔術師によって体の機能を無理矢理上昇させられている。

 骨がきしむどころではなかった。



 苦痛によって体をよじる。

 それで骨が砕ける有様だ。

 内臓がよじれて千切れる有様だ。

 無理な動きで筋肉が千切れてしまう有様だ。



 悶絶で体を揺らしながら、令嬢の体は千切れ飛んでいく。

 内側から破裂するように。

 魔術で治療を施しながら、魔術師はその様子を眺めていた。



 そう、治療なのだ。

 別に治療魔術師は破壊の魔術を使ってるわけではない。

 ただ治療魔術を使ってるだけだ。

 途轍もなく応用をきかせて。

 その結果、攻撃にすら使えるようになってるだけである。



 そもそも、治療魔術という名前で誤解されている。

 治療魔術師が使ってるのは治療魔術ではない。

 生命に直接働きかけるものだ。

 いうなれば、生命魔術というべきものになる。



 これは体の不調などを治すものではない。

 副次的に、追加効果でそういう事も出来るというだけだ。

 本来は生命そのものに働きかける魔術・超能力になる。



 なので、生命力を活性化させて身体能力を向上させたり。

 頭脳を強化して智慧を働かせたり。

 五感を強化して周囲の状況を瞬時に察知したり。

 こういった事が出来るのが治療魔術師の本領である。



 これらを更に応用する事で、死体を操ったり。

 人を一気に死に追いやったりも出来る。

 生命そのものに働きかけるから出来る事だ。



 更に病原菌などの働きにも影響を及ぼせる。

 これらを死滅させる事で、病原菌が原因の病気を治したり。

 逆に盛大に繁殖させて病気を一気に進行させる事も出来る。



 この能力は持って生まれたものだった。

 なぜそうなったのかは治療魔術師にも分からない。

 ただ、前世の日本からこの異世界にやってくる時にくぐり抜けた様々なエネルギーの海。

 あの世と呼ばれるところなのだろう、そんな場所を通ってきた。

 その時に、大きなエネルギーを取り込んだのか、影響を受けたのか。

 それが生命魔術を使える理由なのではないかと思ってる。



 まあ、どうして出来るのかというのは今はどうでも良い。

 この能力のおかげで治療魔術師は食い扶持を得る事が出来ている。

 それがありがたい。



 産まれてきたのはさして発展してない世界。

 文明水準は産業革命の前。

 日本なら江戸時代。

 ヨーロッパなら中世と呼ばれるくらいだろう。

 そんな世界なので、食い扶持は少ない。



 たいていは家業を継ぐのが普通。

 職業選択の自由なんか無い。

 そもそも、選択できるほど職業がない。



 そんな世界で治療魔術が使える。

 これは大きな力になった。

 親の家業をつがなくても食っていける。

 そうなる可能性は高い。

 経済的な自由を手に入れやすい。

 すさまじいまでの強みだ。



 それを利用して、治療魔術師は日銭を稼いでいた。

 医療はそれほど発達してない。

 魔術もあるが、魔術師は少ない。

 そんな世界で治療魔術が使える人間はどこでも求められていた。



 治療魔術である事も役立った。

 ゲームなどで見られる攻撃魔術は平和な時代にはほぼ役に立たない。

 だが、怪我人・病人はいつどこにでもいる。

 これらを治していく事で日銭を手に入れることは簡単だった。



 だが、それも善し悪しである。

 有力者などが権力や財力を使って無理難題をふっかける事もある。

 これがスラム・貧民街なら暴力になる。

 どっちも横暴である事に変わりはない。



 そんな上級国民な皆様に、治療魔術師は相応の対応をしてきた。

 礼には礼を。

 横暴には横暴を。

 善には善で報いて。

 悪には悪を報いる。

 当然の処遇だ。



 今回もそういった対応の一つである。

 何も初めてというわけではない。



 そして、初めてでもないのに、どこも似たような態度をとってくる。

 横柄で横暴でワガママだ。

 ガキがそのまま大人になったかのように。

 いや、ガキというのは間違ってるだろう。



 ガキ、子供であってもわきまえてる者はいる。

 これは持って生まれた性質といえる。

 まともな者は産まれたときからマトモであり。

 クズは体が成長してもクズなまま。

 ただそれだけの事だ。



 小人というべきなのかもしれない。

 コドモと読むのではない。

 心や器のちいさな人という意味だ。

 駄目人間という方が意味が近いかもしれない。



 そんな小人・駄目人間ほど他人を蔑ろにする。

 蔑ろにする人間になど真っ当な対応をする必要もない。

 生きてるだけで邪魔になるのだから。



 今回の貴族もそうだった。

 あるいは貴族そのものはマトモだったのかもしれない。

 家来が狂ってるだけで。

 しかし、それを確かめる事はもう出来ない。

 全員始末したのだから。



 また、たとえ貴族がまともであってもだ。

 それで罪が消えるわけではない。

 クズで駄目な家来を放置していた。

 さっさと処分すればよいもの。

 そうしなければならないものを。

 生かしてる時点で同罪である。

 いや、より罪は重い。



 それだけの力があるのに、悪人を生かしてる。

 極悪非道の極みだ。

 放置してるせいで、どれだけの人間が苦しい思いをしてるのか。

 それが分かってない。

 そんな奴に生きてる価値はない。



 そういった者達をこれまで処分してきた。

 今回はそれが貴族になっただけである。

「ふざけやがって」

 憤りが止まらない。



「けど……」

 おかしなものだ。

 なぜこの情報が共有されないのか?

 馬鹿な事をすれば相応の報いがあると。



 普通、こういった問題は噂話などで共有される。

 井戸端会議といってもよい。

 普段、喧嘩をしながらも、自分たちの所属する地位・階級・社会が脅かされるのだ。

 こういった時の上級国民の連帯感は想像以上のものがある。

 さながら巣の存続にせいをだすアリのごとき。



 しかし、なぜか治療魔術師についてはそうはならない。

 悪評がまわる事がない。

 悪口言われるのは腹が立つし、そんな連中は生かしておきたくないが。

 それでも情報がしっかり回らないのも困る。

「あいつに手を出したら痛い目にあう」と。



 そう言ってくれるから、馬鹿な連中が少しは減る。

 なのに、それすらされない。

 だから馬鹿な事をする奴らが後を絶たない。

 今回の貴族や家来がその一例だ。



 おかげで治療魔術師は、こういった問題が起こる度に面倒な事をしなければならない。

 上級国民という有力者が馬鹿な事をしなければ、手間をかける必要もないのに。

 たまにやってきて問題を起こすから、処分をしなければならない。

「本当に面倒くさい」

 辟易としながら治療魔術師はぼやく。



 そんな治療魔術師の前で、問題の原因となったご令嬢が死んでいく。

 それを見て、「終わりました」と周りの者達に告げる。

 体を腐敗させた、癌細胞を増殖させた貴族と家族どもに。

 それらも伏せってる令嬢の所につれてきたのだが。

 終了宣言をしても誰も返事をしない。

 苦痛でそれどころではないようだ。



「ふざけてるな、本当に」

 治療魔術師の怒りは更に高まる。

 無理矢理つれてきて、強制連行の拉致をしておいてこれである。

 痛いのも辛いのも分かるが、だから何だというのだ。

 声をかけたのだから返事くらいしろ────それが治療魔術師の考えだ。



 図々しい態度に治療魔術師の怒りは増大していく。

 返事もろくに出来ない状態なのは分かるが、それは身から出た錆。

 忖度をしてやる理由にはならない。

「下のつく奴も、上にいる奴も全員クズばっかだな」

 呆れてそう評する。



 そんな連中だから処分するのだ。

 生かしておいたら、またどこかで何かしらの問題をおこす。

 ならば、そうならないように処分をしていくしかない。

 既に起こってしまった事はどうにもならないにしてもだ。

 これからまた問題が起こるのを防ぐために。

 死ねば二度と問題をおこさないのだから。



 殺す必要がないなどという戯言はどうでもよい。

 殺さねばまた問題をおこす。

 その可能性を残すわけにはいかない。



 なお、殺す必用は無いなどというものも処分していく。

 問題の発生源を残そうと画策してるからだ。

 そんな危険物、残しておけない。

 共犯者という問題への加担者なのだから。



 かくて伏せっていたご令嬢は肉体が爆発四散して。

 家族も体が腐敗したり癌細胞におかされていって。

 貴族の舘にいる者達は例外なく死滅していった。

 まだ生きてる者もいるが、それらが治る見込みはない。

 神の奇跡と言えるほどの治療魔術を施されればともかく。

 そんな事が出来る者はどこにもいない。



 まだ生きてるというのは、まだ死んでないだけだ。

 既に死ぬのは確定している。

 死ぬまで苦しむだけ、即死できなかった事が不幸といえるかもしれない。



「さてと」

 死滅させた連中はともかく。

 生かしてとらえた者どもは舘から連れ出していく。

 いずれも見目の良い女ばかり。

 売り飛ばせばそれなりの稼ぎになる。

「治療代金になってくれよ」

 とらえた連中にそう行っていく。



 荷馬車の荷台にのせられた売却商品どもは、悲鳴すらあげる事も出来ずにうなだれる。

 身体能力低下魔術で身動きがとれないのだ。

 これらが体の自由を取り戻すのは、売却処理が終わってから。

 その頃には隷属魔術などで別の自由は奪われてる。

 逃げだすことも出来ず、それなりの扱いをされていく事になる。



「ざまみろ」

 人にはらうべき相応の敬意すらもたない。

 他者を尊重することがない。

 そんな連中の尊厳など考慮する必要がない。



 利用価値は、売却代金を治療魔術師への治療費とするくらい。

 この場合は、不当な扱いをうけた治療魔術師への慰謝料・お詫び代金というべきか。



 そもそも、報酬の事も何も言わずに強制連行するような連中だ。

 もちろん代金など支払わない。

 これまでの上級国民という有力者共は全員そうだった。

 今回もそうなるだろうと思っていたので、治療魔術師は自力で費用をまかなう事にした。

 これまたいらぬ面倒の一つである。



「なんでこいつらは無料で人を動かそうとすんのかな」

 なんにせよ、対価は必要となる。

 そういう考えが有力者たる上級国民にはない。

 だから横柄な態度をとるのだろうが。



 なにせ、

「我らを助けることができたのだ。

 名誉だろ?」

などと本気で思ってる。

 何が名誉なのかさっぱり分からない。

「金にこだわるなど卑しいものだ」

などともほざく。



 そういう輩からは遠慮なく取り立てる。

 まずは命を。

 ついでに金を。

 ただ働きをさせようというのがおかしいのだから。

「無料で働かせようなんて乞食は死ね」

 タダ(無料)より高いものはないという事を徹底して教えてやらねばならない。



 こうして治療魔術師は今回の無法・無体に報復をしていった。

 貴族は家来も含めて潰滅。

 売れそうな女は今後は社会の底辺で生きていく事になる。



 更に、メイドや使用人の家族。

 これらもたいていは貴族だ。

 あるいは、貴族に仕える事が出来るだけの地位にいる者達だ。

 いずれ報復してくるのは目に見えている。

 なので、騒ぎが起こる前に処分をしていく。



「本当に面倒くさい」

 こんな後処理までしなくちゃならないから、上級国民は相手にしたくない。

 いっそ、全部殺してしまおうかとすら思う。

 それも手間だから今までは控えていたが。



「こんな事が続くなら殺した方がいいな」

 最近は考えが変わりつつある。

 この世から上級国民を駆除すれば、二度と同じような面倒な発生しなくなる。

「やるか」

 自分のこれからの為に決意を固める。



 そうして治療魔術師は問題の発生源を駆逐していく。

 スラム・貧民街のヤクザ・マフィア・暴力団。

 有力な商人や職人。

 庄屋などの豪農。

 宗教を牛耳る教会。

 政治を司ってる貴族。

 手の伸ばせる範囲にいるこれらを根絶やしにしていく。



 そんな事を5年、10年と続けていき。

 国内のクズの大半を潰した。

 そこを狙って攻めこんでくる近隣国の有力者・上級国民も。

 おかげで国内外のあちこちを巡る事になった。



 旅費は潰したクズの所から巻きあげる事でまかなった。

 だが、それでもあちこち旅するのは面倒だった。

 旅が楽しいという性分ではない。

 過ごしやすい所に定住してのんびりしたいというのが治療魔術師の性格だ。

 それがあちこち巡る事になってるのだ。

 原因になってる上級国民への怒り・憤り・恨み・辛みは常に拡大大量生産されていった。



 それらが粗方終わり。

 定住が出来るようになる頃には、中年に突入し、老境も目に入ってきた。

「本当に時間を無駄にさせられた!」

 しなくて良い悪党討伐の旅。

 させられた恨みは決して消える事はない。



 ただ、そんな治療魔術師の終の棲家となる地。

 そこでは穏やかに過ごす事が出来た。

 気立ての良い近隣住民に囲まれ。

 そういった者達に治療を施し。

 そのお礼としてお裾分けをもらい。



 特に何かがあるわけでもない。

 ただただ平穏な日々。

 治療魔術師が求めた日常がそこにあった。



 スリルや騒ぎを求めるのは荒れた気性の持ち主だ。

 そんなのとは縁の無い治療魔術師は、ただただ変わりばえ無い穏やかな日々を楽しんだ。



「幸せだねえ」

 そんな事を呟きながらひなたぼっこを楽しむ。

 腰を落ち着けた土地での日常は、かつてのすさんだ毎日とはほど遠い状況にある。

 そこで治療魔術師は、良き隣人に恵まれ。

 嫁に子供に孫に。

 家族にも恵まれて生きている。



 そんな治療魔術師は、余生を平和に過ごして人生を終えた。

 その最後を飾る言葉はこれがふさわしいだろう。



 めでたし、めでたし。

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