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第十七話 キモゴブと変わらなかった

 生活環境は変わったけれど、相変わらず荒野をさまようあたし。


 ねぇ、人族とかの町が近くにあるんじゃなかったの?


(可能性の問題だな。あるのは確かじゃが、近いとは限らんわけだ)


 なによ、その詐欺みたいな屁理屈。あたしはバカだけど、誤魔化してるのはわかるんだから。


{ふぉっふぉっふぉっ、ゴブリンの出現、狼の魔物の感じから冒険者が依頼を受けて調査に来ているかもしれんぞい}


 えっ、それって近くに町がないってことよね。


(そもそもお主は町へ行く必要がないだろうが)


 エラじい、わかってないよ。おじじ達と頭の中でやり取りしてるだけだと、鬱になりそうなのよ。


[ふむ、新鮮な空気を吸うと脳が活性化されるというからな]


 ヘンじい、それってもしかして自虐ギャグのつもり?


 急に気を遣って会話にしようとしたって、おじじ達はおじじだから鮮度が足りないのわかってるんだね。


(なにおぅ、わしはまだまだ若いわい)


{喧嘩しとる場合ではないぞい。ご希望の冒険者達が近づいておるわい}


 あたしは目つきは悪いかもだけど、視力は良い方なのよね。


 なのに、おじじ達の方が見つけるの早いのが謎だ。


(がはは〜っ、鍛え方が違うんじゃ)


[ふむ。あの娘の探索用の瞳や全開索敵なるものは、障害があろうと百M先を見通すようだ]


 エラじいが威張っていたけど、ヘンじいがズルしているのを暴露したよ。


 音量下げてないのに、エラじいがぐぬッた。へへんだ。


{理屈はわからんが、わしらの声を上げ下げするのも、あの娘の魔道具のようじゃの}


 頭がおかしい(ひと)だけど、幽霊とか、心の声みたいなおじじ達にまで道具を使えるとか、天才なのかな?


(あれを誉めるのは不本意だが、魔法ありきであっても、そんな真似は難しいのだ)


 馬鹿な話しをしている間に、冒険者という人達が近づいて来ていた。


{隠れて置くのが無難じゃな。お前さん一人だと、襲われるかもしれん}


 キモゴブ退治するからって、味方なわけでもないそうだ。


{町も、必ずしも安全なわけじゃないぞい。流れものにはとくにのう}


 クサじいが昔住んでいた町は海賊のならずものというのがいる町だったとか。


 なにそれ、クサじいじつはワルじいだったの?


{違うわい。故あって、任務についていただけじゃよ}


 クサじい、実は潜入捜査とかするイケおじだったの?


 クサじいの姿からは想像出来ないんだけど。


(話しは後にして、岩陰の窪みに潜め。銀級に鋼級、そこそこの冒険者達だな)


 エラじいに言わせると、キモゴブ百体相手にするくらいは強いはず、らしい。 


「まったく、子供のお使いのような任務を命じられるならBランクに上げるんじゃなかったな」


「まったくだ。リーダーが銀級になるから悪い」


「つまらん役目でも、報酬割り増しになるんだ。稼ぎたきゃ、また上陸者(おのぼりさん)から頂くまでさ」


 ゲラゲラ笑うむさいおっさんみたいな人達と、下品な女達。


{うむ、最悪じゃな。あれは新人狩りの類の冒険者じゃ}


 クサじいは冒険者だったし、ちょいワルおやじだったので危険な冒険者はすぐわかるらしい。


[ギルドによっては事の善悪よりも技量や実績を重視する所もある]


 ヘンじいもギルドマスターだったからこういう輩に苦労したみたいね。


(気付かないふりをして、囲むつもりだな)


 はぁ〜? 隠れろって、言っておいて今更なによ、バカエラじいめ。


(いいから銃を盾側に持っておけ。いまのお主なら魔法はろくに効かぬし、掴まっても振りほどける)


 むぅ、なんかあたしがまるでクマかゴリラみたいじゃん。


 エラじいの読み通り、五人の冒険者と、あとから来た二人の冒険者が転がる大岩ごと囲んだ。


 そしてあたしが岩を背に逃げられないように横と正面に移動して詰めた。


(話しは通じないと思え。人の顔をしたゴブリンなど珍しくないからな)


 そう言われると、ニヤつく男女が信吾と聖奈に見えて来た。


 よし、やろう。


 数で負けてるので、先手必勝だ。話し合い? ここは異世界なんだよね。


 仲良くなるためにお手々を差し出したらガブッて食べられちゃうのよ。


(がっはは、あれはウケたな。ゴブリンの浅知恵に引っかかるバカを久しぶりに見たわい)


 うギィ〜〜、どうせ撃つならエラじいの口に撃ち込んでやりたい。


{お前さんがアホなのは、まあ冗談かと思っていたんじゃがのぅ}


 二人が妙に優しくなったのって、そのせいかも。キモゴブより頭が悪いと思って、憐れんでる。


 バンッ!


 ちょっと、怒りで魔力を乗せすぎた魔銃の弾が、正面の弓使いらしき冒険者の腕を吹き飛ばす。


「こいつ!?」


 あたしはバカだけど、悪意にはおかげさまで敏感なのよ。


 だから遊ぶつもりで、わざわざ教えてくれた事には感謝するよ。


 ありがたく受け取って頂戴。


 バンッ!


 鉛弾ではないけれど、前に見た映画のシーンみたいだよね。


 二発目で、魔法を使う女の一人を撃ち、あたしは向かって来る銀級のリーダーへ飛び込んだ。


 思わぬ動きに間合いを掴み損ね、銀級リーダーの大剣は力なく振り降ろされる。


(そうじゃ。力と速度の乗らぬと、あれは威力が出んのだ)


 切れ味のない根本を手甲の盾で弾くと、銀級リーダーがバランスを失いよろめく。


 バンッ!


 すかさずあたしは装備の薄い無防備な脇腹へ魔銃を撃つ。


「ま、待て。許してくれ、降参だ!」


 残りの冒険者もきっちり撃った所で、銀級リーダーから泣きが入った。


 許すも何も、お互い食べようとしあったようなものでしょ?

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