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第九話 安全度と危険度の問題

 食事を終えたあたしは、指定された所に食器を片付ける。味付けは簡素なのに、素材の旨味が引き出されていて夢中で食べていた。


 母さんの料理も美味しかったな。


 いけない、また泣く。


 あたしは歯を磨き休む事にする。


{歯を磨くのじゃな。厨房(キッチン)の流し台に、歯を磨く道具があったはずじゃ}


 クサじいが得意そうに言う。おじじ達って、うっさいけどあたしが感謝したり喜ぶと、デレるんだよね。


 キモいけど、かわいい。でも、かわいいって褒めると怒りんだよ。


 わけわかんないよね。


 シャコ······

 シャコ······

 シャコ······


 歯ブラシ、あたしの世界のものじゃん。ううん、違うね。もっと柔らかで、歯の隙間に勝手に入ってく。


[ふむ、ハルミ竹やホミの実、アマクサなど、安い素材を一度混ぜて錬金し直したようだな]


 ヘンじいが中途半端に解説してくれた。見た目は似てるけど、素材が独特なんだね。


 もういいよ。外は危ないけど、ゲームやアニメの世界が現実になったような世界なんでしょ。 


 この中だって、小さな本の中なんだよ。他に住んでる人がどういう暮らしをしているか見てみないとわからないよ。


 テレビだと、秘境に住んでる人もいて、パソコンは使うのに、火は自分で薪を使って起こすとかやってた。


(興味深い話だな。一部の民の暮らしが、全てを語るわけではないと言いたいのだな)


 エラじいが偉そうだけど、あたしの言いたい事をわかってくれた。


 最初はどうなる事かと思ったけれど、おじじ同士はあたしがいないと会話出来ないみたい。


 三人揃うと、うるさいから気をつけるけどさ。


 寝る前に着替えを探すことにする。あたしの制服は汚れが取れ、綺麗になっていた。


 何故か更衣室にかけられていたけど。いま着てるのはバスローブみたいなものだ。


 お風呂のあと、無意識に用意されたものを着たままだったの忘れてた。


(わしのような皇族、貴族の者は日に何度も着替える)


 はいはい。エラじいは偉い人だから参考になりませんよ〜だ。


(ぐぬぬ、貴族の事ならわしが一番知っておるのに)


{ふぉっふぉっふぉっ、エラじいは引っ込んどれ。庶民や、冒険者は町中てまは軽装じゃ}


 喧嘩する前にエラじいの声を消した。消したのに、やっぱ小さく騒ぐ声がする。


{寝る時は、着替えるものもいるかもしれんが、たいていはそのままか、暑いと下着だけになるかの}


 あたしの国ではだいたい着替えると思う。


 でも海外の生活習慣の違う国ではパジャマに着替える所もあれば、外に出掛けたままの格好で寝る所もあるよね。


[安全度や衛生観念の違いなど要因があるのだな]


 そうか、この世界は安全度が低い。


 この本の中だと忘れるけど、キモゴブがウロウロしている所で、いちいち着替えていられない。


{そういうことじゃ。町中ならともかく、魔物がいる所では、いつでも戦える身構えが必要なのじゃよ}


 楽な格好でゆっくり眠っていたい。でも、いつまた放り出されるかわからない。


 だからあたしはエラじいにあたしに合う軽いけど丈夫な服を選んでもらった。


 パンツやブラは、なんか黒の変わった素材のものばかりだったのでそれを使う。


 選んだ服には、銃をしまえるケースのようなベルトを巻く。


 なんか格好いいけど、持っておけと言われたナイフはゴツい。


 寝る時は危ないから、ナイフは更衣室の入り口に、忘れずに持って行けるように吊るしておいた。


 魔力酔いは、お風呂で治まったけれど今度は疲労と眠気が襲う。


{寝室は更衣室の奥じゃ}


 ほぅ、寝室は脱衣所とも繋がってるのね。バタンキューしたい時にいいかも。


 ベッドには簡素な白いシーツが敷かれていて、布団はふかふかだ。


 簡素だけど、シルクのような滑らかな柔らかい肌触りで、高級ホテルのベッドみたいだった。


 電気······はないんだっけ。魔法での点灯消灯出来るけど、つい付けたり消したりしちゃいそうだよ。


 灯りを消して、あたしは布団に潜り込む。


 おじじ達には、おやすみとだけ伝えて、あたしは目を閉じた。


 疲労が激しく、意識は深い眠りについたはず。


 真っ暗な暗闇の中で、おじじたちも静かに眠っている気がする。


 これは夢の中だろうか。


 多分、違うかもしれない。


 あたしの心の中で、あの後どうなったのか、知りたい気持ちが幻想を生んだのだと思う。


 目が覚めたなら忘れてしまう、現実だったはずの世界。


 深い眠りにつくあたしは、いつの間にか夢となってしまったかつての世界に入り込んでいた······。

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