第二十五話 なんかついてるけど女子高生なの
あたしはお風呂場にいき、気を失った聖奈の汚れた服を脱がせた。
なんか元々小柄だけど、こうして見ると幼い。それに······なんかついてるし。
あたしは見なかったことにして、シャワーの暑さをぬるく調節して、湯船にもお湯を張る。
身体の汚れを落とし、洗い流す。水の音に気がついたのか聖奈の意識が戻る。
「あれ、なんでお風呂?」
「あれ、じゃないよ。気を失ったんだよ」
お風呂場にはおじじ達が入れないから、邪魔されずゆったり出来る。
「動ける? 身体は洗ったから、髪を洗うならそこにシャンプーとか使いなよ」
まだきちんと把握してないけど、あたし達のいた世界より、色々と便利な作りになっているよね。
聖奈に使い方を教える。聖奈がないはずのものに気づいた。
「ねぇ、私の身体おかしくない?」
おかしくはないと思う。
あたしも聖奈の身体をじっくり見たことないから、それが普通ならそうとしか言えない。
「いや、おかしいって。絶対あの変な女のせいだ」
あぁ、あの女ならやりかねない気がする。
「死なない身体と関係あるのかな」
確かめるには聖奈を殺るしかない。
「ちょっ、それだけの理由で死ぬのはもう嫌よ」
だよね。仕方ないから後でおじじ達に聞いてみよう。
「咲夜は平気なの?」
「平気って?」
「な、何でもない」
なんで聖奈が真っ赤になってるのかな。
頭と身体を洗ったあと、湯船で疲れを癒やす。湯船はなんか広くなった気がする。
お風呂の後は、女物の下着だけど聖奈に履かせて、服もなるべく身体に合うものを選んだ。
「先に装備も探しておこう」
隠してあるけど、休んでいる間に、本が見つかるかもしれない。
寝ていても、おじじ達が起こしてくれるけどね。
「おぉ、なんかごはんも二人分あるよ」
どうやって知ったのかな。
(二人を送り出したのが、あの錬生娘なのだから、伝わる手段くらいあるのだろうて)
スマホのGPSみたいね。
{GPSてはなんじゃ}
居場所を知らせる発信機みたいなの?
[ふむ、特別な信号を発する装置と受け取る装置があるのだな]
ヘンじいがあたしに、というより他のおじじ達に教えるように呟く。
あぁ、それでたまに難しいこと言っていたんだね。
おじじ達だけでやってほしいよね。
「ぶつぶつと、また何かと話してるの?」
お腹を空かせた聖奈が目をギラギラさせて見てる。その身体、ごはん用意したってことは本物なの?
{食事を血肉に変えるように、魔力に変換するのじゃな}
魔法のある世界ならではなんだね。まあいいや。
今日は疲れたし、ごはん食べたら寝ちゃうと思うんだよね。
聖奈もそうだったみたいで、穀物のスープに少し固めのパンを浸して柔らかくしながら流し込むように食べていた。
(食事をしとらんかったのか)
ずっと、あたしに倒されては戻ってで、それどころじゃなかったみたいだからね。
{魔力を取り込む魔物、そう考えると衰弱はしても死なんわけじゃな}
やっぱ、見た目は聖奈だけど、身体がキモゴブなのかな。あいつらはもっと汚いというかムサいし臭いけど。
(魔物が生命体とは限らんのじゃよ)
[ふむ、石像や機器であれ、魔力により生命は生まれる]
ふぅん、お人形さんとかロボットみたいなものかな。
もしそうなら聖奈はサイボーグとかいうやつなのかな。少し格好良くない?
でも中身は反省し、心を入れ替えたとしても聖奈だった。
疲弊し過ぎたのか、一通り食べて飲んだら眠っちゃってた。
(お子様だのう。寝室で寝かせるのか)
そうだね。復讐されることは、もうないと思う。でも聖奈があたしより先に目を覚ましたら、一応意識に呼びかけてね。
{わかったわい。ほれ、隣のベッドに寝かせて、あそこで待機しとるスマイリー君なるものを口へおくのじゃ}
歯も磨かずに眠ったので、洗濯するみたいに口の中をぷにょぷにょしたのが掃除していた。
聖奈は爆睡しているので、呼吸は乱れても起きなかった。
あれって、あたしも寝てる時に掃除されているのかな。
[魔力養分を余すことなく吸収するのに、あの粘体が便利なのだな]
なんかエコっていうのかな。その究極を見た感じだよ。無駄がないんだもんね。
あたしも眠くなったので歯を磨き、着替えて、ベッドへ向かった。
恨んでいたはずだけど、殴って、ぶち殺してあたしは気が晴れたのかな。
おじじ付きだけど、あたしは聖奈と久しぶりに二人っきりの部屋で眠りについた。




