第三十七話 転生から戻っても女子高生だったあたし〜でもね、三人のおじじに三人の変人付きになって毎日うるさいんだよ〜ぅ゙ぅ゙ゥ゙ぅぅゥ
ひとつわかったのは、聖奈とぎゃあぎゃあ熱く騒がしい七菜子が、彼女の本質だと言うことだ。
「冷静? 真面目? そんなの攻撃されない為の仮面に決まってるじゃない」
マジか〜七菜子はやっぱ怖い。
あたしが清水寺の舞台から落ちた場面に遭遇していたら、信吾と聖奈をまとめて突き落としていたかも。
その七菜子と聖奈がいま何を揉めているのか、それも謎だ。
二人は別に親友ではないから。
{対抗心剥き出しのようじゃの}
クサじいが二人の現状をわかりやすく説明してくれた。
学校にいた時も仲は良くなかったから仕方ないけどさ、こんな所に来てまで揉めないでよね。
「咲夜はどっちを選ぶの?」
おじじ達だけでもうるさくてたまらないのに。
うん? 待てよ。この二人と別に一緒にいる必要あるのかな。
キモゴブだらけの時は人恋しくて、聖奈以外の人に会いたかったけどさ。
(わしらは別として、一緒の行動は求められておらんな)
エラじい、しっかり自分達はついていく宣言じゃん。
「まさか、私達をこの世界に置いて行くなんて考えた?」
ぐっ、七菜子鋭い。
「そんなことを考えても無駄よ。あの女の人の扱いも把握したから」
――――本当に七菜子ってこんなはずじゃなかった感じなんだけど。
あたしとしては戻りたい。
でも、あの女以外にもいろんな人がいて、この世界に興味が湧いたのもある。
だから、あっちには戻る。もちろん聖奈や七菜子も一緒に。
しっかり女子高生をやって、たまにこっちへ来るのは駄目かな。
{うむ、それは良いと思うぞい}
[ふむ。その為の装置が魔本なのだろう]
やっぱそういうことか。なんとなくあの女は自由な選択肢を選べるようにしてくれてる。
だから欲張ってもいいんだ。
「それなら、咲夜のパートナーは私に決まりだよね。七菜子は元の世界に戻る身体がないし、こっちでず〜〜っと、お留守番よ!」
聖奈が嬉しそうに七菜子に告げた。
「魔法世界舐めてるでしょ。レーナさんなら時象への割り込みが可能よ。つまり死ななかった世界線を結びつけられるはずだわ」
本当に七菜子ってヤバいわ。魔法をまだそこまで扱えないのに、仕組みや理念みたいなのを理解してる。
「やれなくもないけれど、七菜子はそのままがいいのでしょう?」
うわぁぁぁいきなり現れたよ、この魔女さんって人!
七菜子が黙った。元の身体はあの女が聖霊人形というものでつくってあるそうだ。
七菜子が悩んでいるのは、自分を捨てる覚悟だ。
だって、皇女ネフティスな見た目の男子で戻ったら御両親びっくりだもん。
「七菜子としても戻りますが、この身体で活動出来る形にしようと思うんです」
七菜子としてはバスの事故を利用して、二つの身体になってしまった事をごり押しする気でいる。
「なら好きになさい。あなた方がついていればサンドラさんも安心だからね」
魔女さんの基準は、あたしやお父さんお母さんが幸せになれば聖奈や七菜子の件はこだわらないみたい。
「私はこのままでいいです。信吾の事で風当たりは強くなると思うから」
聖奈は大変な目に遭ってる。でもクラスメイト達はその事を知らない。
自業自得だけど、罰というには酷すぎる地獄を聖奈は乗り越えて来た。
「咲夜、あんたがそれ言うかな」
逞しく、したたかな性根は変わらないね。
嫌いだったけど、いまの割り切った聖奈は良いと思う。
「それなら身体はあの娘に預けておきなさい。外のモブ男君達とあなた達を一緒に戻すから」
そう言って魔女さんが放置されたまま気を失った呪いの子に近づく。
そして戒めを解き正気に戻した。
「つじつま合わせに、貴方が信吾をやりなさい。愛する男の子を演じるのだから本望よね」
ホロンという子はコクコクと嬉しそうに頷く。待って、なんだかおじじ達の時みたいな嫌な予感がするの。
{無駄じゃよ。この御婦人はあの頭のおかしな娘の親みたいなものじゃからな}
クサじいが、震えながら言った。七菜子もその実力を高く評価してたくらいだもんね。
あたしの初めての異世界ライフは、三人のおじじを押しつけられて始まった。
そして、ようやく元の世界に帰る事が出来るのに、おじじ達はそのままだ。
さらに聖奈、七菜子が男の子になってついて来て、見かけは可愛らしい呪いの術師のホロンまでセットで帰る事になった。
転生から戻っても女子高生になれそうなあたし。
でもね、一番得をしたのはなぜか結局イケメン皇子姿を手に入れたモブ男君の二人だったのかもしれない――――。
この物語は【逃げた神々と迎撃魔王シリーズ】の短期連載外伝になります。
咲夜とおじじ達の学校生活、聖女聖奈と七菜子達を連れた冒険の旅。次作の予定は今のところ未定です。応援お待ちしております。
最後までお読みいただきありがとうございました。引き続きシリーズ作品もお楽しみ下さい。




