表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/37

第三話 三人寄ればなんちゃらは、絶対に違うとあたしは断言したい

 結局なんだかわからない人に適当に投げ出されたのは、枯れかけた木々のあるだけの、何もない荒野だった。


 雑にされるのは慣れているけどさ、本当に建物一つないんだよ。


 汚れていたはずの制服も綺麗になってる。


 自分のせいとはいえ、臭い部屋にいたから外の空気は乾いていても新鮮だ。


 あれっ、いきなり知らない世界で外出て平気なん?


 あたしは現代っ娘だよ。こんな、草一つ生えていない荒れ地に放り出されてどうしろってのさ。


 いや、草は生えてるけど、どうみても雑草だし。あたしには食べられる野草なんて分からないもの。


(さっきもらった魔本を開くのじゃ)


 うわっ、凄くうっさい。大きな声が頭に響く。


 なんかおじじについて、ケルベロスがどうのこうの言っていたっけ。この声のことかな。


{何をしておるのじゃ。早うせぬと魔物がやってくるぞい}


 しゃがれた声のおじじが、あたしの頭の中に地図のようなものを浮かべた。


 勝手にそんなの広げたって、ここがどこだかわからないんだってば。


[私は何故この娘の魂の中にいるのだ。それに私が亡くなった時はまだ若かったはずだ!]


 おじじ? ではないけど、爺臭い面倒臭そうな最後の一人も勝手にあたしの中で喋り出す。



 最初のおじじは偉そうで、声がデカくてうるさい。


 次のおじじは話しが長いし、お説教臭くてうるさい。


 最後のおじじは、自称若ぶって関係のない話しをしてきてうるさい。



 なんなのコレ? 


 ケルベロスって意味がよくわかったよ。頭が三つなのに身体は一つのワンコだもん。


 ケルベロスは説教おじじが自慢気に姿を教えてくれた。


 なんだかわからないのに、無駄に話しが超なっげぇ。校長先生なの?


 つぅか、そんな暇ないんじゃなかったっけ? 魔物がどうたら言ってたよね。


 えっと、偉そうなおじじはエラじい、説教臭いおじじはクサじい、変なおじじはヘンじいにしよう。


 自分の頭の中のことなのに、凄く疲れたんだけど。


 エラじいが特に声がデカいからさ。痛くないはずの耳が痛いよ。


{クサじいは酷過ぎるぞい。せめて知恵じいにしとくれ。参謀でもよいぞ}


(わしもエラじいだと魚みたいじゃ。つけるなら御隠居にせい)


[それなら私は、あの頭のおかしな娘が呼んでいたように術師と呼ぶのだ]


 うがぁァァァァ〜〜〜〜うるっッさいっ!!


 いっぺんに喋るから、何を言ってるのかわからないんだって。


 あたしが頭悪いからって、つけたはずのおじじが使えないんだけど。


 最後だけボソッて、ヘンじいはあの変な女を頭がおかしいって言わなかったっけ。


 ······ヘンじいより頭がおかしいってヤバくない?


[うむ。火竜もが泣いて逃げ出す大陸随一の狂った錬金術師(マッドアルケミスト)だな]


 うぅ、頭が痛い。どういう意味かわからないと余計に痛い。


 おじいちゃん達ってホント威張ってばっかで役に立たないよね。老害っていうんだっけ。


(なんじゃと、小娘が。わしは皇帝だったのじゃぞ)


{わしだってAランクパーティーの頭脳として参謀を務め、召喚師として一流の魔法使いだぞい}


 ほら、昔の自慢大会が始まった。話しは長いし同じ話しばかりだしさ。


 ヘンじいは大人しいけど······えっ、待って、なんかキモい子供がいっぱい来るんだけど。


(本を開くのじゃ! 早く!)


 エラじいが大きな声であたしに魔本を開かせた。おじじが急かすので言われたページを探してみる。


 なんかこの本凄くない? ページをめくるたびに絵が浮かび上がるの。


(こ、こら時間がないと言っておるじゃろうが!)


[うむ。女子は身体をしっかり守る服装選びは重要だな]


{だから、そんな時間ないぞい!}


 あぁっもう、うっさい。でも、なんか扉みたいの出たから入ってみるよ。



(エラじい)

{クサじい}

[ヘンじい]


 三人のおじじの思念は「」の形を変えて表現しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ