プロローグ
これは小説のようであって小説ではない、私自身の備忘録的な物語である。
と言ってしまうと、チラシの裏や昨今では動画配信の方が適した場所であるが、如何せん私は喋るのも苦手、滑舌も悪く、とても人様にお見せできる容姿でもない。
録画した己の顔と声を見聞きしながら何時間も動画編集するというのは、私にとってはある意味拷問である。
しかし、私にもあるそれなりの自己顕示欲を満たすため、また日々の写真活動を、忘れっぽい私自身が忘れぬために記して行きい次第だ。
幸いな事に、よく他人からは文字起こしが上手だと褒められる。
これを読む方々の、ほんの少しの暇潰し程度にもなれば幸いだ。
さて、私がカメラに触れたのは……文字通り触れた、と言うのであれば、まだ幼い頃だ。
祖父が大切にしていたニコンF2を手に、音楽に合わせて踊っている写真が、未だに実家のアルバムに眠っている。
自らの意思でカメラを手にしたのは、大学生の頃だ。
blackbird, fly。トイカメラでありながら二眼レフという、その見た目もレトロモダンなカメラだ。
デジタルカメラが台頭してきた時代に、わざわざ35mmのフィルムカメラを選んだのだ。
トイカメラらしい淡い写り、多重露光で作る幻想的な一枚は、フィルムだからこそ実現できる世界。
何より、昨今のデジタルカメラでは味わえない現像されるまでのワクワク感は、何物にも変え難い時間だ。
ただ、金欠という現実が私に突き刺さるまで、時間はそう掛からなかった。
フィルム代に現像代。正直バイト学生にはなかなかに痛い出費である。
加えて、就活や卒論も加わると、なかなか現像に向かう時間もない。
かくして、哀れなblackbird, flyは永き眠りに就ことになる。
晴れて社会人となった冬、友人の結婚式にかこつけて購入したニコンD5000が、ある意味では私の写真活動の始まりであろう。
そこからフルサイズのD750にステップアップし、小型軽量のD5600に浮気をし、今はZ6をメインに使う立派なニコンジャンキーである。
私はプロのカメラマンではない。
私の収入源はあくまでも会社勤めによるサラリーだけであり、休日にカメラ片手にふらりと撮り歩く趣味の活動だ。
そんな趣味の活動を、私は格好良く聞こえる「サンデーフォトグラファー」と称している。