第十四話 ヤるかヤラれるかはお互い様
――――――――バスッ‼
怖くなって夢中で放たれたあたしの拳は、キモゴブの肩を殴りにつけた。
鈍い音とともに、あたしより小さな身体のキモゴブは吹っ飛ぶ。
(目を瞑って殴るから仕留めきれんのだ、バカモンが)
{魔力を無遠慮に出し過ぎじゃ。急所に正確に最小限じゃよ}
[個体差による体重差は如何ともし難いものだが、魔力は別ものだろう]
おじじ達がうるさいし、魔晶石というのがなくなると、本の力を使えなくなるという。
だからキモゴブを倒して魔晶石を奪う。たったそれだけの為にって思う。
でもさ好きだ、嫌いっだってだけで突き落とされたんだから、生きてくために仕方ない。
······なんて割り切れないっていってるのに!
殴った拳は手袋のおかげで痛くない。でも肉の感触と、殴って殺した感触が気持ち悪い。
(バカモンが。泣きたいのはゴブリン達じゃ)
エラじいが当たり前の事をいう。そうさせているのは誰よ。
まあキモゴブも、あたしを見るなり襲ってくるから最初の時より罪悪感はない。
まして、キモゴブは露骨にあたしを餌か性欲のはけ口と見てくるから、キモいどころじゃない。
あれ、なんか聖奈よりもキモゴブが信吾に見えて来たよ。
どうしてあんなに好きで聖奈と喧嘩までする羽目になったのに、殴りたくなるんだろ。
{かぁ~っ、野垂れ死にたくないならやるしかないのじゃぞ}
つい考え事をしてしまった。クサじいに吠えられる。
それにしてもだよ、クサじいまで根性論とかムカつく。
偉い召喚師なら替わりに戦う強いパートナーを呼ぶ魔法教えてよ。
{お前さんのへっぽこ魔力じゃ、ゴブリン一体制御も難しいわい}
じゃあ、なんのために術師二人もいるのよって言いたい。
倒れているキモゴブから魔晶石を吸収する。
なんかこの手袋は殴った時にも魔力を奪うんだって。
(ゴブリン相手に魔力を使うよりも、効率よく回収するのが望ましいな)
もう、あれね。小さいキモゴブは聖奈で大きいのは信吾と思って、ぶちのめしていこう。
{魔力配分の切り替えを忘れるでないぞ}
魔法の事はともかく、クサじいは魔法使いなのに、戦いに関してはエラじいより細かくてうるさい。
(がははっ、何事も備えが大事よ)
{うむ。いきなり放り出されて困るより、知っておくとまた違ったじゃろう?}
[気まぐれの前触れというものだな]
またおじじ達が、好き勝手に分かったような事を言う。
待って、ヘンじいがまた変な思わせぶりな事を言わなかった?
ずっとキモゴブ狩りをするのは嫌だけど、気まぐれでまたどこか知らない所に飛ばされるの??