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第八話 散々な一日のあとは

 お風呂に入って、散々泣いて涙を流したおかげでスッキリした。


 身体の緊張と、喉や胃の痛みが取れた気もする。

 

 なんかこの世界は変だ。


 魔法があって道具やお風呂とか、この家のように使える本があるのに、キモゴブとかうろついてる。


 あたしのいた世界にも猫ちゃんとかノラ犬とか、おっかない熊とかウロウロしていたけどさ。


 でもあたしみたいなただの女子高生が、戦うなんてしなかったよ、ね?


(ガハハ、また甘っちょろい事を。敵は殺す、そうしないと殺られる。男も女も関係なかろう)


 エラじいが偉そうにのたまう。お酒でも飲んでるのかな。どうやって飲むの?


[ふむ、精神的意思のみの存在を酩酊させる魔法は存在するかもしれんな]


 うぅ、また勝手にヘンじいが変な事を言い出す。お化けにお酒飲めるわけないじゃん。


 エラじいのは、場酔いだよ。偉そうにしているけどさ、意外とエラじいもお子様なんだよ。


(なにぉう、小娘が。いい度胸ではないか)


 怒った。それと声が大きいから、うるさい。


 エラじいは放っておく。短い時間だけど、なんとなくわかった。


 あたしが困るとか反応しないと、おじじ達も出てこない。魔法のスイッチと同じだ。


 スイッチを点ける要領で、クサじいで試してみる。


{わしで遊ぶでないわい}


 さすがクサじい。あたしが試したのはわかったみたい。


{切羽詰まった時は、お前さんが恐慌状態(パニック)になって、いっぺんに呼びかけてしまうのが悪いんじゃよ}


 今は安全に、落ち着いて話せる。だから心の切り替えが出来るみたい。


{風呂場のは、いわば強制遮断じゃな。ここに限らず、そういう場所では呼んでもわしらも応えんから注意するんじゃぞ······}


 クサじいの話しは長いので、あたしから切ってみた――――――――


 ――――――――切ったはずなのに、まだ話しの途中じゃバカモンとか、わしもじゃと騒ぐエラじいの声がする。


 完全に消せないのは、あたしが不安だからかな。うっさいけど、いないと寂しい。



 グゥ~······お腹が鳴った。キモゴブの時に朝食べたもの全部吐き出しちゃったから、お腹の中は空っぽだ。


 さて、ここでも難問がある。食欲が出たけど、ご飯どうしよ······。


厨房(キッチン)へ行くのだ。食糧庫(パントリー)に何かあるはず)


 声のボリューム下げたのに、エラじいの声はうっさい。でも助かったよ。


 もう一つの問題、それはあたしが料理ヘタなことだよね。


{不器用な娘じゃ。ほれ、そのガラス戸を開けてみるのじゃ}


 クサじいが、騒ぐので食糧庫の中に入る。調味料の入った瓶やら、お米のような粒々、粉のようなものが棚に整頓されて置かれていた。


 数冊の本も置かれていたけど、背表紙の文字はよくわからない文字だった。 


 クサじいの言うガラス戸はその棚の横にある。ガラス戸じゃなくて、大っきいオーブンみたいな箱だ。


 箱は小さな棚に乗っている。それにガラスのついたドアがついていた。


{開けてみるのじゃ}


 ドアを開けると、一枚の文字の書かれた紙、それとお皿に盛られた野菜らしきものの煮たスープ、フランスパンのような形のパンに、ジャムっぽいものがあった。

 スープからは食欲をそそるいい香りがした。


(酒や水は自分で用意しろと書いてあるな。お茶や果汁水もあるぞ)


 エラじいが紙に書かれていた内容を読んでくれた。


{ふぉっふぉっふぉっ、双炎め、自分が料理苦手じゃからと、過保護なやつよ}


 クサじいが気持ち悪い笑い方をした。


[ふむ。その箱の扉の中は、時間の歩みが緩やかなのだな]


 ヘンじいがあたしにも少し理解しやすく教えてくれた。


 (一日一回、この時間に食事は用意するようだな。足りなければ自分で作るがいい)


 厨房(キッチン)もあるし、食材もたくさん用意されていた。


 餓死はしなくて済みそうだ。でも料理覚えないと、あたしには足りない。


(よく食うのは良いことだぞ)


{うむ。簡単なものならわしが教えて進ぜよう}


[使った食器は流し台の水桶につけとくように、か。逃さず吸収するのだな]


 ヘンじいだけまたおかしな事を言っていた。


 もう、せっかく食事にありつけるのだから片付けの事はあとだよ。


 あたしは棚にあったグラスにを取る。飲み物が置かれたケースから、果汁水の入ったポットを取る。


 トクトクと注ぐ音が、心地良い。これ、そういう作りをしてるよね。


 味見がてら一口飲む。ほんの少し甘く酸っぱい。蜜柑に近い果物かな。


 美味しくて、喉カラカラだったので思わず飲み干してしまった。


(あのスープには酒、と言いたい所だがそっちのミルクも良いぞ。おそらく黒の大陸産の牛のミルクだ)


 わかるよ、エラじい。あのスープにミルク足すのもありだよね。


 あたしは食事を食卓のテーブルへ運ぶ。なんだかここって、ホテルというか、コテージみたいだ。


 一人での食事は寂しいけれど、今はお腹のグーグーが止まらない。


「いただきます」


 スプーンにナイフやフォーク、それに箸などのカトラリーまで揃っていた。


 考えるのはクサじいやヘンじいに任せてあたしは食事を楽しむことにした。

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