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第一話 本当の顔は最期にわかるものね

 あたしは、咲夜(さや)。公立の高校に通う女子高生。いきなりだけど聞いてほしい。


 あたしは親友と思っていた聖奈(みな)に裏切られたんだ。


 同じ高校に入っても、あの娘とは一緒につるんでいたのに。


 あたしが初めて良いなぁって男の子が出来て相談だってしたの。


 聖奈(みな)も応援する〜って言ってたのにさ。


 あいつはあたしよりも先に信吾に告ってた。


 信吾は同級生でカッコいいやつなんだ。


「私と信吾付き合うことになったよ」


 これが、満面の笑みって言うの?


 聖奈(みな)のやつマジあり得ないんだけど。


 小学校からの幼なじみの親友で、家も隣同士だってのに、そういう真似する?


 よくヘラヘラ報告出来るよ。聖奈(みな)のやつ謝りもしないし、ずっと私もいいなって思っていたの〜、とかほざくわけ。


 ······嘘に決まってるよ。


 聖奈(みな)は男子にモテる。ゆるフワな茶色のボブ、クリッとした目。


 小柄だけど、いつもニコニコしていてあたりが柔らかいから可愛いらしい小動物のようなんだよね。


 それなのに頭が良いいから、ギャップにやられるんだってさ。


 あたしは黒髪()()のストレート。背は男子並みに高いし、頭の出来はふつう以下。


 ――――――――クラスメイトには面と向かって、残念美人とか言われてるよ。


 聖奈(みな)と違ってお喋りも苦手。でも運動神経だけは、あの娘より上かな。 


 ·····だから、あたしが告っても、そりゃ振られたかもしれないよ?


 それでもさ告る前に、あんたが取らなくてもいいじゃん。つか、あたしより先に好きでもない男に告って、見せつけたいだけでしょ。


 そうだよ、信吾と付き合い出してから、急にあたしと聖奈(みな)との仲はギスギスするようになった。こっちが一方的に害を受けてるけどさ。


 ······なんかいつの間にかあたしが、聖奈(みな)をいじめた風にされてる。おかしいでしょ。


 幼なじみだから、親友だから許してあげてるんだってさ。お優しいよね、聖奈(みな)はさ。


 いくらあたしが口下手のバカでも、あんたが腹グロ〜く自分を持ち上げるために、うまくあたしを下げながら庇ってるのはわかるよ。


 楽しみだった修学旅行も、二人がベタベタいちゃつくせいで最悪だったよ。


 あいつらわざと、見せつけるように、あたしや七菜子、あとモブ男二人に見せつけていたっけ。


 班決めはあたしと聖奈(みな)がこうなる前に決めた事だから、今更変えられなかった。


 ······本当はこの修学旅行中に信吾に告るつもりだったから、余計にムカつくし、悔しいのかもしれない。


 なんだ、あたしって聖奈(みな)の事が嫌いだったんじゃん。


 そう思った瞬間かな。見た目だけ格好いい信吾の事が、どうでもよく見えたのは。だらしない信吾の顔を見て醒めたのもあるかな。


 いつの間にか、聖奈(みな)と趣味を合わせて、嫌われないようにして来たけどさ。


 バカは馬鹿なりに頑張って、親友の機嫌を壊さないようについていこうとした。虚勢張って、調子に乗って、あいつの獲物に手を出したってことだ。


 そうだよね、あたしと信吾がくっつくと、ちっこいあんたじゃ勝てない美男美女のカップル様だもん。


 あぁ〜ぁ、あたしどんどん嫌なやつになるよ。聖奈(みな)が珍しくクリッとした目を見開いて、あたしを睨んでるじゃん。


 あんたが目立つには、背の高く目立つ信吾は必須アイテム。あたしといた時のように、可愛らしい自分を引き立てる役に立つし、さぞ自慢出来るだろうね。


 ······って、口に出して言っちゃったよ。まだ修学旅行中だってのに、あんまりにもしつこいからさぁ。


 あたしが聖奈(みな)に興味を失い冷めた様子を見せるのは、それはそれで馬鹿にされたと感じるらしくて、気にいらなかったみたいだね。


 ふふ、あたしも口下手なりに、本音で話すならしっかり喋れるじゃん。


 修学旅行先は観光客も多い京都。人混みの中で、ギャアギャア言う話しでもない。


 信吾と七菜子とモブ男達がやって来たのもあって、一旦あたしと聖奈(みな)は話しを止める。


 団体行動の間は一切口を聞かなかた。あの娘が甘えるように信吾に話しかけるのを聞かされ続け、心底うんざりした。


 観光名所の清水寺に来た時は、二人のイチャラブ姿も忘れて、少しだけテンションが上がる。七菜子やモブ男達も同じ気持ちだったようだ。


 ウザい二人を置いて彼らは先に行く。あたしもついて行こうとした時だった。


 あたしの前で聖奈(みな)が清水寺の舞台から飛び降りようとした――――



 ――――やられた。聖奈(みな)は、本当に落ちるつもりはなかった。


 ただ、条件反射であたしの身体が勝手に止めに動いてしまった。それを狙ったのが一瞬でわかった。


 あの身体のどこにそんな力があったのだろう。そんな疑問と共に、あたしは聖奈(みな)に引っ張られるように、舞台から身体を投げ出された。


 落ちるあたしの目に残るのは、落ちずに済んだ聖奈(みな)の、気持ち悪い笑顔だけだった。


 あいつ運動は得意じゃないけれど、あたしの腕を引っ張るのは慣れていたっけね。


 ······最後にあんたの本当の顔が見れて良かったよ。


 あたしもあんな風に、不気味な顔をしてあいつには映っていたのかな。


 頭から落ちてゆくあたしは、そんなことしか考えられなかった······


 逃げた神々と迎撃魔王シリーズの外伝になります。一話あたり、一千〜二千文字になるように投稿予定です。

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