第十八話 出来レースも気づかない天然女子高生
「待て、やめろ、撃つな!」
あたしはひとまずクサじいに言われたように、全員にダメージを与えて反撃の意志を鈍らせた。
叫んでいたけど、元気アピールされると余計に撃っておこうとなるよね。
女の人達、めっちゃ泣いてるんだけど······噛みつくのかな?
泣き真似はキモゴブで凝りたし、仕留めておいた方がいいかな。
(先に目の届く範囲にまとめるのだ。そして全員の視線の動きを見よ)
嘘をついたり、背後に援軍が来たりするのがわかるみたい。
便利だけどエラじい、どんな人生を送ってきたのか気になったよ。
あたしが指示すると冒険者は弱ったふりをして、移動し目潰しを投げつけて来た。
{毒も混じっとる。風上に避け、風の弾丸で奴らの方へ流すのじゃ}
目潰しはあたしの近くの地面で爆発して、もうもうと立ち込める煙に毒が混じっていた。
「バァカ、こちとら銀級冒険者だぜ。いい気になるなよ頭の悪い小娘が!」
騙したんだ、ムカつく。二度もバカにされて凄く悔しい。
(ガハハッ、目を見ろと言ったであろう。銀級ともなると、しぶとい。お主の目を引くために、女が泣いたのだよ)
むぅ、エラじいが先に目の届く所に移動させろって言ったのに。
あの時に、銀級冒険者達は薬で傷を回復させていたみたいね。
[事象に対して、何を拾い、どれを捨てるかは自由である証だな]
ヘンじいが意味のない説明をもっともらしく話していた。
銀級冒険者がなんだかわからない。ただモブ男達みたいな連中に騙されたのが悔しい。
頭はおかしいけれど、あの女の言うことは正しかったね。
躊躇ったら駄目だ。バカにされて逃げられたし。
{うぅむ、想像以上に手強いのう}
あ〜っ、なんかまたあたしに内緒でおじじ達が企んでる。
冒険者達に逃げられたので、町が近いのかどうかもわからなかったよ。
今日はもう探索止めて、ご飯食べてふて寝してやる。
あたしはいつものように、魔本を開くのに適した場所を探した。
◆
「話しが違うじゃないか」
魔銃で撃たれたはずの冒険者達が口々に文句を言う。
「人が姿を見せれば騙されるかもしれないから、注意してあげてね、そう伝えたはずよ」
冒険者は追加の薬を受け取ると、傷口を洗い、回復薬を振りまく。
冒険者達はとある錬生術師の少女に絡み、返り討ちにあった。
目を覚ますと、知らない床に眠り、叩き起こされたのだ。
とある少女に冒険者や人族の恐さを教えて欲しいと依頼された。
「約束は果たした。俺達をロブルタへ戻せよ。それと子供は解放してもらう」
本当に怖いのはここだぁ〜、と叫びたい冒険者達であった。
人質を取られ止むなく言う事を聞いていただけだったのだ。
死なない限りは、錬生術師の良く効く薬で治る。痛いけど。
報酬は赤ん坊のためのかみの御召物だ。繰り返し使えて、清潔さを保つ。
色が変わったら新しいものと取り替えてもらえるのだ。
彼女の独自開発の品なので、ヴィロノーラ商会でも取り扱いのない逸品なのだ。
かつての街の冒険者達も、いまや子持ちのお父さんお母さん。
子を思う気持ちがわかるので、一役買って出てくれたのだ。
咲夜は何も知らない。自分がこの世界を安全に生きていく為の訓練を、今受けていることを。
そして冒険者達も、かみの御召物が何故か黒なのかが謎だった。
······人質という名の入院で預けられた母子共は、無事に解放された。