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第十六話 色々と叱られたらしいね

 魔本がどういう仕組みなのか、あたしにはいまいちわからない。


 とりあえず、この(ひと)はあたしの魔本へと自由にやって来れるみたいね。


「何しに来たのか聞きたいこといっぱいあるけどさ、まずなんであたしはこんな目に合ってるのさ」


 いまのあたしなら、この(ひと)に余裕で勝てそう。


 そう思ったけれど······ゾクッと背筋が凍る思いを感じた。


 あたしの首を狙う気配だ。危ない予感がしたので止めておくのが正解だ。


「町へ行くのに、あんまりみずほらしい格好だと、よけいな輩に絡まれるのよね」


 用意して置いておいた服装は魔物に対してのみの装備品ばかりだったそうだ。


「これ、先輩から奪って来たから使いなさいな。それと貴女用にフレミールの、生鱗を貰ったからさ。竜人みたいになるけど、これは着て損はないわよ」


 凄く高そうな黒い下着のセットと、紅い色の水着みたいな服を渡された。


「なんか、凄くいい香りだよ」


(排世物を浄化し、魔晶石化するものだな。今日あったみたいに慌てる必要がなくなるぞ)


 エラじいが熱く語る。恥ずかしいから言わないでよね。


 でもさ、黒いパンツについて、おじじが熱弁を振るう姿を想像してよ――――


 ――――ふつうにキモい変態だよね。エラじいが騒いでうっさいからボリュームを下げた。


 聞きたくないのに、エラじいはうるさいし、聞きたい事あるのに、この(ひと)は聞く耳がないみたい。


 あっ、でも服は嬉しい。


 サイズも合うし、一応あたしの事は考えてくれていたみたい。虫除けも助かるものね。


 いつの間にサイズを調べたんだろうか、それは謎なんだけどさ。


 なんかこの人、チンピラやヤンキーみたいなのに絡まれてばかりらしい。


 人の事は言えないけど、目つきが悪いのと、思ったことをすぐ口走るからだよ。 


「その手袋も気にいったのかしら」


 狼のせいで汚れたはずが、血も涎も取れてた。


「この手袋の効果であたしの封印が解かれるって」


「そうね。悪く言うつもりはないのよ? ただね、力を封印するとか、ご両親の考えが甘いのよ。力がないとね、小バカにされるから駄目なのよ」


 なんか勝手にぐぬぬっで怒りだした。


「その火竜の竜鱗色に合わせた手甲を上げるわ。片方には防御を、もう片方にはナイフを仕込みましょう」


 殴る時にもちろん拳が痛まないように処置もしてくれた。


「魔力調整の補助や制御をおじじ達にやらせるから、貴女は遠慮なく気にいらないやつをぶっ飛ばしていいわ」


 なかなか話しが早い。おじじ達が(無理じゃぁ〜){無理だわい}[無謀と無策は別だ]と悲鳴をあげていた。


 筋力に関して、こだわりがあるらしい。ようやくおじじ達が役に立ちそうだよ。


「それとね貴女、自炊出来なそうよね?」


 うっ、それもすぐバレた。なんでわかるのかな。


「朝ご飯と夕ご飯は、ヘレナが用意するから要望があれば、おじじ達にに言って。あっ、でも高いのは無理よ。あくまで庶民的なものよ」


 庶民的なものがわからないけれど、カレーとかハンバーグはあるのかな。


「異界の食べ物の名前ね。もちろんあるわよ」


 モブ男達の情報と違った。あたしの世界の料理を知ると崇めるほど驚かれるはずなのに。


「それは物語だからよ。そもそも薬の調合だって、いろんな素材を組み合わせるもの」


 名前がないだけで、お肉だって部位ごとに切り分けるし、食べやすく工夫するそうだ。


 美味しいご飯を食べられるだけで、元気が出る。


「······」


 いつの間にか、あたしは自分の魔本の入り口にいた。


[差し替えたのだな。便利なものだ]


 ヘンじいが自分だけ納得してウンウンと頷いていた。


 何があったのか知らないけれど、少しまともな話しが出来て、あたしはホッとした。


 おじじ達はうるさいだけで、実はあまり会話になってないんだもん。


 お喋りしたいわけじゃないけど、誰かと話したいお年頃なの。

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