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第五話 自分でやった事なのに······

 なんだかわからないままだったので、一番肝心な事を忘れてた。


 ――――――――殺すって何よ。


 無理。絶対に無理。なんかキモゴブうるさいし臭いし怖いし。


 何も考えずに飛び出したまでは良かった。


 てっきり本のそばに出るかと思ったのに、あいつらの後ろにいた。


 ――――――――簡単に当てられる位置にいた。



 本の周りでキモゴブが五人、本を突付いたり蹴ったりしている。


(さぁ、今ならまだ見つかってない)


 戦うのが好きなエラじいが、うっさい。


{本の表紙が破れると不味いぞい}


魔法の本が傷つき過ぎたり表紙が破れたりすると使えなくなるって言ってた。


 あたしはキモゴブの後ろから、銃を構える。ロック? というのが二丁ともある。


{違う、それはただの飾りの宝石じゃ}


 クサじいがギャアギャアうるさく教えてくれて、なんとか外せた。


 ······あたしは無心でキモゴブに向かって銃を構える。


 銃の引き金をそっと引く。ゲームのボタンを押すみたいに軽い。



 ――――――――バンッ



 鈍く響く発射音。鳴ったのは銃ではなく着弾音。


 ······テレビのドラマとかだと、もっと大きくパーンッて音が鳴ったのに、引き金をひいてもこの銃は静かだった。



 当たれ――――――――って、思ったよ。 



 でも、こういうの当てるの難しいって言うじゃん。


 なのに、突然キモゴブの後ろ頭が、弾けたんだ。


 ――――――――ウゲェぇ゙、なにあれ、あたしがやったの?


 偶然じゃないよね。だって、銃を構えて、撃ったのあたしだから。


 キモゴブの頭が破裂し、赤黒い血が飛び散る。


 仲間のキモゴブ達があたしに気づく。


 (何をしとる、撃つのじゃ)


 ムリだって。キモいけど、これって人殺しじゃん。


 あたしは足が竦んで動けない。だって、当たると思わなかったし、死ぬと思わなかった。


 ――――――――ウソだ。


 撃って当たればそうなるに決まっているのに。知ってて撃ったのに。


 バカなあたしにもわかるよ。


 ······なんで? 


 ······なんであたし、死んだはずなのに、知らない世界で人殺しなんてしてるの?


{やらねば、おぬしがやられるだけじゃぞい}


 クサじいが騒ぐ。泣きたくなってきた。でも、泣いても誰も助けてなんかくれない。


 再びこみあげる吐き気。頭がズキズキする。


 叫びながらやって来るキモゴブと、あの時の聖奈(みな)の嫌な顔が浮かぶ――――――――



 ――――――――またあいつに殺されてメソメソ泣くの?



 あたしの手に届くかどうかの至近距離で、反射的にあたしの腕が持ち上がる。


(泣くのは後にせい)


[後悔は先に立たない良い見本だな]


{はようせんと、わしらも······}


 おじじ達が懸命に騒ぎ、あたしを勇気付けようとする。


 こんな場面なのに、あたしのせいで騒ぐことしか出来ないおじじ達が、可哀相で可笑しかった。



 バンッバンッ――――。



 二丁の拳銃から発射される弾丸は聖奈(みな)そっくりのキモゴブの頭を撃ち砕く。



 バンッバンッ――――。



 間髪入れず連射された魔銃の弾丸が、キモゴブの頭を木っ端微塵に砕いた。


 あたしがやったのに気持ちが悪い。キツイ罰ゲームにしては酷すぎるよ。


 頭が吹っ飛んでも蠢いていたキモゴブは動かなくなった。


 リアルなゾンビ映画より、酷い臭いと光景にまた嗚咽する。


(ほぉ〜、やりおるわい)


 さっきまで騒いでいたくせに、偉そうに偉ぶるエラじい。


{もっと早くやらんかい}


 クサじいが、感心したのを隠して腐す。おじじがデレてもキモいだけ。だからクサじいはクサじいなんだよ。


[魔銃の威力とゴブリンの実力が釣り合ってないな]


 ヘンじいはまた意味ありげに意味のわからない事を言っていた。


 ただ、三人のおじじからは安堵の感情は伝わってくる。


 あたしが死んだらおじじ達も一緒に死んじゃうみたい。


 あたしのせいじゃないけど、騒ぐしか出来ないのって辛いよね。やっぱチグハグで可笑しい。



 騒ぐ····か。もっと、嫌なら嫌ってハッキリ言ってやれば良かった。


 あたしは馬鹿だから、どうしたらいいのかわからない。


 でも聖奈(みな)にまた会えた時は、キモゴブに弾丸をぶち込んだように、あいつの額に弾丸を撃ち抜いてやるから······。



 あたしが自分でやったのに、怖くて臭くてまた吐いた。


 キモゴブをそのままにしては駄目じゃ〜とおじじ達がうるさいからだ。


{はよう魔晶石を回収せんか。臭いで別の魔物がやって来るぞい}


 聖奈(みな)の残骸なんて見たくないのに、クサじいが肉の飛び散った死体の方へ行かせようとする。


 やったのあたしだけど······


 ······ダメだ、こんなの触れないよ。どうしておじじ達は、変な石を欲しがるの?


[銃の機能に魔晶石の魔力吸収がある]


 えっ? ヘンじいの言ったボタン押したら光ったよ。


 あっ、キモい聖奈(みな)の残骸が消えた。


 ゲームみたいだけど、やたらと臭いし疲れたし、何が違うのかな。


 おじじ達はまたうるさい。好き勝手に喋って来るのに役に立たないんだもん。


(うるさいとは何じゃ)


{かぁ〜小娘はこれじゃから}


 ほら、すぐに騒ぐ。あぁ、なんか疲れたし休みたい。


 でも、ここだとキモい聖奈(みな)みたいなゴブがいっぱいやって来る。


 また襲われると嫌だから隠れないと。

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