第二十八話 血に染まる大地を前に青春を謳歌してやる
「ちょっ咲夜助けて! 噛まれる!」
まだだって言ってるのに、聖奈が焦って先走った。まあ、六発全部撃ち込み、一体倒したので良いか。
(お主、ずいぶん余裕だな)
ふっふ〜んだ。いつまでも怯えてばかりいられないからね。
あたしは聖奈に近づくキモゴブは魔銃で頭を吹き飛ばして噛めないようにし、自分に向かって来るやつは、ぶん殴って、蹴飛ばした。
聖奈も見捨てられないとわかると、安心したのか、ハンマーで応戦する。
怪力手袋とハンマーの性質なのか、当たったキモゴブの潰れ方はエグかった。
{ほれほれ、余所見しとる場合か}
注意が散漫になると、おじじ達が正してくれる。うっさいけど便利だよね。
「こんのぉ!」
聖奈のやつ、いいね。キモゴブを信吾だと教えて正解だ。あいつに会ったら何がなんでもぶっ飛ばしてやろう。
(お主、あの小娘が嫌いだったんじゃないか?)
好きか嫌いかで言えば、嫌いだよ。可哀相な目に合おうと、改心しようと、嫌い。
でもさ、嫌なやつや、悪いやつがちょっと頑張ってる、良いことしてるとキュンってくるじゃん。
あたし、チョロいんだよ。だから嫌い。ムカつくじゃん。
{むちゃくちゃだのぅ。まあ、喧嘩するほど仲良いのではなく、喧嘩出来る相手がいるから良いのじゃな}
そういうこと。それでいいんだ、あたしと聖奈はさ。
いつかまた好きなやつ出来たら、お互い喧嘩して、裏切って、絶交する。
傍からみるとバカバカしいけど、そんなもんでしょ。
誰もがあたしの母さんみたいになれない。
我が親ながら恥ずかしいくらいお父さん好き好き〜だったから、憧れてはいるんだ、そういうのもさ。
「だぁ〜、咲夜、おじじにかまってないで援護お願いよ」
あっいけない。おじじ達のせいになった。
キモゴブ十五体と、少し強いキモゴブ二体を聖奈と二人で倒しきった。
聖奈はゼハーゼハと呼吸が乱れてぶっ倒れた。あれ、人形なのに本当に欠陥多くない?
[ふむ、独自魔力のみで動く設定で、内包魔力を同時に鍛える仕組みのようだな]
ヘンじいが、少しだけわかる説明をしてくれた。
聖奈はどうも魔法が使えないのではないようだね。
「絶対、あの変な女の嫌がらせよ」
それでもついて来るんだから、本当に変わったよね。
(よほどブッ殺したい相手がいるのだろうな)
話しを聞く限りは、信吾だよね。聖奈って見方によってはさ、あたしを守ったことになるよね。
{欲望がなければ、そう言えるがの}
だよね。恩には着ないよ。嫌いだし。
でも気力振り絞って全力で吠えてる姿をみると、あたし達ってやっぱまだ女子高生で青春してるよね。
(お主······ゴブリンの惨状を前に剛胆なことだな)
エラじいがなんか言ったけど、いいの。
血染めの大地で肩を抱き合う女子高生達なんて、早々出来ない体験なんだから。




