表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/37

第三十三話 なんと言おうとぶっ飛ばす

{ふぉっふぉっふぉっ、これがわしの切り札の召喚術じゃ}


 クサじいの自慢がうざい。どうなってるの?


「咲夜、話しは後。構えな。ガウツは聖奈ちゃんを運んでやりな」


 やっぱりお母さんだ。構えがぎこちないけど、お父さんもいる。


 お母さん······めっちゃ強い!?

 あと、格好いい!


{二人にはわしの溜め込んだ魔力と、お前さんの能力が強さのもとになっとる}


 信吾を相手に一歩も譲らない。技量では押してるかも。


「ボーっと見てないで、その変なマスク外してあんたも来な」


 それでも異界の皇子と合体した信吾は強い。


 マスクがあると視界が狭まるので外すと、お母さんが雷の魔法で、あたしに纏わせた。


[ふむ、異界の知識か。逆流放電で塵を弾くのだな]


 バチバチしてるけど、くっつかないで弾くんだね。


(もう少しだけ、わしもいける。援護のある内に、アレを倒すのだ)


 エラじいがあたしに力をくれる。


「ぐっ、おのれ······」


 滑り込むようにお母さんと信吾の間に入り込み、重心のかかる信吾の足へ蹴りを入れた。


 急所と違いダメージは低い。


 ただ足の運びが鈍った一瞬を、逃すお母さんではない、なんてね。


 聖奈を戦車まで運んだお父さんも加わり、信吾が、ダメージを回復出来なくなった。


「ぐっ、貴様ら、私はローディスの皇帝になる男だぞ」


 信吾と皇子が交互に意思を出すので、わかりづらい。


 あたしもお母さんは聞く耳ない。そしてお父さんも。


 お父さんが斧で信吾の着る鎧を壊した。あたしは右頬を蹴り、お母さんは左頬を槍でぶっ叩いた。


{むっ、これは······?}


 クサじいが異変に気づいた。


(そやつの魔力が急激に衰えてゆく)


 あたしと母さんの挟撃で、大ダメージを受けたせい?


「ま、まっで、俺がわるがった」


 回復もかからずヨレヨレのままの信吾が、みっともなく生命乞いをする。


「どうするんだ」


 優しいお父さんの目が、緊張している。


 もともとこの世界の冒険者だったお母さんと違い、お父さんにはお父さんだったものの記憶があるだけ。


 娘を大変な目に合わせた男を、勇気を出して自分がやると、その目が言っていた。


「大丈夫だよ、お父さん。聖奈の仇はあたしが討つ」


 躊躇いはない。


 あたしは皇子と信吾まとめて潰すつもりで、顔面にパンチを叩き込んだ。


「ぶヘひゃゎ」


 魔力と体重を乗せた一撃で信吾は吹き飛び、ぶっ倒れた。


「やるじゃないか」


 お母さんに褒められた。そしてちょっとだけ抱きしめてくれた。


 まだ魔物だっているから、今は無事を確認出来ただけでいいそうだ。


 お父さんも、軽くギュッてしてすぐに警戒体制を取る。


 信吾はしぶとく立ち上がる。


{新手じゃ、気をつけよ}


 黒づくめの服を着た魔法使いの人みたいな敵が、信吾に近づいた。


(回復させる気か)


 エラじいにはもう魔力が、残り少ないみたいで焦っている。


 お父さんもお母さんも横から襲って来た魔物を相手して、間に合わない。


 あたしがもう一度やる。信吾は回復しても、さっきまでの力がないから。


 身構えるあたしの前で、信吾の入り込んだ皇子が血を吐き出した。


 壊れた鎧の隙間から、自身の使っていた剣先が生える。


 皇子のお付きの黒づくめの魔法使いが近づくあたしを見て、ニヤリと笑う。


 その華奢な両手で、信吾にしっかりと剣を突き刺していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ