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第二十三話 上等キモゴブとの闘い

 小さめの岩を上等キモゴブのいる穴へと落とす。一応、当たらないようにしてるのに、まだ騒ぐ元気はあるみたいね。


 途中からあたしの意図に気づいて、小岩を使って足場を作り始めた。


(魔本を開いて、道具箱からロープを持って来た方が早かったのではないか)


 半分以上、穴が埋まったところでエラじいが、今更な事を言った。


 もっと早く言ってほしかったよ。あたしは平気だけど、上等キモゴブの体力が限界に近い。


{回復薬を飲ませてやるしかないかの}


 クサじいがあたしの腰に備え付けた鞄に回復薬の飴があると教えてくれた。


{回復飴は赤いやつじゃ}


 飴はいくつか種類があって、回復薬は赤い飴だった。


 上等キモゴブに上を向いて、口を開けるように言う。


 疲れきったキモゴブは、息を乱しながら言われるままに口を開けた。


 あたしが回復飴をその小さな口を目がけて落とす――――――――口に入る寸前、上等キモゴブが避け、回復飴が小岩の山の中へ落ちて消えた。


「何でよけるのよ」


 回復してあげようとしたのに、自分から拒否して、上等キモゴブとはいえゴブはゴブね。


「また私を殺す気でしょ!」


 叫ぶ声も、最初より弱々しくなった。


(疑っているようだな)


 そうか、散々倒したから警戒するよね。まだ回復飴はあるけど、自分用にも残しておきたいから無駄に出来ない。


 ――――――――あたしは、落とし穴へと飛び降りた。


「えっ? な、なんで?」


{な、何をしておるのじゃ}


 上等キモゴブと、クサじいの驚く声が被った。


 あたしは不安定な小岩の足場に上手く着地して、回復飴を上等キモゴブの口へと突っ込み、口を封じた。


 毒殺されるとでも思ったのか、上等キモゴブは諦めて抵抗しなかった。


 あたしがいま、手の力をほんの少し強めるだけで顎が砕けるのを知っているからだろう。


 飴はお腹を空かせて衰弱した上等キモゴブの口の中で、甘く優しく溶けていき、疲れを癒やし水気と活力を徐々に生じさせた。


「――――――――!?」


 魔法の癒やしのように輝くことはないけれども、この回復飴の効果は抜群に高かったようだ。


「元気出たようだね。それじゃ後少しだよ」


 あたしはそう言うと魔法で固めた土壁をヒョイヒョイと登る。


「えっ······?」


 上等キモゴブが混乱した。てっきりそのまま助けると思ったみたいね。


(助けなくて良かったのか)


 エラじいはあたしの考えを理解したみたいだね。


 これは、あたしと上等キモゴブの勝負だからね。回復飴はマラソンの給水みたいなもの。


 あくまでも、自力で上がって来ないとね。


{お前さんは、あほか。そのためだけに下に降りたのか}


 クサじいがハラハラさせられたのを誤魔化すように叫ぶ。エラじいより声がでけぇー。


[ふむ、本心からの叫びは人の思いをより強くさらけ出すようだな]


 安定のヘンじいの謎解説。きっと解説出来てもどうでも良さそう。


 上等キモゴブも理解し、悟ったみたい。身体の疲れが取れたので、目の光に力強さが戻る。


 さあ、再開だよ。


 あたしと上等キモゴブは二人っきりで、脱出ゲームのように楽しんでいた。

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