第六話 二日酔いと魔力酔いは辛い
うぅ、なんか歩くだけでも辛い。
{魔力切れではないから、魔力酔いじゃな}
[酒の味は格別だからな]
(ガッハハ〜、娘っ子には酒の旨さはわからんからな)
言ってる意味はよくわからないけど、ムカつく。
あたしは女子高生なの!
未成年だからお酒飲めないの!
エラじいはすぐ偉そうに大人ぶるから語気が強まる。
何も食べたり飲んだりしてないのに、酔っぱらう意味もわからないよ。
おじじ達以外に、まともに話せる人いないのかな。あっ、聖奈と信吾以外でね。
(良い具合の岩がある。そこの影に本をおくのだ)
{隠れられる場所ではないが、魔力障害もあるようじゃな。本を隠すには良い岩じゃよ}
あたしは疲れていたので、エラじい達の言うとおりに岩の隙間に本を開いて挟んでみた。
本が見つかって取られないように、隙間の奥に挿し込む。
岩の中に本があるような感じ。でも扉は岩の横に出た。
(本を立てても扉は普通に出るんのだな)
{魔本の扉は魔法じゃから、本の置き方は実際は関係ないのじゃろうか}
クサじいが、もにょもにょしてる。これはあれね、知らなくて恥ずかしいやつね。
{な、なにおぅ。ちょっとど忘れしただけじゃわい}
クサじいがキレた。なによ、やっぱり役に立たないじゃない。ごまかし方もキモいし。
(鍵を閉めると外の扉が消えるようになっているのだな。やっておくとよいぞ)
エラじいが鍵の事に気がついた。何よ、あの頭のおかしい女は意外とまともじゃない。
{疲れて忘れとるようじゃが、こういう魔道具は説明してから渡すものじゃぞ}
[認識阻害のかかる魔法結界が自動で発動するようだ。魔力をどこから得ているのか面白いな]
うぅ、クサじいが根に持って意地悪だ。たしかにおじじ達より、あの怖い女が教えてくれれば早かったよね。
というかあの魔法使いみたいな人、何でこんな所にあたしを放りだしたのよ。
[問題ある人物の選別儀式の一環なのだな]
ヘンじいは何を言ってるのかわからないから黙っててよ。頭はあたしも悪いから、他人の事をどうこう言えないの。
魔本の中はさっきの部屋以外も飾り気がなくて、ほとんど石のようなもので出来てる。
石っぽいのに不思議と暖かみがあるっていうのかな。灯りとは別にホワぁ〜って輝いてみえた。
とにかく身体を洗って、なんか食べて休みたい。だって、お昼まであたしただの女子高生だったのに。
······どうして、こんな目にあっているんだろう、あたし。
······泣きたいけど、泣いたって誰も慰めてなどくれない。
日頃の行いが悪かったのかな。お父さんやお母さんは大好きだし、大事にしてたはずだよ。
あたしが死んだと思っているだろうから、今頃は知らせを受けて悲しませているかもしれない。
(ほれ、ぼ〜っとして魔力酔いのままいると倒れるぞ)
むぅ。おじじ達がうるさいから、メソメソ泣けないのも辛い。
泣き言は後にして、あたしは改めてこの魔本の中の空間を調べてみる事にした。




