第三話 三人寄ればなんちゃらは、絶対に違うとあたしは断言したい
結局なんだかわからない人に適当に投げ出されたのは、枯れかけた木々のあるだけの、何もない荒野だった。
雑にされるのは慣れているけどさ、本当に建物一つないんだよ。
汚れていたはずの制服も綺麗になってる。
自分のせいとはいえ、臭い部屋にいたから外の空気は乾いていても新鮮だ。
あれっ、いきなり知らない世界で外出て平気なん?
あたしは現代っ娘だよ。こんな、草一つ生えていない荒れ地に放り出されてどうしろってのさ。
いや、草は生えてるけど、どうみても雑草だし。あたしには食べられる野草なんて分からないもの。
(さっきもらった魔本を開くのじゃ)
うわっ、凄くうっさい。大きな声が頭に響く。
なんかおじじについて、ケルベロスがどうのこうの言っていたっけ。この声のことかな。
{何をしておるのじゃ。早うせぬと魔物がやってくるぞい}
しゃがれた声のおじじが、あたしの頭の中に地図のようなものを浮かべた。
勝手にそんなの広げたって、ここがどこだかわからないんだってば。
[私は何故この娘の魂の中にいるのだ。それに私が亡くなった時はまだ若かったはずだ!]
おじじ? ではないけど、爺臭い面倒臭そうな最後の一人も勝手にあたしの中で喋り出す。
最初のおじじは偉そうで、声がデカくてうるさい。
次のおじじは話しが長いし、お説教臭くてうるさい。
最後のおじじは、自称若ぶって関係のない話しをしてきてうるさい。
なんなのコレ?
ケルベロスって意味がよくわかったよ。頭が三つなのに身体は一つのワンコだもん。
ケルベロスは説教おじじが自慢気に姿を教えてくれた。
なんだかわからないのに、無駄に話しが超なっげぇ。校長先生なの?
つぅか、そんな暇ないんじゃなかったっけ? 魔物がどうたら言ってたよね。
えっと、偉そうなおじじはエラじい、説教臭いおじじはクサじい、変なおじじはヘンじいにしよう。
自分の頭の中のことなのに、凄く疲れたんだけど。
エラじいが特に声がデカいからさ。痛くないはずの耳が痛いよ。
{クサじいは酷過ぎるぞい。せめて知恵じいにしとくれ。参謀でもよいぞ}
(わしもエラじいだと魚みたいじゃ。つけるなら御隠居にせい)
[それなら私は、あの頭のおかしな娘が呼んでいたように術師と呼ぶのだ]
うがぁァァァァ〜〜〜〜うるっッさいっ!!
いっぺんに喋るから、何を言ってるのかわからないんだって。
あたしが頭悪いからって、つけたはずのおじじが使えないんだけど。
最後だけボソッて、ヘンじいはあの変な女を頭がおかしいって言わなかったっけ。
······ヘンじいより頭がおかしいってヤバくない?
[うむ。火竜もが泣いて逃げ出す大陸随一の狂った錬金術師だな]
うぅ、頭が痛い。どういう意味かわからないと余計に痛い。
おじいちゃん達ってホント威張ってばっかで役に立たないよね。老害っていうんだっけ。
(なんじゃと、小娘が。わしは皇帝だったのじゃぞ)
{わしだってAランクパーティーの頭脳として参謀を務め、召喚師として一流の魔法使いだぞい}
ほら、昔の自慢大会が始まった。話しは長いし同じ話しばかりだしさ。
ヘンじいは大人しいけど······えっ、待って、なんかキモい子供がいっぱい来るんだけど。
(本を開くのじゃ! 早く!)
エラじいが大きな声であたしに魔本を開かせた。おじじが急かすので言われたページを探してみる。
なんかこの本凄くない? ページをめくるたびに絵が浮かび上がるの。
(こ、こら時間がないと言っておるじゃろうが!)
[うむ。女子は身体をしっかり守る服装選びは重要だな]
{だから、そんな時間ないぞい!}
あぁっもう、うっさい。でも、なんか扉みたいの出たから入ってみるよ。
(エラじい)
{クサじい}
[ヘンじい]
三人のおじじの思念は「」の形を変えて表現しています。




