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第二十話 生まれ変わったのだから

 ······絶対に無理に決まっていた。


 変な女が話しの途中で気絶したせいで、本当に身一つで私は異世界の何もない荒野に放り出された。


 他人を出し抜く知恵も、ヒャッハーするチート能力も魔法もない。


 便利な魔法の道具もないし、偶然出会ったのは、私と同じくらいの身長の裸に近い格好のキモい人っぽい集団。


 颯爽と現れ、助けてくれる白馬の王子様も、ハーレム勇者野郎も、偶然通るうさん臭い勘違いモブもいない。


 だいたいハーレム勇者野郎候補は、あの信吾だ。モブ男もあのモブ男達なら、助けられたくないし。


 だからって、ただの女子高生が丸裸で四人のキモい人に勝てるわけない。


 なんかキモい叫びと、涎を垂らして襲いかかって来た。


 酷い臭いと、痛み。こいつら、私を食べるか犯すかしか考えていない。


 絶対に食われ、犯されたくなくて、拾った石で殴り返す――――――――



 ――――――――後ろから頭を殴られ意識を失い私は倒れた――――――――······



 ······気がつくと私は再び変な女のいる石づくりの部屋にいた。


 飛ばされてすぐだからか、変な女は頭を抱えて悶絶していた。


 首を痛めたようで何か白いギプスのようなもので固定していた。


 私も先程のように、まとわりつく何かむにょむにょしたものに傷を癒やされていた。


「当たり所が悪かったようね。あいつら嬲るの大好きだから助かったわね」


 ······いや、死んでるんですけど。助かってないですけど。


「大丈夫よ。あなたの真魂は預かってるから」


 死んでるのに大丈夫の意味がわからない。


「普通、なんか能力とか道具とかくれるんじゃないの?」


「普通? なんで?」


「えっ?」


 変な女なのは知っていたけれど、異世界転移とか転生知っているなら、わかるでしょうが。


「違うわよ。何でわたしが、貴女に無料で何かあげるわけ? 生命を助けたのに?」


 返す言葉はない。与えられて当然だと思っていたからだ。


 ただ無力なままの状態で、生き返らせるのなら、もう止めにして欲しい。


「それは無理ね。ちゃんと痛みと苦しみを味わってもらわないとね」


 私はうなだれた。やはり報いの地獄なのか。


 結局自分が苦しいから逃げたい。


 咲夜に謝りたいけど、それで許され助かりたい気持ちを、見透かされたようだ。


「じゃあ、話しは終わりね。魂がすり減るまで頑張れば、あの娘に会えるわよ。会ってもまあ、許す許さないの話しどころじゃないと思うけど」


 どういう意味?


 怒っているのはわかるけれど、意味が違うように聞こえた。


「会えばわかるわ。助かりたいのなら自分でなんとかしなさいな」


 その意見も正しくて何も言えない。ただ本当に、せめて服くらいはもらえないかな。


 私が咲夜でも、流石に引く。


「あの娘は細かい事、気にしないわよ。たぶん」


 そうかしれないけど、流石に何度もコレを繰り返すのは厳しいので、お願いします。


 私は額を地面に擦り付けんばかりに頼み込んだ。


 ······生命、いや魂を捧げてもいいからお願いします。


 変な女が嬉しそうに笑った。やっぱり、魂を求める悪魔だったんだ。


 あぁ、こうやって人は悪いやつに弱みを握られ、いいように利用されていくんだ。


「失礼ね。でも諦めたから、魂の輝きが変わったわ。それなら先輩のお古と、ヘレナ用の防虫服をあげるわ。武器はそのノヴェルのハンマーでいいかしら」


 渡されたものを急いで着る。この部屋は、いつ追い出されるのかわからないから。


 どうもこの変な女には嘘をつけない。ついても見破る。


「何度も言うけど、あの娘に関しては期待しては駄目よ」


 わかってる。あいつは私に酷い目に合わされた形で終わってる。


 そのあと咲夜の事で、私が酷い目に合ったにしても、あの娘には関係ない。


 だってもう彼女自身は死んでいて、いないのだから。


 いまの咲夜は過去の記憶を持ちながら、たまたま別の世界で生きているだけ。


 あの娘にお前のせいだと、文句言うのも筋違いだ。


 私の性格上、自分が辛くなると誰かのせいにしたくなる。


 この転生で私は生まれ変わった事を咲夜に伝えるために、再び荒野へと送り出してもらった。


 貰った武器はクソ重くて、なんの役にも立たない気がした。

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