プロローグ
「僕の大好きなバンドマンが死んだ」
いや、正確に言えば違うか
「僕の大好きな"バンドのギタリスト"が死んだ」
つい数分前に僕の目に入ってきたネットニュース
僕の大好きなギタリストさんが亡くなった
というものだった。
嘘かもしれない
ほら、よくあるじゃないか
学校でも少し前に言われた気がする
「ネットニュースには稀にフェイクニュースってやつがある」
ほら、そうだ、それだよ。
このニュースだって嘘かもしれない
だって信じられないよ
三日前に投稿されたライブの写真には
満面の笑みで映ってた
これは嘘だ。フェイクだ。
そう呟く僕の声だって
段々小さく、細くなってきていた
でも僕は知らないふりをして自分の声を浴びる
「僕の大好きなバンドマンは死んでいない」
流石に本当だった
流れてくるテレビの音が
妙に気持ち悪くて、真実だけを告げる声が嫌いで
名前も知らないアナウンサーが涙ながらに報道している
ニュース番組さえも見たくなくて
僕はただただ受け入れられなかった
ひたすらに音から逃げた
今はまだ、大好きなバンドの歌も
声も、ラジオも、何も聴けない
その日も次の日もその次の日まで
僕は眠ることができなかった
僕の大好きなバンドマンの死因は
未だに知らされていない。