第2話
歴史の授業中、眠気の我慢が限界に達したおれは気分転換に教科書の偉人にヒゲを生やしていた。
千年前、まだこの世界に魔物がいた時代に世界を救った英雄”ゲニポス”が今日の授業内容だった。
我ながら面白い落書きが出来たと隣の席のヒロシに見せる。
その渾身の出来栄えにヒロシは爆笑してしまい先生に注意される。
「おい!今日の内容は特に重要でテストに出るからしっかり聞いてろよ」
おれは過去に金玉を犠牲に世界を救った漢の英雄伝という本を読んだことがあるから今日の授業の内容は大体わかる。
魔王サダ子との戦いにて自らの金玉を爆破させ世界を救い、その後国王になるも金玉の爆破により自分の子供を持てなかったゲニポスは養子も貰わずに1代でキンタマ王国の王政を終わらせて時代は現代へと移行し始めた。
その時、初代大統領となったデカマーラは時代は学問だと思い世界に教育機関を設立した。
そこから時代は一気に進んで今に至ると。
うとうとしていると授業の終わりのチャイムが鳴った。
「お前ら高校3年生だからそろそろ進路を考えろよ、特に大事な授業で寝ているタケシ!お前は歴史の成績は良いが油断してると痛い目に遭うからな」
別に油断はしてない、計算力は確かにちょっと弱いが自慢の暗記力でおれは世界で一番と言われているニコタマ大学に既に模試で全教科A判定を出している。
4月から8月まではあっという間でおれは今日はヒロシとオープンキャンパスの待ち合わせをしていた。
お互い本命はニコタマ大学を目指しているが一応ヒロシの頼みで最難関私立としてサダ子の呪い大学も見てみようという話になった。
大学の最寄りで待ち合わせだったがヒロシから金玉チャットで寝坊して2時間ほど遅れると連絡が来たので先に向かうことにした。
厳格な歴史の感じる門を前に少しの感動と本命はニコタマ大学であるという決心の中、学内に一歩足を踏み入れた。
何か空気の色が変わる感じがした。
今までいた街とは違いここは学問で囲まれた一つの国なのではないかと。
新鮮な感情で周りを見渡していると隣にもキョロキョロしている顔の見知った女性がいた。
「よう、グングニルミチコも来てたのか」
今年の春から同じ予備校に通っていて、その時からおれはグングニルミチコに片想いをしていた。
「あ、タケシくんも来てたんだね。なんか威厳があってワクワクするよねー。1人で来たの?」
「クラスメイトと一緒に来る予定だったけどそいつが寝坊しちゃってね」
「じゃあ一緒に見ようよ!」
おれはさっきまでヒロシと友達を辞めとうと思っていたが彼は今おれの中の英雄ゲニポスだ。
”恋する”と”濃い汁”は似ている。
今おれは金玉に強いエネルギーを感じる。
まさに1万馬力。
夜のゲニポスがおれの金玉を刺激する。
これがおれの1万濃度の禁止魔法だ!
突然、おれはテンションが上がってしまって必死に平然を装う。
「ちょうどお昼だしまずは学食でもどう?」
グングニルミチコはキラキラした顔で頷いた。
少し並木通りを歩いた先に学食はあった。
『レストラン〜ゴールデンボーイ〜』
「私立大学の学食はもはや高級レストランみたいだな」
「私ねこんな所でランチしてみたかったの!」
メニュー表には大きく季節のオススメランチコース3000円とあって2人ともそれを頼んだ。
少し待っていると、お洒落な初老の店員が渋い笑顔で料理を運んで来た。
「お待たせいたしました。こちらは前菜のウンコッコボボスのペニス〜キンタマを添えて〜でございます」
「わーーーすごい。私ねウンコッコボボス食べるの初めて!」
とんでもない異臭が漂う。
「おれも初めてだ、ウンコッコボボスっていうと元々は魔物を改良して家畜にしたんだよな」
2人とも、丁寧にフォークでウンコッコボボスのペニスを刺して口に運ぶ。
「おえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「ゴボボボボボッッッッッッ」
想像を絶する臭さ、口触りの気持ち悪さ、そして味もちゃんとそのまま臭い。
2人は涙を流しながらペニスを食べるのを諦め次はキンタマを口に入れた。
「まずい…」
「ちょっと臭くて苦いね…」
こちらは無理すれば食べれたが2人とも片金しか食べなかった。
さっきの金玉が垂れてそうな初老の店員が渋い笑顔で料理を運んで来た。
「お待たせいたしました。こちらはメインディッシュのゲボボギヌゴボのペニスのステーキとウンコッコボボスのペニスのテリーヌを添えてでございます」
前菜以上の強烈な悪臭が漂い、グングニルミチコは突然両手で顔を押さえて号泣し始めた。
気まずい沈黙が20分続き手付かずの料理が片付けられデザートが運ばれてきた。
「お待たせいたしました。こちらはデザートのウンコッコボボスのペニスのフラペチーノでございます」
グングニルミチコは嗚咽と共に泣きながら過呼吸になり、しかし一口飲んでみたものの瞬時に吐き出して泣き続けた。
割り勘で会計を済ましレストランを出た。
「なんか、3000円無駄にしちゃったね」
グングニルミチコは落ち込んでいた。
「コースってなんかその季節の食材が続く時あるよな。しょうがないよ」
「てか、ペニスってなんだよ。コースメニューはシェフのオススメで全部くっせぇペニスって潰すぞこの店。テリーヌを添えんなや、フラペチーノにすんなや。」
(あれ、グングニルミチコってこんな口悪いんだ)
「ねえ、タケシくん。なんか萎えたからこのままラブホ行かない?」
「え?え?ん?今ラブホって言った?」
「うん、もうなんかいいやー。一緒にスッキリしよ!臭くないペニス食べさせてよ」
そこからは凄かった。
グングニルミチコのテクニックは世界クラス、おれは快感と共に果てて寝てしまった。
少し経ち、1人おれは目を覚ますとある事に気づいた。
「ない、おれの金玉がなくなっている!!!」
私の名はグングニルミチコ、庶民の家で産まれ育ち私は絶対に金持ちになりたいと思い狂った様に勉強してきたわ。
けど地頭が悪い私は国立なんて無理でそれでも食らいついて最難関私立を目指していたわ。
その時、同じ予備校のタケシのアビリティを見てしまったの。
あっアビリティって現代じゃほとんど人が気にしてないわ、だってゴブリンに対してダメージ+20%とか意味ないでしょ?中世の戦ってた時代じゃないもの。
たまに素早さの+アビリティを持った人が短距離で活躍したりくらいね。
それで私のアビリティは『人のアビリティを見れる』だったの。
ある日、気まぐれに模試の成績1位のタケシのアビリティを見てみたの。
固有アビリティ 『スライムに対してダメージ+10%』
うわぁ、特に雑魚い…産まれたのがこの時代で良かったわねと思ったわ。
けど、目線を下にしたら驚いたわ。
右の金玉に『暗記力100倍』、左の金玉に『暗記力100倍』のアビリティが付いていたんだもの。
「奪ってやる」その時に決意したわ。
そして無邪気な少女のフリをして彼に接近することを試みたわ。
オープンキャンパスの日は本当に偶然の状況で神からのチャンスだと思ったの。
けど、その日のランチがとてつもなく不味すぎてそれでも良い子を演じなくちゃいけなくて涙が止まらなかったわ。
シンプルに人生で食べた事もない高級ランチを楽しみにしていたのもあるわね。
しかも、会計は割り勘じゃない?いや、別にそれは良いのよ。
それで、ラブホに行って私のテクニックで果てさせて寝たところに私の計画のためにずっと持ち歩いていた麻酔薬を玉袋に注射してカッターで破り金玉を取り出してそのまま食べたて家に帰ったわ。
「もしもし、警察ですか?はい、事件です。金玉を盗まれました。それと、すみません、玉袋が痛むので救急車もお願いします」
おれはラブホを出て即通報した。
グングニルミチコは即逮捕され禁錮10年の罪が言い渡された。
そしてアビリティで記憶した分が消え一気に学力が下がったおれはニコタマ大学より遥か下の私立アジアニコタマ学院大学に補欠の繰り上げ合格がやっとだった。
新しい春の香りが甘く柔らかな風にのって季節を変えてゆく。
Fラン大学生になったおれは入学式をサボりそのままパチンコ店に向かった。
親に一人暮らしの資金を全部出してもらい仕送りも月10万となっている。
その10万を増やそうと歴史上の人物がテーマのパチンコのBRサダ子という台に座った。
ギャンブルは初めてだが一人暮らしをしたらやってみようと思っていた。
ただ全く当たらずに1万円が秒で消えていく。
そして次々と2万、3万、4万、5万。
何も当たらずに896回転。
「おかしいだろう!!!400回転に1回当たるって書いてあるだろうがぁぁぁ」
おれは叫びながら台を殴った。
そして10万円が消えかかるときに、台が突然大きな音を鳴らし始めた。
キュイーーーーンキュイーーーーンポポポポポポポポ
左に7右に7が揃った。
隣の全身刺青の入ったオッサンが突然話しかけてきた。
「あんちゃん、さっきから見てたけど良かったな。7テンの赤保留は流石に当たるよ。それにしても1750回転かぁ…」
そして派手な演出と共に真ん中に7が止まり大当たり!!!と表示された。
良かった、良かった、やっと当たったんだ。
サダ子チャレンジ!! ボタンを押してサダ子を召喚せよ。
突然画面にそう表示された、
何もわからずにボタンを押すと画面がヒビが入ったような感じに暗くなって左打ちに戻してくださいと表示された。
当たったんだよな?
ふとオッサンを見ると完全におれから顔を背けている。
結果、おれはこの日10万円全てを失った。
店を出たらもう夕方になっていた。
「おれ、何してるんだろうなぁ」
大学もサボって全財産無くして、計算も暗記も苦手で夢も無くて、そして腹も減った。
おれはパチンコ店の前でボロボロ泣いていた。
その時、隣の席のオッサンがタバコを吸いながら店から出てきた。
「よう、あんちゃん牛丼でも食おうぜ。おれもスっちまったから特盛までだからな」
その優しさにおれは声を出して泣いた。
今思えばこの時に食べた牛丼がおれの人生で1番美味かった食事だった。
あの日、入学式に行っていたらおれの人生はどう変わっていたんだろうか。
まあ少なくとも今よりはマシだと思う。
そう、今に比べたら。
大学を辞め親からの仕送りも止まり途方に暮れていたおれは、ふとあの日の牛丼屋で源さんというオッサンから
「なんか困ったらここに連絡してこい」と金チャのIDを受け取っていた事を思い出す。
源さんに現状を一通り書いて送信するとすぐに返信があった。
「1回20万円の仕事があるんだが、やるか?」
おれは震えた。
しかし、人生もうどうにでもなってくれと思っているおれは、人生の分岐点を大きく変える返信をしてしまった。
「やります」
待ち合わせ場所は東狂の神宿東口のグノアルコスというカフェだった。
先に着いてコーヒーを片手に座っていると源さんがきた。
「やあタケシくん待たせたね」
笑顔だが目が全く笑っていない表情で向かいの席に座った。
「そんなに待ってませんよ、特に用事もないですし」
コーヒーを一口啜り、笑顔すらも消えた表情で語り始めた。
「で、いきなり本題から入るが本当にやるのか?」
「どんな仕事かは、はいと言うまで教えてはくれないんですよね」
「ああ、それも含めての金額だ」
「じゃあ、やります。その為に今日来たんで」
一瞬の長い沈黙と苦いコーヒーの香りを感じた後、源さんはまた口だけに笑顔を作った。
「決まりだ、今から事務所に行くからついて来い」
カフェを出て5分程歩いた所に事務所はあった。
狭く急な階段を上がり2階のドアを開け中に入ると昼なのに薄暗い怪しい雰囲気の部屋に着いた。
中には20代後半くらいの今までに何人か殺めてそうな見た目の男性がパソコンをカチカチといじっていた。
「戻ったぞ、この子が新入りだ」
男性がこちらを見た。
「弱そうな見た目だな、そいつに殺れるのか?まあ源さんが選んだんだから間違いないか」
殺れる?色々覚悟はしてきたがその言葉に心臓が鼓動した。
「じゃあ、説明しよう」
源さんが口を開いた。
「おれたちは国からの依頼で秘密裏にお化け退治をしているゴーストブレイカーだ」
「そして源さんはゴーストと戦える力を持つ異能力者を見つけゴーストを見る”目”を与える事が出来る異能力を持つんだ」
「ちなみにここにいるジンくんは暗黒圧縮という力を持っていて光の無い空間を圧縮しそれを波動弾のようにしてゴーストを狩っている」
は?何を言っているんだ?ゴースト?異能力?それはなんだ?
「ゴーストは夜に現れ、普通の人の目には見えず人を呪い人を殺す」
「この話は絶対に一般人には出来ない。国の一部のトップの奴らとおれらゴーストブレイカーにしかこのゴーストの存在は知らない。だからお前もここまで聞いたら嫌でも源さんに目を貰いゴーストブレイカーになるんだ」
理解出来ないが受け入れるしかないという事だけわかった。
「なら、おれの異能力ってなんなんですか?」
ふと、それが気になった。
源さんは真剣な顔で言う。
「お前の異能力は『ダイアモンドペニス』だ!」
ジンが驚いた表情でこっちを向いた。
「ダ、ダイアモンドペニスだと!?嘘だろ源さん」
「なんですか!ダイアモンドペニスって!!!」
「それは超異能力の一つとされていて、そもそも異能力者は一般人の中の1万人に1人くらいしかいない中で超異能力を持つものは異能力者の中でも更に1万人に1人いるかいないかだ」
「ちなみにおれの暗黒圧縮は異能力の中でかなりの上位能力だが流石に超異能力ではない」
おれが超異能力者だって!?
「ダイアモンドペニスとは具体的にどんな能力なんですか?」
「説明しよう。まずジンくんの暗黒圧縮と少し似ていてきみは血液圧縮をする事が出来る。そして下半身で最大限に血液圧縮をする事により”そのペニスはダイアモンドの硬さに達する”」
お、おれにそんな力が…?
「そして、その硬くなったダイアモンドペニスでゴーストを切り裂く!!!きみの戦い経験値が低くてもボス級ゴーストを余裕で倒せるだろう」
「けど、本当におれにそんな超異能力があるんですか?!」
「おれの目に間違いはない!!!やってみろ!!!」
おれはベルトに手を掛けた。
カチャ、カチャ、ぼろんっ!!!!!
直後、真下を向いたおれのペニスが現れた。
「血の流れを脳でイメージしろ。そして下半身に力を入れて圧縮するんだ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
少しずつおれのペニスは上を向いてきた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
やがて真上を向き、おれは源さんの方を見た。
「それはただの勃起だ。そこから血液圧縮をするんだ」
なんだ血液圧縮って。けどなんだか血の流れがわかる。出来るかもしれない!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
卍血卍液卍圧卍縮卍!!!
「おお!!!見事だ!!!これこそダイアモンドペニス!!!」
そこには真上を向いた30センチにも伸びたダイアモンドの聖剣があった。
「じゃあ練習にこのマネキンを切ってみてくれ」
おれは聖剣の根本を右手で握り45°体をネジり左足から踏み込み横から聖剣をマネキンに叩きつけた。
その一撃でマネキンは木っ端微塵になった。
「で、出来た…おれにこんな力があったなんて」
「では、改めて。ゴーストブレイカーの世界にようこそ」
ゴーストは真夜中に現れ人を呪い、強いゴーストは直接人を喰う。
世界で起こる不審死や未解決の通り魔事件は大体ゴーストが原因らしい。
おれはあの後、源さんから目に力を貰いゴーストを見る目を手にした。
今日の夜はジンさんとペアで初めての実戦がある。
”町口に24時集合”帰りはタクシーかと思いながら報酬の高さを思い出す。
最低報酬が1匹20万、そこからゴーストの凶悪度により上がっていく。
魔王級だと1匹で500万以上にもなるらしいがそれは死を覚悟したほうがいいらしい。
国からの依頼は拒否出来ない。
だから魔王級の依頼なんて来ないでくれとジンさんは言っていた。
今日は最低報酬の依頼で、夜の町口駅の噴水前広場に現れて人を呪い飛び降りたくなる気分にさせるゴーストの退治らしい。
「なんか微妙なゴーストですね」
24時ちょうどに待ち合わせ場所に来たジンさんに話しかける。
「それでも、ゴーストとの戦いは常に1ミリすら気を抜くなよ。おれは今まで何人もそれで死んだやつを見てきた。ゴーストは自分の姿が人間には見えてないと思い行動しているが、おれらが奴らを見えてるのが分かった瞬間敵だと認知して襲いかかってくるからな」
ジンさんからは1発目の奇襲が大切だと教わった。
夜の町口は光が多くジンさんの暗黒圧縮とは相性が悪いらしい。(それでも今日くらいのゴーストには勝てるが)
2人で例の噴水の前まで歩きながら作戦の確認をした。
今日の作戦は”ゴーストの姿を確認したらジンさんが奇襲をして一撃で倒す”というものだ。
おれは今日は研修の身でとりあえず一連の作業を見ろとのことだった。
噴水前に到着したおれ達は女のゴーストを目視した。
「じゃあ、早速終わらせるか」
ジンさんの暗黒圧縮などの異能力も”見る目”が無いと見えないらしい。
ジンさんは両手に力を込め黒い球を作っていく。
「やっぱり灯りが邪魔で小さいのしか出来ないが充分だ、放つぞ!暗黒球!はっ!!」
ゴーストの頭の後ろに当たり一撃でゴーストは消えていく。
「はい、ミッション終了。まあ低級ゴーストはこんな感じですぐ終わるんだ、終電で帰れそうだな」
その刹那
「ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、ウゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」
その場に立っていられないくらいの声の振動
「オレノオンナヲヤッタノハ、オマエカァァァァ!!!」
5mはあるだろうか。初日のおれでも分かる、こいつはヤバい。
「な、なんで魔王級ゴーストがこんな所に」
ジンさんの声が震えてるのが分かった。
「おい、お前は全力で逃げろ。初日で勝てる相手じゃない はやく!!!」
「けど、ジンさんはどうするんですかっ!!!」
「ゴーストブレイカーになった日からおれはいつでも死ぬ覚悟は出来てる。それよりも今お前を失うのは世界に…」
バンッ
ジンさんがほんの今までいた場所にはゴーストの手がある。
「えっ…」
ゴーストはその血溜まりを綺麗に舐め、そしておれの方を向いた。
「オマエモ、ミエテルナ?」
殺らなきゃ殺られる。
カチャ、カチャ、ぼろんっ!
卍血卍液卍圧卍縮卍
2回だ要領は掴んだ。
おれは聖剣を握りしめてゴーストに振りかざした。
「ジンさんの仇!!!」
ジャキン、ジャキン、ジャキン
何度も切り裂いたが切れない。
「イテエジャネエカ、オカエシダ」
ゴーストの手が頭上から降ってきた。
おれはペニスを盾にし攻撃を受け流した。
「いってぇぇぇ!」
ペニスに痺れる様な痛み。
ヤバいヤバいヤバい死ぬのかおれ。
おれはジンさんを思い出した。
「見た目は怖いけど良い人だったな」
涙が頬を流れペニスに落ちた。
その時、おれのペニスは光始めた。
「なんだこれは、とんでもない力を感じる」
その時、ゴーストの追撃が頭上に降り落ちようとしていた。
『ライトニングペニス』
閃光の速さでおれはゴーストのその腕を切り落とした。
「いける!!!」
そしておれはゴーストが怯んでる瞬間に噴水に登り、頂点でジャンプし脳天から切りかかった。
「今度こそジンさんの仇だ!!!」
ゴーストは縦に真っ二つに割れて消えていった。
「や、やったのか」
おれは色々な感情が混ざり合い涙が止まらなかった。
ふと、涙を拭うとおれは警察に囲まれていた。
「ちょっといいかな?下半身を露出した男が噴水前でブツを振り回りて暴れているって通報があったんだけどね」
「はい、こちら現行犯で犯人を確保しました」
おれはパトカーに連行されていた。
「で、なんでちんちん出してたの?お酒飲んでたの?」
おれは悲しい事に取調室にいた。
「いえ、飲んでないです」
「え、飲んでないのにちんちん振り回してたの?ヤバくない?」
ゴーストに関しては一切関係者以外には話してはいけない。
「ちんちん出して本当にごめんなさい」
「いや、ごめんなさいで済んだらね警察はいらないんだよ」
目の前にいる30代くらいの小太りの挑発口調の警察にダイアモンドペニスをしたい気持ちをずっと抑えている。
その後、色々な面倒なもろもろがありつつおれは初犯ということもあり懲役無しの罰金20万で済んだ。
2匹倒したけど依頼じゃないと報酬は出せないらしくしっかり20万だったのでそれで罰金を払いなんだかわからないおれの初陣が終わった。
その夜、おれは源さんに飲みに誘われた。
「色々とお疲れだったな」
日本酒をちびちびと呑み、源さんは口を開いた。
「ゴーストブレイカーは世界に拠点があってな、毎日のようにおれらの同僚が殺されているんだ。まあ、今回はそれがジンの番だったんだんだな」
変わらない源さんの表情の中で少しだけ唇を噛み締めているのが目に入った。
「けど、僕たちがゴーストを倒さないとそれよりも犠牲者が出るんですよね」
「犠牲者どころかゴーストブレイカーがいなければ人間は絶滅してるだろうな」
それじゃあまるで魔物に滅ぼされようとしていた時代と変わらないじゃないか。
おれは今まで何も知らずに平和に暮らして勝手に人生に絶望していたのか。
「僕、ゴーストブレイカーになれて良かったです。あの時、人生に絶望してて自分はこの世に必要無いんじゃないかって思ってて…けど、そんな自分が世界に必要とされてたと知ることが出来て嬉しいです。命を懸けてゴーストブレイカーをやっていきたいと思います!!!」
「お前は間違いなく東狂支部のいやそれどころか世界本部のトップになれる。ジンの分も頑張ってくれ」
「はい!!!」
その日の夜、おれは初めての1人での任務を任された。
練鹿のB公園前の道路にて彼氏の浮気より自殺した怨念の強い女のA級ゴーストが深夜にその道を通る女性を呪うという事で既に3人の被害者が出ているという。
全員表向きにはその先にある歩道橋での飛び降り自殺。
しかし、本当は呪われゴーストに手を引かれ殺されているんだ。
そろそろ終電でその日を遊び尽くした人々が帰路に就く時間、おれは現場の公園のベンチに座っていた。
人通りの無いその道路に女性が1人で通る時にそのゴーストが現れる。
まだこの時間は肌寒いなと思いながらじっと待っていると、遠くからデート帰りだろうかオシャレをした大学生くらいの女性が通った。
「来るのか?」
おれは少し離れた公園のベンチから目を凝らしていた。
「ゴオオオオオオオ、ゴオオオオオオオ」
予想通りだ、少しずつその女性の後ろからゴーストが近づいている。
カチャ、カチャ、ぼろんっ!!!
卍血卍液卍圧卍縮卍
『ダイアモンドペニス』
おれは右手でペニスを握り道路に出た。
ゴーストまで50mか、奇襲を仕掛けるぞ。
『閃光』
刹那足に稲妻が駆け巡り50m9秒の速さでゴーストまで近づき今にも女性に取り憑こうとしているゴーストに斬りかかった。
シュン!
「よ、避けただと!!!」
「キャーーーーーーーーーー助けて!!!」
女性が叫んだ。
この女性、もしかしてゴーストが見えているのか?!そりゃ恐いよな。
「今、助けるので安心して下さい!!!」
絶対に倒す!素早い相手にはこっちも素早さで勝負だ。
連続ペニスフェンシング!
女性を斬らないように直線に突き刺すようにおれはゴーストに連続して腰を振った。
女性を盾に左右に避けるゴースト、おれも右に左にペニスを振り続けた。
ペシーーーーーーン!!!
やっとゴーストの頭にヒットし、スーっとそのゴーストは天に消えていった。
ガシッ
気づくと目の前には震える女性と悲鳴を聞きつけてやって来た警察におれは取り押さえられていた。
「こちら、強姦未遂の犯人を現行犯逮捕しました」
そのままパトカーに乗せられ気づいたらこの前の取調室にまた座っていた。
今回は流石に実刑になるからなと強い口調で言われおれは拘置所に入れられた。
面会だと警察に連れて行かれるとそこには泣き崩れる母と怒り狂う父が透明な壁の前にいた。
「もうお前はワシの子じゃ無い、二度と連絡をしてくるな」
そう吐き捨てて帰っていった。
そして、おれは10年間刑務所に入ることが決まった。
「誰が悪いんだ?」
おれは薄暗い冷たい部屋で自問自答していた。
「なんでこうなった?おれは命を救ったんだぞ?けど説明出来ない…」
「うおーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
おれは全力の大声で叫んだ。
「うるさいわねーーあんたも捕まったのね」
その声は、グングニルミチコ?!!!
「お前!おれの金玉返せ!」
偶然隣の部屋にグングニルミチコがいたらしい。
「あんたの金玉のおかげで暗記力1万倍になって私は無限に本を読んで脳の中に図書館を作ったわ。だから今の私はこの世の全てを知っている、脱獄方法もゴーストの事もこの世界の闇の事も」
「ゴーストの事を、知っているのか?!」
「ええ、推測するにあんたはゴーストブレイカーになってダイアモンドペニスを出した時に女性に強姦と勘違いされて捕まったってところでしょうね」
「なんでわかるんだ!!?」
「私のアビリティ思い出して、あとは私の無限の知識からの推測よ」
おれは地頭がヤバいくらい馬鹿だった(アビリティがなくなって気づいた)からここまで1万倍を使いこなせなかったけど、普通の人が使うとこんな予知みたいな事まで出来るのか。
「ねえ、あんたはこの世界は好き?守りたい?」
「いや、もうどうでもいい」
「じゃあ、私と2人で世界を支配しない?」
それも悪くないな。おれは今あの日以上に絶望している。
「支配したら金玉を返してくれるか?」
「ええ、1つでいい?2つは駄目よ」
まあ、最悪1つ返ってくれば良いか。
「ああ、それでいい」
「じゃあ、ダイアモンドペニスでまずこの牢屋をぶっ壊して!」
ギンッ!!!ジャキン!!!
「すごいわ!良い子良い子。この刑務所の地図は頭に入ってるわ、逃げるわよ」
おれのダイアモンドペニスを撫でてグングニルミチコはついて来いと先導して走った。
「ここから天井に穴を開けて!」
ジャンピングダイアモンドペニス!!!
おれはジャンプをしてペニスを天井に突き刺した。
「よし、天井に穴が開いたぞ!おれの手に掴まれ!」
グングニルミチコがおれの手を取った瞬間ペニスはさらに硬くなった。
そして地上に上がったらそこは一般道だった。
「抜けれた!!!」
「まだ安心しちゃ駄目よ、まず逃げながら夜が明ける前に服をどうにかするわよ」
マンションのゴミ溜め場を周りなんとか2人は服を着替え、落ちてたチャリを拾いひたすらに国道沿いを何時間も走り抜けた。
「これからどうするんだ?」
「過去にサダ子がやったことをゴーストでやるの。まあ私に任せて。とりあえずA海岸に向かって」
「まじか?隣の県だぞ?2人乗りチャリで!」
「がんばりなさい、そこに行かなくちゃ始まらないわ」
暗闇の中永遠にチャリを漕いで漕いでやっとA海岸に着いた。
「疲れすぎた…」
「ここにいるの、最強のゴースト”サダ子″が!」
サ、サダ子だと!!!!!
「サダ子の怨念は1000年前の最強の陰陽師に封印されていて死んだこの地でずっと寝たような状態なの。けど私はサダ子の封印を解くことが出来る」
「そしたらどうなるんだ?」
「私たちの仲間になってもらってこの世を力で支配するわ。ゴースト、つまり怨念は本人じゃない。本人の念なの。だからこの世の支配という点で精神的に一つになれると思うの。そう、サダ子のゴーストを私を一つにするの」
理解が追いつかない。サダ子とグングニルミチコが一つに?
「アグニコスゲルニコスの神にグングニルミチコの悲しみをゲルポニスUNNGOGO産まれる神コニスの仲間達の力を左手に解け封印を!」
グングニルミチコが謎の呪文を唱えると海が紫色に染まり巨大な影が現れた。
「ワレノチカラガホシイノカ?」
「ええ、私は今からこの世界を支配する」
その直後、その影が全てグングニルミチコの体に入っていった。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「どうした、グングニルミチコ!!!」
「ありがとう、タケシくん。きみのおかげで暗記力1万倍もステータス1万倍も手に入ったの。後はね最強の武器ダイアモンドペニスが手に入ればいいの」
「な、なにを言ってる?」
刹那、股間に激痛が走った。
「いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
グングニルミチコの手にはおれのダイアモンドペニスが握られている。
「お前、おれを騙したな」
「騙したんじゃなくて、利用しただけよ」
「それを返せ!!!!!!!」
「それは無理。じゃあね」
サダ子の怨念を取り込んだグングニルミチコの背中からは邪神の羽根が生えてきて一瞬で空に消えていってしまった。
ペニスも金玉も無くなって海に1人置き去りにされたおれは途方に暮れていた。
「そういえばおれ脱獄したんだよな…金も無いし」
こんな絶望な状況はあるだろうか?
海がおれを呼んでいるような気がした。
「人は結局最後は母なる海に帰るのかな」
その時だった。
「探したぞ!早くおれの車に乗れ」
後ろから声が聞こえた。
「げ、源さん!!!!!」
なんでここに源さんがいるんだ?
「とりあえず話は後だ!早く来るんだ!」
おれは言われるがまま車に乗った。
「予言書の内容が現実になろうとしている」
「予言書って何ですか!?」
「サダ子滅びし海にて千年後蘇り再び世界を破滅させるだろう。これが昔から伝わる予言書の一部だ。そして千年後とは今日の事なんだ。だからここに来てみたら既に遅かったみたいだ」
この出来事は千年前から予言されていたというのか、偶然ではなく必然にておれは今日ここに導かれたのか。
「そして、その予言には続きがある。もし、世界にゲニポスを復活させることが出来れば世界はまた救われるだろう。と」
「ゲニポスを復活させる?そんな事出来るんですか?」
「出来る、世界で唯一お前だけに!!!そう、ゲニポスの唯一の子孫であるタケシにだけに!」
おれがゲニポスの子孫?そんなわけない。だってゲニポスは子孫を持たなかったのだから。
「おれの目には色々見えているんだ。お前はゲニポスとサダ子の血を受け継いでいる」
「もしかして、有名なあの金玉を取られた夜に!!!!!」
「おそらくそうだろう。だからお前には資格がある。急ぐぞゲニポスの墓があるニコタマ大学に!!!」
源さんはとんでもない速度で車を走らせ、ニコタマ大学の校門前に着いた。
「ここからはお前1人で行くんだ。まさに学生の顔をしてな」
おれはニコタマ大学に潜入しゲニポスの墓の前まで急いだ。
本当は毎日ここに通って勉強して青春してそんな世界があったかも知れないんだよな。
そんなことを考えていると目の前に大きい墓が現れた。
「これがゲニポスの墓か」
おれは大声で墓に向かって言った。
「僕はあなたの子孫です!サダ子がまた世界を滅ぼそうとしてるので力を貸して下さい!」
「誰だ。おれの眠りを邪魔するのは」
「僕はタケシ。あなたとサダ子の子孫です!」
「なんだと!それは本当か?本当なら金玉を見せてみろ!」
カチャ、カチャ、ぼろんっっっ!!!
「ペニスも金玉を食べられました!ただめちゃくちゃケツ毛が濃いです!」
くるり。
「そのケツ毛!!!お前は間違いなくおれの子孫だ!!!わかった。力を貸そう」
突然、墓から白い光が現れて凝縮しおちんぽセット(ペニス、金玉×2)の形になり、おれの股間にくっついた。
最強の力を手にしたおれは源さんの車に戻った。
「サダ子の呪い大学に向かって下さい。そこにグングニルミチコはいます。闇の力をペニスが感じるんです」
「わかった。タケシ、目つきが変わったな!」
最速で車を走らせる源さんにおれは感謝した。
サダ子の呪い大学に着くとそこには結界の中に空中高くに浮かぶ暗黒城があった。
「あそこで世界を崩壊させる準備をしてるのか、あの結界はこの目が無ければ見えない。タケシ生きて返ってこいよ」
「源さん、待ってて下さいね!!!」
おれはペニスを地面に押し付けた。
卍血卍液卍圧卍縮卍×ステータス1万倍の金玉を添えて!
ペニスが上を向く力でおれは100m程空に飛び暗黒城の入り口にたどり着いた。
そこにはグングニルミチコがいた。
「待っていたわ。こうなるのは私たちが選んだ運命なのか、千年前から決まっていた宿命だったのか。そんなのどうでもいいわ、私は世界に復讐したいの」
「おれはお前に復讐をしたい。金玉だけじゃなくペニスまで奪いやがって」
「じゃあ始めましょう、復讐のための戦いを」
お互い、光の速さでダイアモンドペニスを交えた。
カキン、カキン、カキン、カキン
神経が通ってる分、おれだけがダメージを受けている。
「武器化したダイアモンドペニスは最強でしょ、私の勝ちね」
ヤバい、このまま戦ったらダメージが蓄積しておれが負ける。
カキン、カキン、カキン、カキン、シャキン!
その時、グングニルミチコの服が破けた。
刹那、金玉から力が湧いてきた。
ダイアモンドペニス、金玉ブースト。
卍精卍力卍解卍放卍
ダイアモンドを超える硬さを感じた。
これは、『ダークマターペニス』
「くらえ!これが宇宙最大硬度だ!!!」
パキーーーーーーーン
グングニルミチコのダイアモンドペニスは木っ端微塵となった。
そして、後ろに怨霊となって取り憑いているサダ子を突き刺した。
「オマエハ、ゲニポス!!!」
「久しぶりだな。お前、おれの赤ちゃん産んでいたんだな。一緒にあの世に帰ろう。タケシ、おちんぽセットはお前へのプレゼントだ」
直後、2つの白い光が空へと消えていった。
泣き崩れるグングニルミチコ。
「結局、私は何も上手く行かないのよ。こんな世界壊したかったわ」
おれは後ろからグングニルミチコを抱きしめた。
ほとんど裸に近いグングニルミチコを見たおれは戻ってきた金玉のエネルギーで欲望を抑えることが出来なかった。
「元々おれはお前のことが好きだったんだ、この硬さはダイアモンドペニスじゃない。お前への愛だ!!!」
2人は暗黒城で熱い一夜を過ごした。
「じゃあ、ここからどうやって降りるか」
地上100m程の高さに浮遊する暗黒城。降りる方法は一つも無い。
「サダ子の力が消えて、この暗黒城消えかかってるよね。一緒に天国に行く?いや、私は行けないかな。寂しいな、せっかく恋人が出来たのに」
おれは1つの結論を出した。
「ちょっとおれを後ろから抱きしめてペニスを触ってくれ」
「え、こんな感じ?」
グングニルミチコはおれのペニスを上下に擦った。
「いい、いいぞ!」
金玉にとてつもない力を感じる。
「よし!おれにしっかり掴まってろよ!飛び降りるぞ!」
「うん、あなたと一緒に逝けるなら」
おれ達は暗黒城から飛び降りた。
すごい勢いで地面に向かう2人
「グングニルミチコ!もっと強く速く擦ってくれ!」
「わかったわ!」
「う、うおおおーーーーーー」
地上が直前に迫った時、おれのペニスから1万倍の射精が始まった。
『ダークマターフィニッシュ』
「すごい、地面に対する水圧で重力に拮抗してる!」
そして2人はふわりと地面に着地した。
2人は泣きながら抱き合い、暗黒城は魔法が解けたように消え、世界からゲニポスとサダ子の因縁が完全に消えた事により、この世のゴーストもアビリティも異能力も完全に無くなった。
そして目に前に一台の車が止まり、源さんがとびっきりの笑顔で車の窓を開けた。
「おつかれさん。2人とも後ろに乗りな」
おれは彼女の手を引いて車に乗った。
後日、おれ達は世界を救った功績により懲役が免除され賞金が入り、結婚し都内に家を買い、
そして可愛い可愛い赤ちゃんが産まれた。