第十五話 銃よりもこわいもの
だいぶ歩いて来たはずなんだけど、出会うのはキモゴブばかりで人がいない。
一度キモゴブをたおした時に狼の群れが来た。
キモゴブより速いし、多いし、臭い。ワンコって野生だと獣の匂いが凄いんだ。
(左手で牽制の魔銃を持つのだ。初撃であいつらは実力を見極める。飛び掛かるものは当てやすいものだ)
ハズレても問題ないから、攻撃しておけって。
――――バンッ!バンッ!
連続で放たれた魔銃の弾丸は正面の狼を戦闘不能にした。
あたしはすかさず背後から狙う狼の跳躍に合わせ、魔銃を撃ち込む。
――――バンッ!
[魔銃本体に、魔法誘導がかかっているのだな]
ヘンじい、今はアドバイス以外は黙っててっての!
キモゴブのように怯んでくれない。
{集団で狩りをするものは、役割分担を行うものじゃ。人も魔物ものぅ}
動き回って撹乱する役、飛び掛かる役、突進する役、吠えて威嚇する役、様子を観察して指示する役と、群れの中での役割が決まっているみたい。
動く役回りは、若く、素早く、強い。
鋭い爪を持つ前足で引っ掛け、あたしを引き摺り倒そうとして来たり、動きの鈍い間に、噛み付いて来たりした。
(ほぉ、お主の力に怯んだようだぞ)
武器には怯えていなかったのに、噛みついた狼の頭をぶん殴って砕いたらビビっみたい。
魔銃とどう違うのか、狼の考えってわからない。
原始的な恐怖ってやつ?
おじじ達も、おおよそしかわからないみたいだ。
[ふむ。武器に対して勇敢なのは対応に慣れた群れということか]
また、ヘンじいがじれったい言い方をした。
{うむ、武器を知るという事は、戦った事があるからじゃろうて}
(人族とは限らんが、武器を使うもの達がいる近くに来た証だな)
期待は持てないけれど、キモゴブじゃなければいい。
せめて話が通じて襲って来ないなら、この際魔物でもいいから。
くたびれて動けなくなる前に、魔本を隠せる場所を探す。
{荒れた地には、魔力溜まりがあったり、自然結界の生まれるところもあるものじゃ}
[住まうものには荒れ地でも、魔力の恩恵を得るものには恵みの地でもあるという。あの娘の一族もそうだったのだろう]
なんのことかわからないけど、ヘンじいも安全な場所を探すのを手伝ってよね。
ようやく隠せそうな場所を見つけた。
魔本を開いて岩の隙間に隠す。念のために転がっている岩を拾い隙間を埋める。
(良い心掛けだな。探索するものがいる可能性がある時はそうする方が無難じゃ)
エラじいが褒めて来た。なんか、子供をあやすようだけど、照れているらしい。
魔本の中に戻ると、あの女がいた。あれ、なんで?
あたしが放り出された時のままの、魔法の釜のある部屋。
家具も簡素なソファなど飾り気がまったくない部屋。
匂いは、前よりマシになっていたけれど、別な臭い香りがしたから、あたしだけが臭かったわけじゃないんだよね。