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第十二話 あたしは元気だよ、だから心配しないでね


 ――――――――・・・・・・・・


 ······ふっと何かが見ている気配がした。


 俺はいつの間にか眠っていたみたいだ。


 俺とサンドラは以前住んでいたアパートの大家の紹介で、もう少しマシなアパートへと移っていた。


 あれから十七年、娘も生まれ幸せな日々が続いていたというのに······。


 昨晩、修学旅行先の宿泊施設から連絡が入り、娘の咲夜が行方不明になったと聞かされたのだ。


 ――――――――目の前が真っ暗になった。なんで咲夜が? どうしたら助けられる?


 慌てる俺の肩に、そっと手が置かれた。


「落ち着きなよ、ガウツ。いまレーナに連絡を取ってるから」


 嫁のサンドラは冷静だった。彼女は俺をガウツと呼ぶ。その名で呼ぶのは彼女だけだ。


 娘の前の咲夜の前では、お父さん、お母さんと呼ぶようになったから久しぶりにその名を聞いた。


 彼女は信じられないかもしれないが異世界の人間だ。


 言われなければ、金髪の青い目をした海外の人間にしか見えない。


 その前に、異世界の人間と信じるまでひと悶着あったわけだが。


 まあ、俺の事はいい。今は娘の咲夜の身が心配だ。何か事件に巻き込まれたに違いない。


 サンドラが戻って来た。剛毅な彼女の表情から安堵の色が浮かぶ。


「友達とのトラブルがあったみたいだよ。その関係であたしのいた世界にいるって」


 俺よりサンドラに性格が似た娘だけあって、少々の困難も乗り越えてくれると信じるしかない。


 何もしてやれない事がここまでもどかしいとは······。


――――――――あたしは大丈夫だよ、お父さん、お母さん。必ず戻ってみせるから、心配しないで待ってて――――――――



◇ ◇ ◇


 ······


 ······


 ·····お父さん、お母さん······


 ――――――――ここは······お家じゃない、か。


 飾り気のない石造りの天井。あたしの意識の目覚めに合わせるかのように、薄暗い室内を柔らかな光が灯す。


(ようやく目覚めおったか)


{魔力酔いは慣れじゃよ。早う顔を洗うとよいぞい}


[魔力の波長に反応するのだな]


 ······最悪だ。優しい両親に会って、余韻に浸りたかったのに。


 エラじいの大きな声で、夢の記憶が全部消し飛んだよ。


 おじじ達にはデリカシーっていうものから教えないと駄目ね。


 おじじだし、お化けみたいだし、教えたとして成長するのかしら?


 顔を洗って、朝食になるものをさがす。


(そこの棚に焼き菓子のようなものがあるのがわかるか)


 あたしはエラじいの言う棚を見た。ガラスで出来た容器がある。


 そこには穀物を潰して固めたような、お菓子のようなものが入っていた。


{それをミルクに溶かして、スプーンで崩しながら食べるのじゃ}


 シリアルのようなものね。お茶もあるし、食べ物や飲み物は悪くないね。


(もっとたらふく食わせ、肉をつけよ)


{甘やかし過ぎじゃと思うがの}


 荒野への放り出し方と、この設備を見るとバカなあたしには意図がサッパリわからない。


 おじじ同士の意見も違うみたい。とりあえず、エラじいが一番エロじいなのはわかったよ。


 また騒ぐとうるさいから、エラじいの音量は下げておく。


[ふむ。運命は定まるのではなく、巡るということか]


 ヘンじいだけは相変わらずわからないことを呟いていた。


 

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